第2話 英雄?

「ん…ここは、どこだ?」


  てか何があったんだっけ?


 僕が目をさますと、木でできた天井が見えた。


「英雄様、目が覚めましたか?」


 老人の声が聞こえる…というか英雄様って…


 僕は、声がする方へ目を向けると、豪華な民族衣装のようなものを着た老人がいる。


「あなたは…誰ですか?」


「は、ははぁ、私はこの村の村長でございます。この度は、ドラゴンから我々を守っていただき有難うございます。」


 村長さんだったか、だから豪華な服を着てるのか。

 ドラゴン…あぁ、なんか思い出した。

 僕って空を飛んで…落ちたんだよな…でもなんで、体に傷がないんだ?


「英雄様はどうしてか魔法が効かず、その代わりにポーションを使わせてもらいました」


 不思議に思って体を見てるとそれを見た村長が察したのか教えてくれた。


「…魔法が効かない?」


「はい、ひどい怪我でしたので、回復魔法をかけたのですが、全く効果が出なかったのです」


 やっぱりそうか…だからあの時もドラゴンの火が痛くなかったんだ…


「えっと…村長さん傷を治してくれて有難うございました、それで…お名前は?」


「有り難きお言葉…はっ、英雄様、すみません私としたことが…私の名前はドーラでございます」


「それじゃあ、ドーラさん、えっとですね、まず英雄様って何ですか?」


「英雄様は英雄様ですよ」


 まあ、そうだろうね、英雄は英雄だ、じゃあ…


「ところで、英雄様って誰?」


「英雄様はドラゴンから我々を守ってくれた貴方ですよ」


 …そうだよね、普通敵から人を守ったりしたら英雄だよね、でも…


「…僕、英雄と言われるような人間じゃないんだけど…」


 僕はただの日本人だ、決して英雄と呼ばれるような人間じゃない。


「いえいえ、貴方様は我々をドラゴンから守ってくれました、それだけでも英雄と呼ばれるような行動ですよ」


 うーん、どうすればいいんだろ…あ‼︎


「じゃあ、英雄として一つお願いしてもいい?」


 この手で行こう、英雄のお願いなら叶えてくれるだろう。


「はい、何なりと言いつけてください。金でも土地でも人でも」


 作戦通り…というか、金とか人って…英雄ってそういう感じなのか?


「いやいや、そんなものじゃなくて、えっと、とりあえず英雄様って呼ぶのやめてくれない?」


 僕は英雄と呼ばれたことがないから(当たり前)なんだかむず痒いのだ。


「え…どうしてでございますか?」


 うーん、何か理由をつけたほうがいいよな…あ!本当のことをいえばいいんじゃないか?

 そうすれば、僕の意思で助けたわけではないって伝わるんじゃ…

  けど…信じてくれるかな?


「えっと、まず僕はこの世界の人間じゃないんだ」


「つまり、異世界から来たと?」


 お、どうやら信じてくれるらしい。


「うん、そういうこと、で目が覚めたらなぜかドラゴンに火を吹かれていたんだ」


「つまり、偶然だったと?」


 物分りがいい…さすが村長だけはある。


「うん、そういうこと…でもなんで魔法が効かないんだろ…というか、僕魔法なんてもの初めて見たよ」


「だからではないのですか?」


 ん?どういうことだ?


「どういうこと?」


「英雄様の世界になかったから、英雄様に魔法が効かないのでは?」


 わぁお、この村長さん天才なのでは?

 なるほど…じゃあ、ポーションが効いたってことは…薬ってことかな?


「なるほど、だから魔法が効かず、物理攻撃は効いた…と」


「たぶん、そういうことでしょう…異世界ですか…」


「そう‼︎異世界から来たんだ、だから、英雄なんかじゃ」


 ない、と言おうとしたが、ドーラに阻まれた。


「しかし‼︎異世界から来たとしても、たとえ偶然であったとしても、我々を救っていただけたことには変わりません」


 ぐぬぬ…どうすればいいんだ?

  うーん…これならどうだ?


「じゃあ僕をこの村にいさせてよ」


 僕がこの村の一員になればいい、どうせ元の世界に戻れないと思うし。

 一員になれば立場としては村長の方が上だ。


「そ、それはなんとありがたきこと」


 きた‼︎このまま突き進む‼︎


「じゃあ、僕を英雄様と呼ぶのをやめてよ。村長の方が偉いんだから、それと僕には彰人っていう名前があるからこっちで呼んで」


 …どうだ?


「…わかりました、アキト様ですね」


 よっしゃ‼︎

 …もうちょっといけるか?


「様付けもやめてほしいんだけど…」


「それは本当に無理でございます」


 あー、それはさすがに無理か。


「うーん…わかったよ、じゃあ、これからよろしくねドーラ」


「はい、よろしくお願いします、アキト様」


 こうして、僕はこの村の一員になった。

 一員になったのはいいんだけど、ここってどこなんだろ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る