Chapter 5.3
……交渉は決裂した。
犬塚 玲子は千堂が夫の捜索を引き受けたのなら、なぜすぐ南米に飛ばないのか?激しく攻め立て、千堂と高坂の話に耳を傾けようとしなかったのである。
「夫がなんとかとかいうバケモノを盗んで日本にいる!? 馬鹿にするのもいいかげんにしなさい!もういい、他の業者に頼みます!!」
なだめようとする川越を振りきり応接室を出て行く玲子。
千堂と高坂は苦い顔で見送るしかなかった。
高坂は弱りきっている。
「どうする?ずいぶん派手に盗聴機器を使っちまった……。大赤字だぜ」
千堂がそれには答えず、たばこの自販機の前でポケットの小銭を探しているところに、大柄な男が近づく。さきほどの御手洗だ。
「……あんた達、チュパカブラが逃げて日本にいるって本当かい?」
思わず高坂が、
「!どうしてそれを??」
言ってから、しまった……と気づくが遅い。
「やはり、な。大株主のお嬢さんが派手に騒いでいるんだ。川越さんが火消しにかかっているが煙はたってるぜ。南米にいるはずが実は日本に……なんぞ、誰も疑わないし信じない。なかなかうまい手なのかもしれないが……じゃあ、犬塚の目的はなんだ?あんた予想がつくか?」
じっと話を聞いていた千堂が口を開いた。
「俺達がにらんだところ、小里があやしい。何か隠している」
御手洗はニヤリとしながら
「実は、チュパカブラの特番用に用意したオリだの、食い物だの、捕獲道具だの……が一部なくなっているんだ。小里のヤツが持ち出したらしいんだが、証拠がない。さっきも、とっちめていたんだが……俺はあんた達を信じるるぜ!俺がスポンサーになる。調査を続けてくれ。500万くらいならポケットマネーをだすぜ!」
千堂と高坂は顔を見合わせる。
高坂はあきれた様子だ。
「本気か?いくらTV局が高給取りだってポケットマネーで500万?大金だぞ?」
御手洗がもったいぶった口調で話す。
「そのかわり……だ。俺に密着取材をさせてくれ!チュパカブラ追跡のな!!」
そこで千堂が口をはさんだ。
「遊びじゃないんだ……下手をすれば命の危険がある。俺達は赤字でもかまわん。チュパカブラを捕らえる義務がある。あんたの申し出はことわる!!」
あわてて高坂が割って入る。
「まあ、まて! 御手洗さん、小里氏の泥を吐かせるのを手伝ってもらえないかなあ?それが条件だ!!」
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