第16話 喜び、そして別れ

「やったな班長‼︎」


 カレナが喜んでいる。


「……優勝……きた!」


 レイナは嬉しそうだ。


「アル君、お疲れ様」


 …天使……じゃないシーナだ。


「……良かった」


 ジャックはホッとしている……本当に心配してくれてたんだ。


「いやいや、みんなのおかげだよ、僕なんて決勝しか戦っていないんだし…ところでみんなはこれからどうするの?」


「私は姉と両親とで、ご馳走を食べに行くが?」


 ……そうなんだ。


「……優勝した時の……約束」


 嬉しかったのって…いや、考えないでおこう。


「私も、家で何かします…あ、アル君はどうします?」


 うーん、今日ばっかりは、シーナの所にいるのもなぁ……


 あ、姉さんに会えるかもしれないし……


「うーん、姉さんもいたし…今日は姉さんといるよ」


 今、どこにいるかわかんないけど。


「わかりました、パパとママに言っておきますね」


「うん、よろしく、ジャックは?」


「適当に過ごす」


 あ、さようですか。


「じゃあ、とりあえず解散でいいかな?」


「「「了解」」」


 こうして、今日は解散となった。


「ねぇ」


 僕はジャックに呼び止められた。


「なに?ジャック?」


「勇者が、復讐すべき相手?」


 ……さっきのでわかったのかな?


 まぁ、正直に話すことにしよう。


「うん、そうだよ」


「そっか、どうして?」


 ……全て言ってもいいのだろうか?


 …言えば少しは楽になるのかな?


「……実は」


 僕は、これまでに起こった出来事をすべて話した。


 この世界でのことも、前の世界でのことも。


「そっか、自分もあいつらに復讐がしたい」


 え⁉︎


 どういうことだ?


「それって…どういうこと?」


「あいつらは、僕の故郷を無くした……面白半分で……滅ぼされた」


 そんな……ジャックにそんなことがあったなんて……


 しかも、あいつら……やっぱり最低なやつらだ。


「だから、僕も手伝う」


 …どうしよう、ジャックに手伝って貰えば楽になるかもしれない…だが……


「ありがとう、でも大丈夫だよ」


 それでも、僕は一人でやらなければならない。


 僕のことで、周りに迷惑もかけられないし…


「…分かった、じゃあ一つだけ」


 なんだろう?


「あいつらは本当に強い、一人一人神器を持ってる」


 やっぱりか、じゃないと強くないもんな。


「ありがとう、気をつけるよ」


「じゃあ、また」


「うん、またね」


 こうしてジャックと別れた。


「うーん、どうしようか」


 みんなには、姉さんとって言ったけど……どこにいるのかもわかんないし……


 とりあえず、外へ出てみるか。


 こうして僕は外へ出た。


 だが…僕の頭の中では、あの言葉が繰り返されていた。


 -----

「お前に幸福は似合わない」

 -----


 どういうことなんだろう?


 ……あいつら…なにをするつもりだ?




「あれ?」


 前から見覚えがある人が来る。


「父さん母さんどうしてここに?」


 両親だ。


「いやぁ、息子の努力の結果を見にきたんだよ…アル、優勝おめでとう‼︎」


「ありがとう!ところでどうして僕がここにいるって?」


「大会が終わってアルに会いに行こうと思ったら、アルの友達だっていう人が連れて行きますよって言ってくれて」


 友達?誰のことだろうか?と思った瞬間…


 父さんの頭が消えた。


 続いて母さんの頭も…


「え…⁉︎」


 僕の頬や体に温かい液体がかかる。


 僕が赤く染まる。


 倒れる両親の後ろに、あいつがいた。


「セネル?どうして?」


 セネルだ、そして、槍を持っている。


 分からない…何が起きた?


 え?え?え?え?え?え?


 セネルが僕の前に立つ。


「勇者が力をくれたんだ、そしてお前の両親を連れてお前の前で殺せって言われたんだ」


 言ってる意味がわからない。


「……どうして?」


「さぁ?勇者達は、お前を殺すなって言ってたけど……我慢できねぇ、お前もここで死ね‼︎」


 セネルは手に持っている槍を僕に向け、突き刺そうとした。


 あぁ、僕は……もう……


 ⁉︎


 その時僕は横に吹き飛ばされた。


 誰が⁉︎


 …………………え?


 あ……あぁ………


「大丈……夫………アル……?」


 姉……さ……ん………?

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