第7話 前進

『パラディン、ハマー43だ。あと三斉射で準備砲撃が終了する。最後は250mmロケット大隊の一斉射撃だ。敵陣とその周囲の地雷原に燃料気化弾頭を四八発叩き込む。吹き戻しに注意しろ』

ゲイツ少佐の声がヘッドセットの中に響く。

「ハマー43、パラディン了解。みんな聞いたか?ちゃんと頭下げてろよ!」

大隊指揮系回線を通じて流れてきた音声を部隊一般形系回線にオーバーライドさせていたから、みんな聞こえていたはずだ。

『パラディン2より各員、攻撃開始二分前』

ジェイクがカウントダウンを開始する。

『パラディン3より全騎、戦術情報ストリームオンラインとせよ。戦術情報ストリームオンラインとせよ』

ミッシーは通信管制も行なっていた。と言っても大半の通信制御はコンピュータが自動で行うから、どうしても人の手を介するところだけアナウンスしていた。

『シックル1-1よりシックル全騎。奇数番号前進用意、偶数番号打ち方用意』

『フレイル全騎は行進射用意』

アルベルトとサカイが自分の中隊に指示を出しているのが聞こえる。

『ハマー43よりパラディンへ。最終射弾着一〇秒前。九、八、七、六、五、四、三、二、弾着、今』

ゲイツ少佐の声にかぶせるかのように味方のロケット弾が敵に占領された丘に降り注ぎ、丘の中腹より上が全て巨大な火球に包まれた。

「うは。こりゃゴッツイ眺めだ」

『戦争も進歩したもんじゃのぉ』

サカイが感嘆の声を上げた。

火球によって舞い上がった土砂があらかた地面に落ちたのを見届けたミッシーが、成層圏偵察飛行船と連絡を取る。

『フンメル31、パラディン3。情報支援を要求します。パルスドップラー地形照合によって敵被害状況を確認したい。可能ですか?』

『パラディン3、フンメル31。可能だ。いますぐやろう。GPS座標同調確認。始め……終わり。』

『フンメル31、パラディン3。ありがとう、良いデータですね。』

『どういたしまして。遠近赤外線画像は順次大隊指揮系にアップしている。確認してくれ』

『パラディン3よりパラディン各騎。最新の地形及び装甲目標のデータ入手しました。各データリンクへアップロード中。確認されたし』

「敵陣の重火器は三、四割ほど減らせたか。よぉし、各員戦闘用意」

『前進開始一分前。戦闘用意』

『シュバルツ、地雷処理ロケット準備完了』

「総員、安全装置解除。これより各中隊以下の音声無線は大隊指揮系統より離脱せよ。各中隊以下の音声無線は大隊指揮系統より離脱せよ。以後、大隊指揮系統音声無線は各中隊長ないし代理指揮官よりの音声無線に対してのみ応答する。データリンクは維持せよ。データリンクは維持せよ。歩兵各小隊は、各梯団の指揮官に従え。把握した各級指揮官は戦術情報ストリームにピン2発」

『三〇秒前』

『カノーネ、煙幕弾発射。着弾は三〇秒後』

『パラディン3より各部署。電波警報。電波警報。衛星軌道よりlバンドおよびXバンドのマイクロ波複数を感知。パルスパターンは帝国軍。繰り返す。帝国軍偵察衛星よりの探査電波を感知』

『フンメル31は敵衛星および敵ネットワークへの攻撃を試みる。期待はしないでくれ』

「フンメル31、パラディン1だ。無理はするな。君が無力化されたら事だ」

『わかってる』

『一〇秒前、カウントダウン、八、七、』

「全員ケツを上げろ」

『四、三、二、一、』

「攻撃開始」


敵陣左翼正面に白色煙幕弾が降り注ぎ、煙幕を形成する。

それを合図に私たちは駈け出した。

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