Chapter 9.2
”M”の垂直跳躍力は10m以上……跳躍して移動すれば、視界から完全に消える。これが”M”の瞬間移動の秘密だが、理解はしていてもすぐには対応できないのだ。
ガツン!という衝撃が指揮車に加わった。運転席のようだ!
大久保は運転席に通じるドアを開けた。
目の前に”M”がいた。
指揮車の運転席の屋根に飛び乗ると、片手でフロントガラスをぶち破り、運転手の頭を捕らえる
。
もう、警官の血は飽きた……。
つかみ殺した後、ひきずり出して、投げ捨てる。
割れたフロントガラスから中を覗き込むと、後ろのドアが開いて30代半ばの男が入ってきた。
瞬間、男の思考を読み、この男が指揮官と知る。
ほう……? キャリア……管理官とかいうやつだ
さかさになった”M”の顔がニヤリと笑う。そして……なんともいえない声で……喋った!!
『……ごきげんよう。大久保管理官』
大久保は衝撃で悲鳴も上げられなかった。混乱した思考が交錯する。
ばかな、チュパカブラ、UMA、野獣……喋った!!
そのまま”M”が運転席に進入しようとした次の瞬間、銃声が響いた。
大久保の後ろから富田が”M”を銃撃したのである。”M”はめんどうくさそうに払いのけなが
ら(拳銃弾では”M”にはかすり傷さえつかない)なおも進入を試みる。
混乱から抜け出せない大久保の目に運転席の様子が映る。運転手は”M”を見てあわてて逃げよ
うとしたのだろう……レバーがD(ドライブ)位置に……大久保はほとんど反射的に運転席に倒
れこむと、思い切りアクセルを押した。
そのままバリケードに向け急発進する指揮車!このまま行けばバリケードを突き破って、クレイ
モア地雷が待っている。
”M”が初めて動揺したそぶりを見せた。
その時、大久保は悟った。M!貴様……人の心が読めるのだな!!
だからこそ、大久保の衝動的な作戦に”M”は動揺したのだ。大久保の行動が読めなかった、心
が読めなかったから……。
一瞬、動揺を見せた”M”だが、次の瞬間、運転席に手をのばしハンドルをもぎ取った。指揮車
は大きくターンし、パトカーに突っ込み……停車した。
余裕を取り戻した”M”が指揮車に正に進入しようとした時、”M”の顔面に銃弾が命中した。
ライフル弾だ。ニ発、三発、”M”はたまらず跳躍、バリケード方向に後退した。
大久保が振り返ると、空中に静止した大型ヘリから武装した男達が、ロープ一本で鮮やかに降り
てくるところであった。
「……内調の特殊部隊!」
「あなた達の仕事はここまで!速やかに撤収しなさい」
聞き覚えのある声に大久保が顔を向けると霧森優子が立っていた。
「司令!」
大久保が敬礼しかけるのを、軽く手を振って押しとどめ、
「早くなさい。ここはすでに戦闘区域です。あなたたちは足でまといよ」
大久保は思わず反論しようとして、気がついた。
SATでさえ当たらなかった銃弾を、サンダー部隊『対UMA特殊部隊』は全弾命中させている
。
UMAハンターとは一体どんな能力を秘めているのだ?
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