第11話 十杯目✿発掘屋のしんちゃん

 〜発掘屋のしんちゃんの視点〜


 

 俺の仕事は【発掘屋】だ。


 みんなは【しんちゃん】って呼んでくれる。


 発掘屋っていうのは、友達の誰かがって言っているだけだ。

 正式には考古学者だ。


 しかし仕事の内容はいたって地味なのも事実。

 遺跡がありそうなところを、ひたすら掘ったりする。

 だから発掘屋なんて呼ばれてる。


 俺は映画が好きで、子供の頃からよく親友と2人で映画ばかり見ていた。

 そんな俺の好きな映画、それはアドベンチャーものだった。

 あいつは、SFものやアクションばかり好きだった。


 改造車で過去にいく映画の主人公が、過去にタイムスリップする。

 その時代にない新しい音楽を、ギターで演奏するシーンに感動していた。

 そいつはそのままギターを初めたっけ。


 そんな俺は今、イタリアにいる。


 なんでかっというと簡単な話だ。

 逃げてきたのだ。


 しばらくはこの国で、考古学にどっぷりつかろうと考えている。

 今はまだただの観光で、日がな一日ワインばかり飲んでいる。


 俺はまだ、あいつの顔をみて、笑える勇気がないんだ。


 俺があいつと出会ったのは、俺たちが小学校に入りたての時だった。

 同じクラスで家も近くてよく遊んだ。


 何もしないで1日を過ごしても、自然と楽しかったものだ。


 俺たちが中学に入る頃に、あいつの家に女の子がやってきた。

 風森のおばさんに手をつながれて、恥ずかしそうにして。

 5歳の女の子はマナという名前で、なんでも本家の子供だった。

 両親が亡くなり、こちらで引き取ることにしたそうだ。


 よく三人で風森の本家に遊びに行った。

 本家の婆さんに叱られていたのが懐かしい。


 本家は自然に溢れていて、子供の俺たちにはいい遊び場だった。

 あそこの家は古くからあって、家の他にも離れが二つもあった。

 ほとんどが俺たちにはわからない古い巻物。

 鎧や刀なんかでただの倉庫みたいになっていた。


 中学に入ってからは、友達も増えて騒がしい毎日だった。


 そんな俺たちもいつしかでかくなった。

 そして、マナは綺麗になった。


 俺はいつしか親友の妹に恋をしていた。

 あの子は中学に入った頃から急に女らしくなった。

 高校に入る頃には、もう胸がすごいことになっていた。


 俺の考古学的で鍛えた目はごまかせない。

 

 Fカップだ。


 あー!なんたる豊満さ!

 奇跡だ!

 ファンタジスタだ!

 こんなロリ巨乳があっていいのか!?


 俺はいつしか、小さい頃まるで兄弟のように育った女の子。

 マナを女として意識するようになっていたんだ。


 それはいつまでもなくなることがなかった。

 彼女が高校を卒業してから、俺は告白することにした。


「ごめん。しんちゃん……」


 ポロリ


 俺の恋は終わった。


 同時に気付いたんだ。

 マナはハルが好きだった。


 本当はどこかでわかってた。

 でもこの時俺は、確信したんだ。


 何も言わなかった。

 言えなかった。


 あてもなく歩きつづけて、いつの間にか桜の公園に来ていた。

 よく三人で遊んだ、大きなイチョウの木に腰掛ける。

 気づけばまた涙をながしていた。


「……悲しいね。


 ……さみしいね」


 赤い着物をきた少女がそこにいた。


 俺は急に何もかもどうでもよくなっていた。

 気がつくと俺は眠っていた。


 なんだ?夢か?


「……もう大丈夫。

 

 寂しくないから」


 その少女は、俺に取り憑いた。


 その日、うちに帰り、飯を食っている時。

 家を出る時には、家の屋根から、俺をみている。


 俺は頭がおかしくなりそうだった。

 ずっと少女が見えて、語りかけてくる。


「もういいんだよ。


 ……一緒にいこう?」


 その度に、

 本当に死にたくなった。


 心が折れそうな時。

 俺は親友に昔もらったお守りを、固く握りしめて祈った。


「死にたくない!死にたくない!死にたくない!」


 心が少しの間落ち着いても、すぐに少女は現れる。

 俺は拝み屋に助けを求めた。


 発掘屋のしんちゃん「がんちゃん!助けてくれ!!」


 夜中に急にきたにもかかわらず、親友は真剣な顔で迎え入れてくれた。

 本殿に座り俺の話を聞いてくれたがんちゃん。

 そして真剣な眼差しで、

 

 答えてくれた。


「無理!!」


「え!?無理?マジで!?」


「そうなのだよ。

 しんちゃん、無理だ!


 なぜなら、

 僕にはお祓いの才能はあまりないのだよ。

 ただね、これはどうにも普通のやり方じゃあはらえないよ。

 君にあげたお守りはかなりすごい人が作ったやつだ。

 これがあってもだめ。

 本殿に普通に入ってきているし。

 ちなみに、後ろにいまもいるね?

 こいつは多分、神様の部類じゃないかな?」


「……ふうざあけえるなあああ!!!!!。


 この役立たずの生臭坊主がああ!!無理!じゃねえよおおおおお!!!

 俺に死ねってか!?はい無理ですね!

 しにま〜すう!って!なるか!!」


「まあまあ、待ちたまえと友よ。

 僕は住職じゃない。


 ……神主だ」


 俺は、がんちゃんの首を絞めて、泣き叫んだ。


「どっちでもいいんだよ!!

 この役立たずがああ!!

 かわりにお前がしねええ!!」


「まて!!し!しぬうう!!

 ほんとに!!!しぬう!!

 あるから!ちゃんとあるから!!」


 俺は手を離して、荒くなった呼吸を落ち着かせた。


「で!?

 どうしたらいいんですか!?

 か!ん!ぬ!し!さま!?」


「ゴホッゴホッ!ん!

 まずだね、聞いた話だとあそこの公園の木だが、かなり古くからあるものだ。

 塚なんかもあの辺は多いんだよ。


 もしかしたら、何かしらのよりしろになっている神域、又は付喪神などのよりしろになっているもの。

 そんなものが埋めてあったりしているのではないか?

 と思ってね。


 さらに君は、失恋のショックで心がよわっていたんだ。

 たまたま歩いていた神様がついてきたのかもしれない」


「つまり……なにも、

 わかんねえってことだろ!!

 やっぱりしねええ!!

 今すぐしねええ!!」


「まちたまえ!それでだ!

 少しの間だけここにとどめておくから!

 その間に逃げてくれ。


 遠くにだ!そうだな。

 外国がいい!いいいい、

 イタリアなんてどうだ!

 そうだ!イタリアがいいよ!」


「そんなことして、お前は大丈夫なのかよ?」


 拝み屋のがんちゃん「ああ

 僕は最高にハッピーだから大丈夫さ!

 さすがに、幸せな人間には興味はないだろうからね!

 早速やるから!

 結界張ったらサヨナラだ!

 いつかまた、会える日まで!!」


 テンションに押されて、俺は言うことを聞いた。


 何やら着替えて、がんちゃんは1人で変な言葉をしゃべってたが、

 さあ!いまだ!

 過去は忘れてひたはしれ!

 少年よ大志を抱け!

 と30近いおっさんが、その同い年のおっさんにエールを送ってきた。


 助けてもらってなんだが、いつかこの仕返しはしよう。


 あいつはケツ毛が苦手だったからな!

 ケツ毛アタックですこし嫌がらせをしよう!


 そんな決心をして、俺はイタリアに飛んで今に至る。


 そういえば、ケツ毛アタックの考案者の師匠にもあった。

 今はまだあいつには会える勇気がないからな。

 土産にワインを何本かプレゼントしてたら喜んでいた。


 それにしても、お祓いできない拝み屋が!!


 過去を振り向くな!だって?


 そんなの無理にきまっている。


 俺は考古学者なんだから。

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