Chapter 7.1
「大久保管理官! ”M”は包囲網を突破、西の尾根に移動を始めました」
オペレータの緊張した声が、作戦指揮車の中に響く。
……作戦は完全に失敗だった。
大久保警視正の元に続々と”M”による損害報告が届いていた。
”M”は、オトリのエサ……羊や牛を20頭ほど集めていた……には見向きもせず彼を攻撃するため隠れていた攻撃部隊を餌食としたのである。
「管理官。SATの再配備が完了致しました」副官の富田警視が報告する。
SAT(Special Assault Teme)部隊は、すでに先ほどの作戦で”M”に破れたも同然であった。
”M”には拳銃弾どころか、ライフル弾さえ通用しなかった。命中してもほとんどのショックを吸収してしまうようなのだ。
内調のUMA対分室からの指示は、「目を狙え」であったが、SATの狙撃班が”M”の目を狙撃しようとした瞬間、”M”はまるで察知したかのように、スコープの視界から消えてしまう。
かえってSATの狙撃班の方が”M”の逆襲に会い、3名がやられていた。
……UMA対分室の”M”作戦総司令部からの回線がつながった。
画面に作戦総指揮官 霧森優子 が現れた。
大久保は敬礼すると
「申し訳ありません。包囲網を突破されました!」
「あなた達には多くを期待していません」霧森が冷たく言い放つ。
「あと一日……いえ、半日、なんとしても”彼”を足止めしなさい。市街地に出られたら取り返しのつかないことになるわ!!」
「……繰り返します!! UMA対分室の特別部隊が到着するまで、命に代えても現状を死守しなさい」
画面が唐突に消えた。
大久保が振り返ると、富田の顔が死人のように蒼白だった。……おそらく自分の顔もそうなのだろう。
「昨日からの被害状況は……死者12名、重軽傷者33名。まるで”M”にエサをくれてやっているようなものだ……」
”M”は西の尾根から一旦、ふもとの道路を横切り、さらに西隣の山に進むコースを辿っている。
西のふもとに配備した機動隊は……実はマスコミの目を欺くためのオトリだった。実際は東の尾根で待ち伏せし、誰の目にもふれずに”M”を処理するつもりだったのだが……今となっては最後の防衛線になった。
ここにSATを始めとする残りの全部隊を投入し、なんとしても”M”の足を止めるのだ。
大久保は全部隊に指示を出す。
「これ以降、マスコミは完全シャットアウト!!山の周囲に近づけるな」
大久保にとっての長い一日が始まろうとしていた。
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