第9話 八杯目✿天罰の代行者

 ローマバチカンにて〜デュリオの視点〜


 

 俺の仕事は【警備員】だった。


 皆は【デュリオ】隊長何て言うが、そんなに偉いものではない。


 基本的な仕事は、バチカン地下の資料室や宝物庫の管理などだ。

 どちらかというと事務がほとんどだ。


 一般的には知られてはいない事だが、バチカンのには施設がある。

 それは小さな街程度の広さの建物だ。

 というよりほぼ街だ。

 最先端技術で常に管理されている。

 地下だけで、一年以上過ごしている職員もいる。


 ここにあるものは古代の文献や資料。

 奇跡や魔術的なことに関連したとされる貴重な遺物。

 世界中の信者から集めた金銭など様々だ。


 特に貴重なものはそれ一つに対して、一部屋あるのだから驚きだ。

 古いものは空気に触れないように、室内の空調管理などもほどかされる。

 それはまるで大きな金庫だ。


 もっともそれらに直接触れることや目にすることはない。

 かなりの権限がなければいけないからだ。

 俺のような警備員は、あくまでもパソコンでの管理と書類作成くらいだ。

 つまり、それくらいの権限しかない。


 この日俺は【ガイウス大司教】に呼び出された。

 若く大司教になり、かなりできる人なのだが正直いって、怖い。

 もうマフィアみたいに強面だ。

 これは人殺してるよ、絶対。


 そして今現在冷や汗が止まらない。

 ガイウス大司教の前に、直立不動で立っているためだ。


「デュリオ君。楽にして座りたまえ」


「は、はい!」


「実は君に、異動の話がある。

 君の資料を読んだよ。


 デュリオ•マリオー二。

 素晴らしい経歴じゃないか。

 前任者は人事をまちがえたのかねえ。

 君はもともと軍人だろ?

 しかもなかなかの実践経験者だ。

 ただの警備員なんて、もったいないと思うんだよわたしは」


 おっ!?

 これはまさかの出世街道か?

 訓練中にトイレにいったら熊に出くわして焦って走った。

 逃げたら足がもつれて谷に落ちて大怪我。

 恥ずかしくて、ノリで除隊してからというもの、初めての幸運がきたーー!

 ありがとう天国のマンマ!!


「はい!

 私の経験が役に立つならば!

 何処へでも、行きます!!」


「それは頼もしい!

 ところで君は、神や悪魔を信じるかね?」


「もちろんであります!

 神は慈悲深く、悪魔は人々を惑わす。

 忌むべきものです!」


「んー、

 そうではなくてだな。

 あの〜ぶっちゃけて?

 本当に信じてんの?」


 正解がみえねえ〜。

 どうしたらいいんだ!

 もうここは素直が一番だ!!


「ぶっちゃけて!!

 あんまりしんじていません!!」


「……そうかありがとう。

 だろうと思ったよ。

 デュリオ君。

 少し気を引き締めてついてきなさい」


 そう言ってガイウス大司教は部屋を出ると、

 エレベーターに向かった。


 階層は5階まであるのだが、一般の職員は3階までいけない。

 4階からは声門や指紋。

 網膜スキャンといった、厳しいセキュリティーがあるからだ。


 ガイウス大司教に連れられて、初めて4階に入る。

 エレベーターが開き、通路を歩くとまたセキュリティーを通る。


「第一研究室?」


「ついてきたまえよ」


 通路を歩きながらも、通り過ぎざまにいくつかの部屋のなかが見えた。

 白衣をきた人間、銃を訓練するものなどさまざまだ。

 状況が飲み込めずにいたが、ガイウス大司教が一つの部屋のまえで止まる。

 これまたセキュリティロックがかかった扉を開けた。


「こ!っこれは!?

 なんだ、?狼?いや……狼男!?」


「そうだ。

 我々が捕まえた、人ではないものの一つだ。

 あっちは吸血鬼、悪魔に憑かれた人間など様々な実験体だ」


 そこはガラス張りの部屋がいくつもあった。

 みたこともない異形のもの達がいた。

 こんなものが本当にいるのか?

 なにかの冗談じゃないのか?


「あれらは基本的に実験につかっている。

 新しい武器や訓練のためにな」


「訓練?なんの訓練でしょうか」


「それは、君のための訓練なのだよ。


 新しい神の代行者。

 闇を狩るもの。

 忌々しい化け物に天罰をくだすもの。


 今日から君も、

 エクソシストになるのだよ!!」


「えっ!?」


 マジで!?


「言い忘れてたけど断れないから。

 見ちゃったからもう無理だから。

 誰かに喋ったりしたら死んでもらうからね」ニコ!


 こうして俺は、警備員から【エクソシスト】へ転職した。


 神の天罰の代行人に

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