Chapter 5.1
「小里ちゃんと犬塚さんは大学時代からの知り合いらしいわ。犬塚さんはすごい学者らしくてプロデューサーもものすごく気を使っていたわ。小里ちゃんはいつも、 犬塚さんの子分みたいにぺこぺこしちゃってね……」
東亜TVの食堂のおばさんのおしゃべりは際限がない。
たまたま食堂の冷蔵庫の修理に来ていた親切な電気屋さんが、おとといの台風で調子の悪くなった家のアンテナをただで見てくれているのだ。
口も回るというものである。
「よし、直ったみたいだね!」
ニコニコと愛想を振りまく青年は、おばさんの持ってきてくれた麦茶を、ありがたそうに押し頂き、一気に飲み干した。
「いい飲みっぷりだね!」
「男っぷりもいいでしょ!……じゃ、俺、お得意さん回るから」
「ありがとうね。ありがとう……」
なんども ありがとう を連発するおばさんはさみしそうだ。
よほど、電気屋さんの親切がうれしかったようだ。
車にもどった電気屋……高坂はすかさず、千堂に連絡を入れる。
「やれやれ、電気屋のマネも大変だな。こっそり冷蔵庫を壊したり、修理したり。……川越のスタッフに仕掛けた盗聴録音、インターネット履歴からは収穫なしだ。あやしいやつがいたとしても、まあ、仕掛けて3日目じゃ尻尾もださんだろうな。ソーシャルハックの方の成果はまあまあだな」
千堂が応じる。
「やはり、共犯は小里か……」
「裏をとるまでもないだろう。カルロスの情報にあった、積荷の日本側引受人の容貌とも一致する。問題は」
「切捨て要員にすぎない小里が、どこまで知っているか?、だが」
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