Chapter 4.1

走り去っていく、東亜TVの川越、小里両名の車を雑居ビルの事務所から見送ると、入れ違いに高坂から電話が入る。

千堂は受話器を取ると、状況を話す。

「今、ヤツラは帰った……しかし報酬が安すぎる。ただの行方不明調査と勘違いしてるのか?」


チュカパブラ はROU(Reaching & capture organization of UMA)のデータベースでは危険度 Aランク と指定されていた。


危険度 D 人間への危険性はない

    C 人間に危害を加える恐れあり

    B 訓練されたUMAハンターであれば対応可能

そして……

危険度 A 訓練されたUMAハンターでも生命の危険あり



高坂の声。

「おい、受けるかどうかは別として変な事がわかったぜ……今からそちらに向かう」


一時間後、事務所で合流するなり、高坂が口を開いた。

「ドンピシャ、だな! 俺たちを東亜アメリカ支局のエージェントに紹介したのは、やはりSAチーム(元ROUの南アメリカチームメンバー)のやつらだ」


それを聞いた千堂は思わずつぶやいた。

「いったい、なんだって自分のテリトリーの事件を俺たちに振るんだ?貸しでも作っているつもりなのか……??」


たばこを吸おうとして切れていたのを思い出す……

……事務所の電話が鳴る。


高坂が電話をとる。

「はい。!……おい、ウワサをすれば……SAのカルロスからだ。緊急を要する話らしい?」


多機能電話の通話モードを 会議 にセット。


とたんにカルロスの緊迫した声が、事務所内にひびき渡る。


「……東亜の依頼が俺たちに来たのが、なんと10時間前だ!やつら、どうせイヌヅカは……死んじまっているもんだと思っていたらしいから、3週間もグズグズしてたんだろうが……。俺たちをインチキ業者とでも思ってるような、なめた態度だったしな!! しかし、」


「イヌヅカの写真を見てぶっとんだぜ!! 俺たちは別の線から、希少動物密売シンジケートを追っていたんだが、」


「15日程前のやつらの顧客にイヌヅカがいたんだ……! 偽名だったが、何者かと思って調査中だった。写真と容貌がぴったりだ。積荷は大型の肉食獣とだけある。依頼は誰にも知られずに自分と積荷を目的地まで送る事。行き先は 日 本 だ!」


千堂がうめく。

「!!! ……なんてこった」

高坂が呆然とつぶやく。

「危険ランク A のUMAが……」


一気に緊迫した室内にカルロスの声がひびく。

「繰り返す!! チュパカブラを奪取した犯人イヌヅカと生態すら謎の危険ランク AクラスのUMA『チュパカブラ』は日本に上陸した!!

犠牲者が出る前に取り押さえないと……」


千堂のしぼりだすような声があとを引き継ぐ。

「……何十人犠牲者がでるかわからん!」


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