第4話 新たな出発

「おい‼︎叫び声が聞こえたんだが、どうした?」


 父さんが焦った様子でやって来た。


「いえ…なんでもありません」


「本当か?アル、パパは嘘が嫌いなことは知ってるよな?」


「…すみません、魔法の練習をしてたら失敗して」


「そうなのか?それにしては、被害がないようだが」


「いえ、僕の右腕が吹き飛びました」


「はぁ⁉︎それは本当か?でも…今はあるよな…どういうことだアル?」


 僕はさっきの出来事を話すことにした。


「えっと…姉さんに治してもらいました」


「本当かルフナ?」


「うん…パパ、本当だよ」


「ありえない…失ったものを再生させるなんて…」


「あのね、パパ、アルが怪我をした時、神様に祈ったの…そしたら、声が聞こえて…」


「そしたら、右腕が治ったと?」


「…うん」


「なんて聞こえたんだ?」


「えっと…そなたの願い聞き入れよう、ルフナに加護を与えるって」


 なんだか、そんなことを聞いたら、姉さんが聖女みたいだ。


「本当かルフナ?もしそれが本当なら…とんでもない事だぞ」


「「え⁉︎」」


 まさか…本当に聖女とか?


 それから、2年後姉さんは正式に神の加護を受けし者として、王都で暮らすことになる。


 でもそれはもう少し後の話。


 父さんと家に帰ると父さんはすぐに姉さんのことを母さんに話した。


 母さんは姉さんの事を聞き喜んでいた。

 それと、僕のことも心配してくれた。

 けれど、僕のことより姉さんのことの方が大事らしい。


 姉さんは、勇者様と冒険出来るかも‼︎と喜んでいた。


 はぁ、またあいつらの話か…本当にあいつらは勇者様と呼ばれるようなことをしたんだろうか…


 …寝よう、また明日から頑張ろう…


「父さん、母さん、僕疲れたんでもう寝ますね」


「そうか、もう寝るのか?」


「えー、アルもう寝るの?まだ起きていようよ〜」

「ううん、もう寝るよ」

「そっかぁ…おやすみ、アル」


 今日は、なんか色々あった一日だった…


 僕は、その日夢を見た、現実のような夢を…

 --------

「…………て」

 僕を呼ぶ声がする。

「…ル…起きて」

 …

「アル、起きて‼︎」

 姉さん?

「ざーんねん、姉さんじゃないよ〜」


 え、僕、声に出してないのに…なんで?


「なんで、って言われてもねぇ…うーん…神様みたいなものだから?」


 神様って…姉さんに加護を与えた人?


「違う違う、そんな優しい神様じゃないよ」


 じゃあ、悪い神様?


「うん、そんな感じ」


 でも、なんで僕のところに?


「君、サクリファイスを使ったね?」


 え…うん、使ったよ、右腕が吹き飛んだけど…


「そりゃあそうだよ」


 え⁉︎


「だって、使い方が違うもん」


 え…使い方が…違う?


「うん、魔法展開の代わりにサクリファイスを使ってみて」


 そしたら、使えるの?


「うん、契約が必要だけどね?」


 え?契約って何?


「それはその時のお楽しみかなぁ」


 え…


「そろそろ時間だ、じゃあね」


 まって、まだ聞きたいことが…


「なに?じゃあ一つだけ聞いてあげる」


 あなたは、神様なんですよね?


「うん、そうだよ」


 じゃあ、この世の事は何でも知ってるんですよね?


「うん、そりゃあ一応、神様ですから」


 この世界に、勇者様と崇められてる人達がいるんですが、本当に勇者様と呼ばれるようなことをしたんですか?


「…それは、答えれないなぁ」


 …どうして?


「私が楽しめないから」


 え…?


「あー、もうこんな時間だー、というわけでじゃあね」


 ちょ…ちょっと待って!


「そんな急がなくても大丈夫、どうせ君とは現世で会うんだから」


 え…


「じゃあ、またねアル君、それと、復讐を忘れないでね」


 --------


「アールー」


 僕の名前を呼ぶ声がする…


 今度はちゃんと姉さんだ。


「おはよう、姉さん」


「うん、おはよう、なんかうなされてたけど大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ」


 うなされてたのか…なんか変な夢だったな。


「えっと…私のことに関してパパとママが話があるから来てって…」


「そうなんだ、すぐに行くよ」


 多分、昨日のことだろう。



 僕は父さんと母さんの元へ向かった。


「アル、来たか」


「…うん」


「パパとママは、ルフナを王都で暮らさせることにした」


 …やっぱり


「ルフナを王都で勉強させたら聖女と呼ばれて勇者様と冒険するかもな」


「…なんで…まだ五歳なのに」


「あぁ、それはパパとママも考えた、で考えた末に二年後ルフナには王都へ行ってもらう…アルも嬉しいだろ?ルフナが勇者様と冒険するかもしれないんだぞ」


 それが、一番嫌だ。


「…嬉しくない」


「こればっかりは、どうしようもない、ルフナだって行くって言ってるんだ」


「姉さん…本当なの?」


「うん…離れ離れになっちゃうけど…」

「私も、王都で勉強したい…そしてアルを守れるようになりたい、といってもまだ王都へ行くのは二年後だけど」


 姉さん…そんなことまで考えていたのか…もう僕には王都に行くことに反論する理由がない。

「わかったよ…姉さん…僕も応援するよ!」


「ありがとう、アル‼︎」


 --------

 それから…二年後


「ついにこの日が来たなぁ…」

「姉さん、それじゃあ王都でも頑張ってね」


「うん、ありがとう‼︎アルも頑張ってね」

「それと、エレナとヘレナのことよろしくね」


「うん、任せておいて」


「じゃあ、パパ、ママ、アル、エレナ、ヘレナ、行ってきます!」


「「「行ってらっしゃい‼︎」」」


「「いたーらー」」


 …こうして、姉さんは王都に行きました。


 あ…それとこの二年間でお兄ちゃんになりました。

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