無人島リバース

 

それは無人島だ。

先日の嵐でだ。船はどっかに行ってしまったのだった。


とりあえず食糧探しだ。海岸でいくつかの貝類を拾い、山ではイモや食べれる野草などを煮込んだのを食べ飢えをしのぐ。

水は落ちてたペットボトルを半分にし切って、上から布、細かい砂、けし炭、砂、小砂利、小石と詰めたのに雨水を流してろ過する。

念の為に煮沸消毒すると安心して飲めるのだが、水の消費が多くなるしまあ水の貯蓄次第だ。


とまあ、一日はこんな感じで過ぎて行く。

ほとんど食糧探しに追われる日々、念の為に見晴らしの良い浜辺に石を並べ救難信号SOSなんてやって作ってみたものの、もう一週間が過ぎた。

砂浜に腰かけ穏やかにうち寄せる、波の音を聞きながら深いため息一つ。


グーグルアースのある逸話を思い出す。

7年無人島で暮らしていた女性が砂浜にSOSという文字を書いた。

それをネットで見た子供が発見し、救助につながったという話だ。

が……これは創作だったという、現に無人島にいる私には希望の無い話だ。


ふと遠くの水平線から、視線を横に反らすと人がいた。

古代ローマで良く見られた、トガのような服を着て杖を持ったじいさんだ。

みすぼらしいとは思わなかった、ここが無人島だからか時代錯誤の服装も相まって余計にそういう色メガネで見てしまいそうだが。


じいさんにはこう、ただ者ではないと思わせるオーラがあった。


私はじいさんに駆け寄って言う。


「ここに人はいるとは思わなかったな、貴方はどこから」

「あっちじゃ」


と空を指して言うのだ。


「ははは、面白いジョークだ」

「しいていうならこの世界からじゃ」

「そうかそうか。私を助けに神がやってきたのだな、そりゃあいい」


私は腹筋大崩壊し笑い転げる。

何せここしばらく人と話すこともなかったのだから、この手の笑えんジョークすらとても新鮮に思えた。


「まあいい、今日はアサリや魚もとれたんだ。食ってくれ」


じいさんは口数が少なかったが、無人島に長くいて接し方を忘れてしまったのだろう。私はそう思い無理に話を振ることはしなかった。


やがて食べ終えてじいさんが立ち上がり言う。


「わしは神じゃ。お前を助けに来たのだ、施しの借りを返してしんぜよう」

「ははは。なら俺を無人島に来る前に戻してくれよ」 

「承知した」


じいさんがそう言い、木の杖を空に向かい高く伸ばすと、私の視界がぐにゃぐにゃと歪み捻じれる。立ちくらみしたまま視界が、世界が回っているかのような感覚だ。


まさか本当に神だったというのか。

私は神に感謝し自宅へと戻ることになった。


――

――――

――――――


さて、今日は無人島に渡航する日だ。

食糧や鍋、サバイバルの道具もばっちり、携帯の充電は少ないがまあいいだろう。

遭難なんか簡単にするハズはない。

私は無人島に向かった。




私はじいさんに駆け寄って言う。


「ここに人はいるとは思わなかったな、貴方はどこから」

「あっちじゃ」


と空を指して言うのだ。

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