第3話下衆天使と対決です!

『グチャグチャ』という生々しい音を立て、ドス黒い翼が生えてきた。

片方だけ。

それを見たメタトロンは下卑た声で大きく笑う。

「フハハハハハハッ!なんだあの汚らしい一本の翼は」

「なっ!」

「諦めろ。お前には才能が無かったのだ」

…くそ…その一言で終わらしてたまるか。

「…………それでも、戦わせてくれるよな?」

「その翼でか?まあ俺が損する事もない。いいだろう」

「よし。じゃあ早速始めるぜ…」

そう言って俺はメタトロンの方へと走る。

くそ…翼が邪魔で上手く走れねえ…

その俺の心情を知ってか知らぬか、メタトロンは笑みを浮かべながらこう言う。

「そんな様子では先が思いやられるな!」

…あいつまだ一歩も動いて無いじゃないか。

くそ…舐めやがって…

俺は一本の羽に最大限の力を込めて、メタトロンにぶつける。

ッッ!

「どうした?」

なんだあいつ…一瞬のうちに俺の翼を塞ぎやがった。

それにあいつの翼はどうなってんだ…?

メタトロンの翼からは、幾重にも重なる金属質の羽が生えている。

俺が金属質の羽に目が釘付けになっていると、メタトロンは誇らしげに言う。

「ああ、これか?これは羽鉄はがねと言って、天使が使える習得型の武器だ」

そして、それと同時に俺を翼で突き飛ばす…

強い…まじで強い…姫宮親衛隊とか比にならねえくらい強い…

悶え苦しむ俺の様子を見て、ニヤァと悪魔的な笑みを浮かべたメタトロンは、羽鉄を数枚飛ばしてくる。

くそ…危ないな…避けないと…

俺は一本の翼で不安定に飛び立つ。

しかしそれが駄目だった。

メタトロンが飛ばした羽鉄は、俺の脚に突き刺さり、バランスが崩れて地面へと落ちて行く。

ぐっ…痛え…致命傷は免れたものの、このままでは死んじまう…

対決から降りるか…?

いや、あんな弱々しい姫宮を見たのは初めてだ。助けてやらねえと…

俺は脚から血を流しながらも、立ち上がる。

「これめちゃくちゃ痛えな…」

「意外と平気そうじゃ無いか。どうした?痛すぎて頭がおかしくなったか?」

「確かに頭がおかしくなったのかもな」

そして、俺はメタトロンに向かってもう一度走り出す。

するとメタトロンは、再び羽鉄を繰り出してくる。

そう何度も同じ手にかかるかよ…

俺はそれらを羽で全て防ぐ。

「流石に同じ手は効かないか。しかしこれならどうだ!」

……………ッッ!

メタトロンは空中に大きな槍を数多に展開する。

あんなの当たったら確実に死ぬな…

しかし、ここで対決を降りるなんてダサい真似はしねえ!

俺はメタトロンの方に飛び立とうと翼を広げる。

その時…

「やめなさい!」

姫宮が大きな声を張り上げる。

そして、両者とも姫宮の方に注目する。

「初川君、もうやめなさい!もういいわよ。みんなには弁解するし、親衛隊も止めさせる。だからもうそれ以上ボロボロにならないで!」

姫宮は必死になって言ってくる。

別に周りと寄りを戻したいから姫宮を助けている訳じゃないんだけどな…

しかし俺としては、姫宮がボロボロになるのは耐えがたい。

そんな俺の思いを察したのかは分からないが、メタトロンが何かを企むような表情で話に入ってくる。

「桜子の言う通り、もうこの小僧をいじめるのは止してやろう。さらにこの小僧の要望にも応え、小僧の天使入りを認めてやろう」

小僧………いや、そこはどうでもいい。俺の天使入りを認める…やったぞ!

「つまり姫宮は解放されるんだよな?」

「いや違う」

「そうか、ありがとう!………………は?どういう事だよ?」

「いやな、お前は俺と全く善戦出来ていない」

「でも天使になれるんだろ?」

「ああ。だが姫宮は解放されない。何故ならお前を天使にする理由は、お前の性能ではなくお前の根性を見込んでの事だからだ」

「それだと俺が天使になる意味なんて無えじゃねえかッ」

「ああ、だがお前が俺より上の階級、熾天使セラフになった時、桜子を解放してやろう」

メタトロンは下衆な笑みを見せながら言う。

くそ…こいつ絶対無理だと思って言ってやがるな…

絶対なってやる…俺はセラフに絶対なってやる!

そう意気込んでいる最中、意識がどんどんと遠くなってゆく…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る