第17話 十五杯目✿祭りのあと 第二章 新宿事件
花見の宴が終わり、みなそれぞれ家路へと向かう。
「いろいろ、ありがとう御座いました。
クシノ!またすぐにくるからな!」
「まつのじゃ、しばし話がある。
おぬしは、なかなか面白いやつじゃ!
わしとクロウの仕事を、手伝ってもらうことにした」
「いやです。
どうせまた、花見の準備とか、こきつかうんだろう!?」
「いや、それはまた来年でええ。
わしには、人のサダメがみえる。
わしが見た時には、この付喪神はクロウに切られとった。
だが、それをおぬしは変えて見せた。
まあ他にも、干渉したやつがおるが、
こういう事は、滅多にはおこらぬものなのじゃよ。
それに、最近はやたらと、彼岸ものが悪さをしとるんでな、猫の手以外にも、人の手を借りたいのじゃ。」
「確かにここ最近、人の目に見えるような、力の強い奴らも多く出てきている」
「もともとおぬしの家もかかわっとることじゃ!
実家の手伝いだと思え!
それにな、このままじゃとおぬし、近いうちに死ぬぞ」
「えー!俺死ぬの!?
いやだよ!
まだまだ揉みたいものがいっぱいあるんです!
お願いしますから助けて下さい!」
「助けてやるから、わしらの元におれといっとるんじゃ!
何かあるときは、クシノを使いに出すから、必ずこい!
今日は帰って寝ろ」
ハルはマナに連れられて、まるでしかばねのように歩いていく。
残されたのは、女と男二人に猫一匹。
「まさか、お前に会えるとはおもわなかったよ。
サガミにも見えなかったのは、お前だったか」
「ええ。全くですねえ。
前にお会いしたのは、何百年前ですかね?
それにまさか、旅先でお会いした、伯爵様にも再開するとは、これまた、ご縁がありますねえ」
「お前がご縁とは、相変わらず笑わせてくれるの?
異国の神に仕える者よ」
「うちの神様もあなた方みたいに、姿を見せてくれりゃね?
あおいらだって、あちこち放浪なんかしないんですがね。
全く、どこにいるのやら」
「お前は、そうか!ははは!
お前のような者には、私は憎むべき者だろう!
なぜ、あの時、戦いを挑まなかったのだ!」
伯爵は立ち上がり、嬉しそうに笑う。
あたりの闇が、おぞましいものの周りに、集まっていく。
闇の中には赤く光る、狂気の瞳があるだけだ。
「ちょっとまってくんな!!
おいらには、そういう物騒な事は関係ねえ。
昔からただ人の縁ってやつを、見守ってきただけだ。
今はただの演奏屋でしかねえ」
「全くお前らのような、神のおもちゃの中にも、私のような、神を呪った奇跡の出来損ないを憎みもしない、出来損ないのおもちゃがいるとは、友よ、君たちの周りには、やはり面白い連中があつまるのだな」
「まあそういうな。
俺はこいつには借りがあるんでな。
あまり喧嘩はしてほしくないんだが」
「ふん!まあいいだろう。
私は帰る。
小夜との約束をまもらねばならんのでな」
伯爵は闇の中へときえていく。
「ああおっかねえ!
アレはなんだい?
あんなやべーやつがまだ、この世にいたのかい!?」
「あれでも、変わったんじゃないかの?
昔に比べれば優しすぎるくらいじゃ」
「それより、あの馬鹿弟子そんなに、危ないのかい?」
「わからんことばかりじゃ。
こんな事は、わしも初めてじゃからの?ただな、
これから、争いに巻き込まれるのが見えたんじゃが、
人以外の者が多く関わっておるのか、よく見えんのじゃ」
「なにかおこるのかねえ。
まあ考えても仕方がねえや!
うちの馬鹿弟子を、何卒よろしくおねがいしやす」
「あいつそんなに馬鹿なのか?」
「そりゃあそうさ!
十年以上一緒にいたのに、おいらが若いまんまなの、きずかないんだぜ!?」
「馬鹿だな」
花は散り始め、
池は花びらの川となる。
それは春の終わりをつげているのか。
それとも、
夏の始まりへと続いているのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます