第32話
結局、オルレニアたちが出立するまでの二日の間に襲撃は無かった。
ルフィアは街を見て回りながら確かに感じた悪魔の気配を探し、アルテはその間も魔術の改良を続ける。
そうやって二日間を過ごす間に判明したのは、材料に問題がある、ということ。
なんらかの力によって、『色の力』の流れが阻害されていたのだ。
元よりそのつもりであったが、これで不安定だった指針が定まったと言える。
尚、一応とばかりに戦力として傭兵たちに協力を求めたが、金をもらっても勘弁、という者ばかりでルフィアの考えは失敗に終わった。
だが、二日間の間に襲撃への対策は随分と整った。
邸宅のあらゆる場所に不法侵入に反応する魔術が設置され、ユエンが作り出した強力な毒液が入った試験管は、ルフィアの腰に下げられている。
ウラガーンが動きやすいように邪魔な家具は一部屋に押し込み、寝ているときの襲撃に備えて、寝床は窓のない部屋に移動。
万が一でもアルテの妹に危害が加わってはならないため、ユエンが数年前から放置し続けた石造りの地下室を掃除して、そこを彼女の居場所にする。
結果的にみるとユエンの家の大掃除がほとんどを占めるのだが、アルテはそれについて満足していた。
そして二日後。ユエンとオルレニアは領主の元へと出立した。
◎◎◎◎
「――ァ、アケルテ?」
「その調子ですわ、ルフィアさん。もう少し、ルを巻き舌にして、もう一度」
襲撃の対策が終わり、二人が出立した後、残ったルフィアは手持ち無沙汰となっていた。
アルテも、原因が材料となっては手の打ちようがなく、時間を持て余していたといえる。
昼食時までもまだ時間がある。
その結果、ルフィアはアルテより色の力について、教えを受けることとなった。
「アケルテ、で発動。ネテルエで指示。この二つを連続して発音することで、それまでに構成した魔術や魔法を発動させます。
この言葉は元々、竜が使う言葉から始まり、それを真似た妖精たちの言葉が、基本的な色の言葉となりました。念のため言いますけれど、始まりの言葉である竜の言葉は、聞いたとしても真似してはいけませんわよ」
「……真似したら、どうなるんですか?」
「発動に必要な色の力が多すぎて、たとえ発動できても命ごと持っていかれますわ」
最初は基礎的な知識から、といいながら、アルテはかなり実践派の思考だった。
簡単な言葉の意味から、それにより起こる結果。
色の力や魔術、魔法に対抗する方法を教え、試させる。
アルテのペースで考えるならば、なるほどオルレニアは慎重派になるだろう。
「魔術の欠点は構成に時間がかかることと、黒に堕ちる可能性があるということ。魔法の欠点は単純なことしかできないという事と、対応されやすいということです。『崩れた色彩』を捕まえるときに使った魔法が対応されたのが、良い例ですわね」
アルテの説明は、オルレニアとよく似ている。
説明をした後に、それを補足する発言や行動をすることで、理解させる方法だ。
ただ、オルレニアと違って、アルテは魔術や魔法をその場で使用したりはしない。万が一のことがないように気をつけているらしい。
「魔法は自身の持つ『色』によって適正が左右されますわ。『赤』のわたくしでしたら、過激な力。つまり攻撃的な魔法が得意になります。言い訳するわけではないですけれど、拘束の魔法が解けたのは、そういったところも関係してきますわね」
「他の色は、どんな力なんですか?」
「『青』は不変の力、身を守る魔法。『黄』は流れる力、移動に関わる魔法。『白』は協和の力、あらゆる力を借りる魔法。『黒』は侵食の力、あらゆる力を奪う魔法。ほかにも、治療に向いた『緑』の力や、物を作る『茶』の力がありますわね」
ルフィアの質問について、アルテは逐一答えを返す。
時間のある今の状況では、特に急いで全ての知識を教える必要もなく、アルテは確実に知識を蓄えさせることを優先していた。
「……さて、ここまで説明しましたけれど、大丈夫でいらして?」
「はい、アルテさんの説明がわかりやすいので、とても勉強になります」
気を遣ったようにルフィアに確認するアルテ。
ルフィアがにこりと笑って返す言葉に偽りはなかった。
ただ、恐らくはアルテが気にしているのは、もう一つの事情であろう。
「それはそれでいいのですけれど……」
アルテの視線は、ルフィアの膝元に向けられている。
それもそうだろう。初めのほうは二人で聞いていたのに、いつのまにかルフィアの膝を枕にして、狼が寝ているのだから。
「たぶん、理屈的なことは嫌いなんだと思います」
「そうですわね、母親の方もそうでしたわ。それよりわたくしは、ルフィアさんの足のほうを気にしておりますのよ」
「ええっと……」
いくら乗せているのが頭だけで、その毛並みがとても素晴らしいものだとしても、ある程度の時間になると足が痺れてくるものだ。
ウラガーンに枕にされているルフィアの足は、アルテの心配通り、感覚がなくなるほどにはなっていた。
「ウラガーン。起きてください」
ぽんぽん、とウラガーンを美しいその銀色の毛の上から叩くと、ぐる、とよくわからない唸り声が帰ってくる。
その寝顔はとても穏やかで、とてもではないが、この街に入ってからの慌ただしい空気にはそぐわないほど純粋であった。
しかしルフィアにも、足の痺れという問題がある。
このまま寝かしておくのもやぶさかではないが、もしもこの時に襲撃があったなら、ルフィアは産まれたての子鹿にも劣る足のまま戦わなければならないだろう。
いくら万全の対策をしているとはいえ、それはまずい。
それにルフィアは、そろそろお腹が空いたのだ。
「アルテさん、お願いします」
一瞬だけ目を伏せて頼むルフィアに、アルテはこくりと頷いた。
「“目覚めなさい”」
『ヌッ……‼︎?』
過激な力であるがゆえに、持続力は低くとも、アルテの力の強制力は高い。
強引に目を覚まされたウラガーンは、戸惑った様子でルフィアを見上げた。
「おはようございます。ウラガーン」
『……私は、寝ていたのか?』
「はい。わたしの足を枕にして」
ルフィアがにこりと笑いながら言葉を返すと、ウラガーンはしばらく呆気に取られたあとに、人型になり、まるで親に叱られて泣き出しそうな少女のように俯いた。
「べつに怒ってませんから、そんな演技はしなくていいですよ」
いくら少女の姿をしているとはいえ、ウラガーンはルフィアの何十倍と生きている狼だ。
頭が回るといえば、そうなのだろう。
怒ってないと言われた瞬間、ウラガーンはパッと顔を上げて、何事もなかったかのように狼の姿に戻る。
「……それで、勉強は終わりに致しましょうか?」
「再開しても、きっとまた同じことになるだけですから。お昼ご飯にしましょう」
アルテは呆れたように笑い、ウラガーンはご飯、という言葉に目を輝かせる。
出掛けるために立ち上がろうとしたルフィアは、足が痺れていることを忘れて、情けなく転んだのであった。
◎◎◎◎
プラーミアが炎の街と言われる理由がわかるほどに、明るく、熱気に満ちた食事処。
ずいぶんと繁盛しているのか、ずらりと並んだテーブルは、ほとんど埋まりきっていた。
もう魚は飽きた、と悲鳴をあげる職人たちが、目の前に出てくる焼き魚を見て頬を緩ませるのは、やはりその味が良いからだろう。
そんな男っ気の多い食事処で、ルフィアたちは食事をしていた。
「そういえばアルテさんは、ヴァロータの二人とも昔からの知り合いなんですよね?」
塩気の効いた魚の切り身を頬張りおえて、ルフィアが口を開く。
その髪は灰色に染まっていて、ルフィアのことを「白い少女」と覚えている者たちならば、そう簡単には気づかない。
テーブルを挟んで反対側に座るアルテも、魔術の力で全く別の女性に変身していた。
「ええ、ヴィエナ様と同じように、彼らも昔からの付き合いですわね。どうかしまして?」
「いえ、どういう関係だったのかな、と思って」
イヴは竜、ロンバウトとオルレニアはおそらく人間、そしてアルテは今のところ不明。
恐らくはこれから出会うことになるオルレニアの仲間も、人外が一定数いるはずだ。
以前にイヴが共に戦った仲間と言っていたが、とてもそれだけとは思えなかった。
「そうですね……彼らは、同じ目的を持つ同士のような存在ですわ。大戦争の時代、ヴィエナ様が戦争終結のために行動を起こしました。我々は彼の元に集まり、共に戦った仲間でしたの」
「それは、オルレニアさんを頭にした集団、ということですか?」
「そうですわね。彼は上下関係はないと言っておりましたけれど、彼が頭目にいたことは間違いありませんわ」
上下関係がない、という発言については、実にオルレニアらしいといえる。
彼はどんな相手に対しても、無駄にへり下ることをしない。おそらくは、権力機構というものになんらかの苦手意識があるのだろう。
「ヴィエナ様は、昔の話をあなたに聞かせていませんの?」
ふと、アルテがそう言った。
「少しは聞いていますけど、そんなに詳しくは……」
「それなのに、魔術の話をしたりしていますの?」
「そう、ですね」
ゆっくりとアルテの目が見開かれ、驚きの表情を作っていく。
そしてぽかん、と音がなりそうなくらいになった頃、アルテは大きくため息を吐いた。
「さすがにそれでは、わかりにくいことも多いでしょう……」
どうやらアルテに言わせれば、かつての話は魔術を理解するのにとても大切なことらしい。
思えば、大戦時代から生きてきた古の存在たちはみんな魔法が使えるのに今の時代に魔法が存在していないことを考えると、その情報は大切のはずだ。
ルフィアは違和感に思っていなかったが、オルレニアは意図的にそれを隠していたのだろうか。
「あなたに魔術を教える前に、聞いておいたほうが良かったですわね。失礼しましたわ」
「あ、いえ、大丈夫です。今から聞いても問題はないんですよね」
うなだれるアルテに問うと、彼女は苦笑いを見せた。
それほどに大切なことなのか、とルフィアは少し不安になる。
「大戦争の時代に、魔法はありふれていましたのよ。わたくしやヴィエナ様は特別ですから基準にはなりませんけれど、小さな炎を作ったりするくらいなら五十人に一人はできたはずですわ」
五十人に一人、確かに貴重というほどではない人数である。
一つの村に一人程度といったところか。
それほどの数が使えた力ならば、その時代に影響していないはずがない。
なるほど、魔法の知識をつけるにあたって、その時代の知識が重要になるわけである。
「当時に存在した魔法を利用した物品の数々、戦争が起こる理由、魔法による失敗で起きた事件……等々、知っておいたほうがいい知識ばかりですわ。例えば、魔法を使われた時の対処法、なんて、とても大切でしょう?」
「魔法を使って対抗する以外にあるんですか?」
「魔法は万能じゃありませんもの。当然のようにありますわ」
アルテやオルレニアが使っていた、言葉で人を操る力。
アレを敵に使われたら、敗北は確定する。対処法についての情報は、ルフィアにとって喉から手が出るほど、欲しいものだった。
「当時でも、魔法を使わない剣士はいましたわ。彼らは魔法に対抗するために、様々な技や物を生み出したのです」
「あれに、対抗できる技……」
想像してみても、ルフィアには到底わからない。
悪魔の使った氷柱を飛ばす魔術程度なら、剣で弾けばいいのだが。
「まあ、その辺りも追い追い教えることになりますわね。食事中に、あまり小難しい話はしたくありませんわ」
軽くため息を吐いて、アルテはそう言った。
たしかに、と思ったあとに、ルフィアはオルレニアのことを思い出す。
彼はどんな状況でもルフィアの質問に対して答えていたが、迷惑だったのではないか、と。
「ヴィエナ様のことを考えているなら、安心していいと思いますわ。あの方はとてもお優しい人ですもの」
「ど、どうしてわかったんですか?」
「数日一緒に過ごせば、表情で大体わかりますわよ。特にあなたは、顔に出やすいでしょう」
そう微笑まれて、ルフィアは顔を赤らめる。
顔に出やすい、とはよく言われているが、まさか数日で見抜かれる程だとは思わなかった。
ちらりとアルテの顔を見るが、彼女の心の内は読めない。
表情を読むという技術がルフィアにないのか、あるいはアルテの隠し方が上手なのか。
いずれにせよ、表情を操る努力をしなければ、とルフィアは危機感を覚えたのであった。
◎◎◎◎
街を出て、すぐのところにある、薪を集めるための針葉樹の森。
伐り倒された木の上に、一本の丸太が置かれている。
その木から少し離れた場所で、ルフィアは立っていた。
鈍色の輝きの先に、視線を集中する。
思い切り右腕を引いて、左手を剣の腹へと添えた。
すぅ、と息を吸い、揃えていた両足を、蹴り出しの形に変える。
剣を持つ右手に顔を寄せ、刺し貫く対象へと目を向けたルフィアは、息を止めた。
音もなく、その足が地面を蹴る。
上半身の型を変えずに、対象となる丸太へ一直線に跳んだルフィアは、地面に足が着く直前にそれを崩した。
添えられていた左腕が離され、上半身の捻りによって、剣が一気に加速する。
一瞬。銀閃を残した刃が、丸太を寸断した。
「遅い……」
ぽつりと、額の汗をぬぐいながらルフィアは呟く。
『鉄をも切り裂く一撃』は、敵の防御を無視して切り裂く、まさしく必殺の一撃だ。
本来ならば断つことなど困難な丸太を、真っ二つに切り裂くことさえ容易である。
体力が少ないルフィアにとって、この一撃は戦闘の要。
たとえわずかでも練度が落ちたなら、それは大きな問題なのだ。
「なにが遅いってんだ。俺の目にはなにも映らなかったぜ」
「いいえ。今のでは、避けられる可能性があるので」
ルフィアは背後から聞こえてきた声に、至極真面目な顔で言葉を返す。
彼女の言葉を受けて、鉄球の戦槌を肩に担いでいたドルフは苦々しく笑った。
彼と出会ったのは、偶然のことであった。
ルフィアが酒場で『崩れた色彩』関係の情報を収集しているところに現れ、突然剣技を見せてほしいと頼みこんできたのだ。
「避けられるって……お前、一体なにと戦ってんだ?」
ふと、ドルフが訝しげな顔をする。
傭兵と名乗ってはいるものの、ルフィアはこのプラーミアに来てから、傭兵としての活動を他に見せたことはない。
ただ、流されるままにオルレニアたちの手伝いをしてきただけだ。
「いろいろ、です。たとえばゲルダンさんなら、今の一撃は躱すと思いますよ」
「あんなのを基準にしてんのか?そうそう出会う相手じゃねえぞ」
「そうそう出会わなくても、出会ったときに戦えなければ死にますから」
ルフィアの言ったことは、事実である。
負ければ死ぬ。それは傭兵が相手でも、獣が相手でも、『崩れた色彩』が相手でも、同じことだ。
少女の赤い目に気圧されるように、ドルフは咳払いをした。
「なるほどな。お前がなんでそんなにデキるのか、大体わかったぜ」
「じゃあ、逆にドルフさんは、ゲルダンさんが敵にいたらどうするのですか?」
「あァ?そりゃあ……逃げるに決まってんだろ。金より命だ。最悪、生き延びてりゃ功績には含まれるもんでな」
ドルフは言い訳をするように、明後日の方向を向いて口を尖らせる。
「べつに、お前の考え方を否定してるわけじゃねえ。実際、そっちのほうが長く生きられるだろうよ」
そう呟くドルフの目は、どこか、羨望が混じっているようにも見えた。
ルフィアは、自分でも自覚がある程度には戦いに関する才能を持っている。才能のある人間と、そうでない人間の差は、意識しなくても出るものだ。
才能のある者は、実戦の中で成長できる。才能のない者は、成長しておかなければ、そのまま命を落として終わるからだ。
「ドルフさんの言いたいことも、わかりますよ。こうやって私を誘ったのは、私に対して、警戒を抱いていたからでしょう?」
「解ってんのに、見せてよかったのかよ。さっきのは、お前の
にこりと、無邪気な笑顔でドルフの考えを言い当てたルフィアは、ひらひらと両手を振った。
「こんなかわいい少女に、手を出すんですか?」
「あぁ……手を出さなきゃいけねえ時もあるだろうさ。本音は、俺なら見せても大丈夫だから、ってところか」
「そうですね。いちおう、
酒場で酔っ払ったドルフたちを倒した時点で、彼らの実力はおおよそ把握していた。
仮にルフィアが『鉄をも切り裂く一撃』を切り出したとして、あの場にいた傭兵で、抵抗できる人間はほとんどいないだろう。
目の前にいるドルフにも、少なくない痛手を負わせられるはずだ。
「慢心じゃねえのが悔しいところだな。確かに俺じゃあ、お前に一矢報いるのが限界だ」
「戦いではなにが起こるかわかりませんので、そうとも限りませんよ。でも、ドルフさんと戦うなら、私は絶対に油断はしません」
「随分と評価してくれてるようだが?」
「あれだけいる傭兵の中で、あなただけが、私のことを警戒しています。本当に厄介なのは、そういう人ですから」
ルフィアにとって、ドルフは明確に危険な手合いであった。
彼女の少女という容姿は、相手を油断させることの一助となっている。周りに脅威ではないと認識されることで、不意を突いたり、技術に隠れ蓑をかぶせるのだ。
それを無視して、ドルフは最初に地面に倒されてから、ひたすらにルフィアを警戒していた。
敵に回した場合、彼は知りうる限りの情報で用意周到に準備をして、確実に仕留めにくるはずだ。
「そこまでわかってんのなら、俺はお前と敵対するべきじゃねえな」
ドルフは空を仰ぐと、腰に着けた羊皮紙をルフィアに向かって広げた。
「何者かは知らねえが、お前を狙った依頼書を昨日渡された。報酬はとてつもなく美味いんだが、やめておいてよかったぜ」
「え……」
「最近、なにか聞いて回ってるだろ? 一旦控えたほうがいいかもしれねえぞ」
広げられた羊皮紙には、たしかにルフィアの名前と、その殺害に対する報酬が書き込まれている。
正体を明かさない人物から渡された、ルフィア個人を狙った依頼書。
それは恐らく、『崩れた色彩』によるものだ。
「ドルフさん、依頼人について、何かわかりませんか?」
「何者かはわからねえ、って言っただろうが。あー……まあ、ぼろ布で隠してはいたが、ありゃあ結構良い身なりをしてたな」
「いい身なり、ですね?」
「おう。少なくとも、俺たちみたいな存在じゃねえことだけは確かだ」
この街で良い身なりといえば、そう多くはない。
ノーグ商会に頼めば、すぐに調査が行われることだろう。
この情報は、非常に重要だ。襲撃者の拠点が分かれば、オルレニアたちが戻り次第、なんらかの手を打つことができるようになる。
ルフィアは、思わず口角を上げた。
「ありがとうございます! これ、貰っていっても大丈夫ですか?」
「あぁ、べつに構わねえが……」
「また、このお礼はしますから!」
ルフィアは半ば奪いとるようにドルフの手から羊皮紙を受け取ると、剣を鞘に直して急いで走り出す。
これまでいまいち貢献出来ていなかったルフィアだが、これでようやく、胸を張れるようになった。
ドルフとの出会いは偶然とはいえ、この情報を得た経緯は、間違いなく彼女の繋がりによるものだ。
ふふん、と鼻歌でも歌いそうな上機嫌で、ルフィアは街を駆け抜ける。
そんな無邪気な少女の姿を、ドルフは静かに見送っていた。
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