Chapter 5.2

崎山超心理学研究所のオフィス、千堂は高坂と電話で話している。

千堂はメモを取り出した。

「レンタカーの線はだめだった……。チュパカブラを運べるだけの車……おそらく檻ごとだろうから、かなりの大型車になるはずだが?」

電話先の高坂が応じる。

「小里に直接あたろう!もう余裕はない」

「そのことなんだが……。先ほど川越から連絡があった。犬塚玲子が俺たちに会いたいそうだ。場所は東亜TV本社の応接室。依頼の話だそうだ」

「依頼があって4日目だぞ?いまさら依頼取り消しか??」

「まだ、正式に契約書は取り交わしていない……口約束だからな。まあせっかく東亜に堂々と乗り込むんだ。小里にも自然に接触できる。東亜TVで落ち合おう」


千堂が東亜TVに愛車で乗りつけると、高坂は先に待っていた。

千堂はつぶやく。

「でかい建物だ。よっぽど儲かってるのか?」

「やれやれ……俺はここに来るのは今日だけで2回目だぜ」

本社社屋の側面につけられた、巨大TVスクリーンのアイドルの笑顔をながめながら高坂がぼやく。

長髪にサングラス、黒いジャケットとズボンといったいでたちは、とてもさきほどまでの作業服姿を想像できない。

普段の高坂はおしゃれな遊び人といった風情で、女の子にももてる……のだが、一旦、潜入調査で変装すると全くその役柄になりきってしまうのだ。

UMAハンターになる前、高坂はやり手の探偵だったらしいが、さすがといったところだ。


それとは対象的に千堂といえば、前歴が戦場カメラマンだったこともあり、常に鋭いまなざし、そして服装に無頓着なため、よれよれのスーツに緩んだネクタイと好対照である。


応接室に向かう途中、どこからか大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

そっと様子を伺うと、大柄な男が小柄な男を捕まえてなにかどなりつけている。

千堂は小さな男には見覚えがあった。

「あれが、小里か。あの大きいやつは??」

高坂が応じる。

「川越のチームのディレクターの一人、御手洗だ。川越の報道番組は月~金の毎日やるからディレクターも5人いるんだがその一人だ。やつは小里より先輩だし、やり手らしい……今回のチュパカブラの件、御手洗は別の曜日の担当であることもあって、情報が入らずだいぶカリカリしているようだ」


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