第2話陰湿なお姉さまに復讐を
俺は、姫宮桜子に復讐する為の手段を考えた。
それは、新たに姫宮桜子の汚点を見つけ、口封じをされる前に全員に拡めるというものだ。
具体的な方法は下校時の姫宮をつける。そんでもって汚点を見つけて写真を撮る。
そして、次の日学校の廊下にでも貼ってやる。
俺が直接言っても誰も信じてくれないだろうからな。
あんな奴汚点や秘密が沢山あるに決まってる!
これは確実に成功する…
◇◆◇◆◇
空に濃い雲がかかり、絶好の復讐日和である今日、俺は考えていた復讐の第一ステップを踏もうと、放課後の玄関に息を潜めていた。
そして丁度今、校門前のところに姫宮桜子が1人で来た。
姫宮親衛隊全く機能してねえな…
まあそのお陰でこの復讐計画が実行できる訳だが。
………よし、姫宮が動き出した。
俺も後をつける。姫宮桜子の美しい容姿といい、俺は変質者にしか見えないだろう。まあ底辺に位置する俺にとっては怖くない。
そう、人間失う物が無い時が1番強いのだ。
姫宮桜子は駅の方へ向かっているようだ。あの辺には住宅地やマンションが全く無い筈だが…
まあいい。姫宮が援交してようがメイドやってようがいいネタになる。
…あれ?
姫宮公園の方へ向かってねえか?
まじで援交でもすんのか?
………彼氏?
ッ!それは許さん!俺のスクールライフをぶち壊しておいて…俺と付き合うぐらいの誠意を見せないと駄目な立場だろ…
そう勝手に憤慨していると、姫宮やはり公園へとやって来た。
そして、少し横に外れ、木々の間を進んで行く。
姫宮はどこに向かっているんだ…
ッ!
俺は息を潜める。木々の奥へと進んで行った姫宮は、突然立ち止まり何かをぶつぶつ呟く。内容を聞く限り、魔法かなにかの詠唱だろう。
中々可愛いところもあるじゃないか。俺も姫宮の気持ちが分からんでもないからな。
中学生の頃よく1人で魔法の詠唱を練習していた俺にとっては懐かしい響きが聞こえる。
姫宮は最後だけ大きな声で言う。
「……トランスザワールドッ」
…結構痛いなオイ。
しかしその刹那、周りに空間の亀裂が出来る。そして、CG映画を観ているかのようにその亀裂、いや、空間の歪みに包まれて行く。
なんだこれ……姫宮お姉さまはこんな事までできるのかよ……
◇◆◇◆◇
気がつくと、俺は制服のまま草原の中に寝転んでいた。
何か変だな…公園の木々とはまた雰囲気が違う。
それより姫宮はどこだ?
すると、そんな俺の疑問を解決するように、少し離れた丘から声が聞こえてくる。
「何をしていた桜子。遅いじゃないか」
気障ったい男の声。
あの丘に姫宮がいるのか?
それよりあの声の主は誰だ…突然の出来事にすっかり忘れていたが、もしかして彼氏か何かか…?だとしたら許さん!
俺は低スペなりに一所懸命に丘を登った。
カジュアルにキメた爽やかなイケメンいるのかと思ったが、予想とは90度ほど違う奴がそこにはいた。
神々しく光る軽鎧を身に付けた爽やかではないイケメンだった。
そして、そいつの背中からは美しい純白の翼が生えている。
姫宮の方を見ると、純白ではなく少し桃色がかっているが、これまた美しい翼を生やしていた。
…俺は夢でも見ているのか?
そう思っている時、興味深い会話が聞こえてくる。
「お前は俺達に囚われている身だ。遅刻など許されない。まさか、逃げようなどと考えたのではあるまいな」
「滅相もありません、メタトロン様」
姫宮が敬語…やっぱりこれは夢なのか?
「お前が今生きているのは俺達天使のお陰だ。それを忘れるなよ」
「分かっています」
「3年前、人間だったお前は俺達に懇願した筈だ。どうにか私を助けてくれと…対価はなんでも渡すからと」
「…はい」
「だから俺達は契約したんだ。今お前を助けてやるからお前は生涯俺達に尽くせ、と…」
「……」
「何か言え」
「…じゃあ言っていいのね。私は確かに契約を結んだわ。しかしそれは、
姫宮はいつもの口調に戻っていた。その姿は威勢はいいものの、とても弱々しかった。
そして今の一連の流れを聞いて、これは夢では無いのかもしれないと少し思う。そして、メタトロンと呼ばれる男に対しての憎悪の念が高まる。
その俺の心情を誤って察したかのようなタイミングで、メタトロンは口を開く。
「うるさい。下級天使の分際でッ!」
そして、メタトロンは自分の純白の翼で姫宮を突き飛ばす。
数メートルほど飛ばされた姫宮に、メタトロンはさらに追い討ちを掛けようと近づいて行く。
くそ…やらせるか!
俺は復讐対象である姫宮の前に自然と体が動く。
「待てッ!」
その俺の様子を見て、姫宮、そしてメタトロンまでもが驚く。
しかしメタトロンはすぐに高笑いをしてこう言う、
「誰だお前は?そして何をしにここへ来た?」
「俺の名前は初川壱夫。姫宮桜子を…いや、姫宮桜子に…復讐しに来た!」
「面白い…丁度良かったな。今の姫宮桜子なら復讐をし放題だぞ」
くそ…こいつは誘惑の天才かよ…あの姫宮桜子にあんな事やこんな事を…
すると、姫宮は泣きそうな顔でこちらを見て言う。
「やめてぇ…」
………こんな姫宮を見るのは初めてだ…
「復讐しに来た!だが、俺は今気が変わった。そこにいる姫宮桜子を助ける事にするッ」
「……どうやってだ?」
「俺が天使になる。だから姫宮桜子を解放してやってくれ」
「話を聞いていたのか…まあいい。それにしても中々面白いじゃないか。いいのか?お前は一生俺達に尽くさなければいけないのだぞ?」
「ああ、上等だぜ」
「フハハハハ!やっぱりお前は面白い。とりあえずお前に翼を与えよう。それで俺とある程度戦えたら桜子の代わりになる事を認めよう」
「おう。いつでも準備オーケーだぜ」
すると、メタトロンは俺の方に人差し指を向け、それを静かに上げた。
すると、俺の背中に激痛が走る。その痛さからは、これが夢ではなく現実だという事をはっきりと思い知らされる。
そして、『グチャグチャ』という生々しい音を立て、ドス黒い翼が生えてきた。
片方だけ。
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