第10話

 一方その頃、金髪ドリル精霊はいつも通りのおしゃれな赤いドレスを身に着け、森の少女が持つような小さな籠を持って森の中を歩いていた。

 これからエルフの村に向かう金髪ドリル精霊は、嬉しげに鼻歌を口ずさみ、ウサギのように小さな足で軽くスキップをしていた。


 金髪ドリルがびよん、びよよん、とバネ構造の物体がもつ独特のしなりをもって上下する。フリルも上下する。一方胸……。籠には村人たちにふるまう焼きたてのレンパスが入っている。今日も販促活動に勤しんでいるのである。

 エルフにとって精霊が友達なら、精霊にとってもまたエルフは友達なのである。

 金髪ドリル精霊はみんなに尽くすことが嬉しくてたまらないという、心優しいお嬢様なのだ、という設定で村人たちの魔力を吸い上げる、魔力の亡者なのだ。


「まりょくまりょくまりょくー、まりょくーをーたべーるとー。ちしつちしつちしつー、ちしつーがーよくーなるー。あら、村の皆さんごきげんよう」

「ご、ごきげんよう……」


 道すがら、偶然出くわしたエルフの少年たちにも気軽に声をかけるフレンドリーな金髪ドリル精霊。

 その人付き合いのスペックたるや、1人1人の名前と生年月日まで暗記しているほどだ。もっと他の事にスペックを裂けないものか。しかし、俺みたいにこの精霊の事をいまだに金髪ドリルと呼んでいるのもどうかとおもうところだ。


「そうだわ、これが今日のアランと、ダルダロスと、レトロンのぶん。はい。あなたたち、ラッキーね。レンパスは焼きたての方が美味しいですものね、うふふ」


 熱々のレンパスを受け取ったアランと、ダルダロスと、レトロン。指を火傷しそうになったのか、長いエルフ耳をつまみながら、彼らは気まずそうに顔を見合わせていた。

 心から楽しげな金髪ドリル精霊に、いったいどうしてこんな残酷な真実を告げられよう。

 彼女が毎朝心を込めて焼いてくれるレンパスを、もう彼ら村人たちは誰一人として食べてなどいないのだ。

 長老が回収して、みんな塔の下の魔法使いにあげてしまっているのだと。


「どうしたの? さあ、はやく召し上がって」

「あー……すんません、俺たち、ついさっき家で食って出てきたんで……ははは。残念だなー」


 レンパスを口元に持っていこうとすらしないアラン。笑い声が渇いている。

 ダルダロスはレトロンにレンパスをさりげなく渡し、背嚢に片付けさせていた。


 きょとん、とした目でエルフたちを眺める金髪ドリル精霊。

 つい最近、100年まで、彼女が焼きたてのレンパスを渡すや、目を猛禽のようにきらっきらさせて飛びかかってきて、我先にと争うように頬張っていた子供たちである。胸まで掴まれて電撃魔法で懲らしめたことをいまだに覚えている。

 しかし、もうそんな時代は終わったのだ。精霊の感覚ではつい最近の出来事だが、エルフにとっては少年が青年になるぐらいの年月でもあった。

 金髪ドリル精霊は、ぽん、と手のひらを打った。


「あ、なるほど。ははーん、思春期ね? 反抗期なんでしょ? 青春してるんだわ」

「はは、そ、そうなんですよねー」

「ふふふ、仕方ありませんわー、私のようなオバちゃんでよろしければ、3人のお相手になっても、よろしくってよ?」


 などと言いつつ、上着を脱いで、白いブラウスに包まれた上半身を見せる金髪ドリル精霊。おおっと、どうやら着やせするタイプだ。

 若者たちはごくりと唾をのんだ。


「な、なにやってるんですか、アクセルさん……! そんな年にもなって、やめてください!」

「いいでしょ、青春しましょうよ。ほら、かけっこよ! あの木がゴールなー!」


 てててて、と本当に駆け出していった金髪ドリル精霊を、3人の少年たちはぼーっと突っ立って見送っていた。

 てててて、と金髪ドリルをみょんみょん振りながら戻ってきた。金髪ドリル精霊は、ぷんぷん怒っている。


「もー、どうしてついて来ないのです? ゴーですのよ、ゴー!」

「すんません、俺たち、アクセルさんが眩しすぎてちょっと立ちくらみがしてまして……」


 とりあえずそういう事にしておいてこの場をしのごうとしているのが見え透いていたのだが、金髪ドリル精霊はまさか自分が避けられているとは思わないのでその事に気がつかない。こんな可愛い精霊さまいたら俺に欲しいんだが。

 そのとき、金髪ドリル精霊は見慣れぬ包み紙を見つけてしまった。


「あら? それはなんですの?」

「げっ……」


 レトロンがほんのわずかに背嚢を開いた瞬間、もれてしまったのだ、焼きたてのクッキーがはなつ、黄金色の光沢、バターの芳醇で芳ばしい香りが。


「まあまあ、なんですの? これは! まさか、クッキー!? やだ、ひさしぶり! えー! レンパスもあるんですの!?」

「そ、それ……村で作ったレンパスです」

「まぁ、貴方たちエルフが、自力でレンパスを……?」


 じわっと、きつい目に涙を浮かべる金髪ドリル精霊。

 レンパスを作るにはまず、麦を育てなければならない。いままで植物を育てるのも精霊にお願いしていたエルフたちが持ち得ていなかった、農耕の技術を使わなければならない。

 精霊の力に頼らず、自力で生み出したエルフ麦。

 じつに、1000年前に伝えた技術だ。ようやく自分の指導が実を結んだのだと、彼女は実感していた。

 がばっと、3人の少年エルフを抱き寄せる金髪ドリル精霊。


「とうとう、とうとう精霊離れして、自活してくれるようになったんですのね……! あなたたちっ!」

「あー、いやー、そうなんですよねー」

「うーん! 口のなかでホロホロ崩れて甘いですわ! おひとつ戴いてもよろしかったかしら!」

「もう食ってるし!?」

「そうだわ、そこのお家にちょうど私へのお茶のお供え物もありますのよ! お茶会にいたしましょう!」


 度し難い図々しさだったが、精霊がひとたび宴をはじめると、そこはもう祝宴になる。最初はクッキーとレンパスしかなくとも、人々は手に手に果物を、子牛を、チーズを持って集まり、楽団が楽器を弾き、宴の輪が徐々に広まっていく。

 勝手にパーティーを開催し、幸せそうな顔で口一杯にクッキーを頬張る金髪ドリル精霊。

 砂糖を使った甘い菓子など、ここ何年も食べていなかった。1000年前に異世界人たちが持ってきたカスタードケーキやプディングは、それはもう美味だったものである。


 しかし、なにか腑に落ちなかった。何かがおかしい。

 1000年前……異世界人……。


 指を犬みたいにべろべろ舐めながら、何かを思い起こさせるキーワードに、はっとした金髪ドリル精霊。

 そして両手に持っていたクッキーをにらみつけた。


「ねぇ、このクッキー……どなたが作ったものかご存知かしら?」

「そりゃ、まぁ、俺達の彼女っていうか、それっぽいのとか?」

「それっぽいのです」

「俺も、まあ、どっちかと言われたら、それっぽいのが……」

「聞いてませんわよ! シット! いったい誰が作り方を教えたのです!?」

「塔の下の魔法使いって言ってたぜ」


 チメイズマン。

 その名を聞いたとたん、金髪ドリル精霊の眼に炎が宿った。

 その手に持ったクッキーがばきっと割れ、油分がめらめらと燃え上がる。


「チメイズマン……やはり、あの男……異世界改革をしてしまうのは、どうやら勇者のさがのようですわね……!」


 ******


 一方、俺はフェリスタンに連れられて、村のはずれにまで招き入れられていた。

 じっさいに村人たちの手で錬金釜を作る前に、簡単な勉強会だ。

 村人の有志にも集まってもらって、古典魔法道具の作成に必要な基礎知識をレクチャーしていった。

 大きな木の幹に貼り付けたボール紙に油性マジックで文字を書いてゆく。

 チート能力者の集団を即座に集められる召喚師とはちがって、俺には現地人の協力者が必要だ。現地人に知りうる限りの知識を伝えるのは必要不可欠である。

 フェリスタンはいきなり見せられた複雑な化学式を前に頭をひねっていたが、俺が説明するとすぐに噛み砕いてくれた。すげー頭いいな、こいつ。


「つまり……糖のかたまりは自然に崩壊していくもので、水魔法はそれを早めるだけ、というわけだな」

「そ、色々な技術で早まる崩壊を厳選することができる。まず、水も崩壊するように同時に魔法をかけると、加水分解が早くなる。水って密閉環境だと崩壊しようにもしにくいから、とりあえず何か他の化合物になって標的じゃなくなる反応が進んでしまうんだ。ちなみに水魔法で物を燃やす時は酸素にかけると酸化反応が加速して燃え始めるぜ」

「なるほど、酒の作り方はだいたい解った」

「酒は簡単だ。途中でちょっと工夫すると砂糖ができる」

「さっきの説明でよく分からなかったのだが、異性化とはなんなのだ?」


 ロアも一生懸命メモを取っている。砂糖を作るつもりなのか。可愛いなぁ。


「酒を造る途中で葡萄糖(グルコース)ってあんじゃん? ここでアルコール発酵分解をとめておくと、ごく微量にグルコースの失敗作みたいな形のもの、果実糖(フルクトース)ってのができる。これが異性化で、何倍も甘くなるんだ」

「つまり、分解しすぎないように注意していればよいのだな」

「そういうことだな。ただ魔法を使わないと酒になってしまうのを止めておくのがけっこう難しいんだ。フルクトースとグルコースがほぼ同じ量になるまで精錬を繰り返さないといけないしな」


 俺が実践しているやり方は、アルコール発酵を起こさせず、かつ、この異性化のみを加速させていくやり方だ。

 じつは、これも水魔法の単純な掛け合わせでできるものらしい。


 まず、アルコール発酵をすると二酸化炭素が生まれてしまう。そこで、その二酸化炭素が崩壊するように事前に魔法をかけておくことで、二酸化炭素が生まれるような反応を起こしにくくする。結果としてアルコール発酵を阻止することができるのだ。

 それと同時にグルコースの崩壊を早めておけば、自然とフルクトースに化けて選択対象から逃れる反応が加速する、という具合である。


 問題は、この選択水魔法の組み方だった。

 魔力制御にかかわる天魔法を使わないといけないのだが、それを説明すると、天魔法の組み方にまで話がとんでしまう。

 古代から一気に中世だ。必要とする技術レベルも知識も格段に違う。


「いちおう、砂糖も作られるように魔法陣をすでに組み込んだ円盤を用意しておいたから、これを組み込んだ錬金釜の作り方からまずはやってみようか」

「教えてくれ、その魔法陣はどうやって作る?」


 フェリスタンの眼差しは真剣だった。俺のすべてを吸収して絞り尽してやろうという、貪欲な眼差しをしていた。

 俺はまたしてもにやりと笑った。教えがいのある男だ。


 そのとき、村人たちの間にティーセットを持った女性が現れた。

 淑女だ。息の止まるような超美人だった。村人たちからも感嘆が起こる。


「お茶を淹れました、おひとついかがです?」

「あー、そうだな。休憩を挟もうか」


 村の外れとはいえ、適齢期のエルフをこの目で見ることになるとは。

 エルフのお茶は苦みがかってはいるが、長寿に効果があるという。いやー、これは寿命も延びますわ。

 俺はレンパスとお茶を交互に口に運びながら、みんなにお茶を配っていく女性を見ていた。


「あの人は?」

「私のいとこの嫁だ」

「へー、お前の奥さんかと思った」

「私の妻はなかなか家から出てこようとしないのだ」

「えっ、奥さん、ひょっとして体が弱かったりするのか?」


 異性化糖は天然の栄養素が混じらない、いわば合成化学調味料みたいなものなので、病人に与えても大丈夫かちょっと不安があった。

 フェリスタンは、真っすぐな目をしていった。


「病弱ではないが、心が病に侵されている。結婚してからもずっと笑ってくれなかった。砂糖をあげると、ようやく笑ってくれたのだ」

「なるほど」


 そんな理由もあってか、砂糖づくりに一番熱心だったのはフェリスタンだった。


 勉強会が終わった後も、フェリスタンは俺をゴブリンの塔まで見送ってくれた。

 じつは見送りと言うのは口実で、フェリスタンはひとり、ゴブリンの塔で俺から魔法道具の作成手順に関する手ほどきを受けていた。


 俺は塔の一階を占拠すると、ダウンロードした錬金釜の設計図を紙にプリントアウトし、机の上に広げてみせた。


「まず、釜の作り方だ」


 フェリスタンは弓を片付けてこくこくうなずいた。なんか空気のようになかったことにされているがいちおうゴブリンも数匹でてきた。


「基本は普通の釜と同じでいい。素材に関してはなるべく丈夫な金属にしろ。水魔法は金属と相性がいい。崩壊を加速させる力だから、簡単なメッキ程度じゃあ、すぐにダメになるからな」

「ひとつ、聞いてもいいか」

「なんだ」

「釜とは?」


 俺は思わぬ肩透かしを食らってスタート地点から転んだ。

 釜とは? ときましたか。

 そうかそうか、エルフの村に釜があるとは限らないよな。


「釜とは……そうだな、金属でできた底側に丸みのある鍋だ。知らない?」

「ふむ……すまないが、普段はよく使わないものだ」

「そういや、お前たちって、生活のほとんどを材木で補っているよな……エルフは冶金技術も高いって聞いたけど、ミスリルの王冠とか剣とか。あれって、どうやってるの?」

「さあ、精霊がやってくれるので、よく分からない」


 フェリスタンは真顔で言いきった。もう何度もこのセリフ聞いた気がするが、今までで一番驚いた。

 金髪ドリル精霊、本当になんでもやってくれてるんだな。

 これはさすがに心労も絶えないだろう。


 俺もさすがに釜の作り方までレクチャーすることはできない。そこまでバッテリーは持たないだろう。なので、その道に詳しいドワーフのいるという坑道へと向かった。


 オリュンポス山に住まうドワーフは、1日の睡眠時間よりも鎚をふるっている時間の方が長いという驚くべき生態をもつ種族だった。

 彼らは金属の素材をみると取りあえず道具にしてみたくなる。道具にするとそれで金属の素材を集めてみたくなる、という永遠の循環サイクルの中に生きていた。

 金槌を使ってスコップを作り、スコップで土を集めてより強靭な金属を手に入れるための製錬炉を作る。そして製錬炉で集めた強靭な金属を使って、より強力な金槌を作る。

 常に頭部を保護する兜をかぶり、洞窟内をせわしなく動き回っている。まるで地底文明という巨大な機械の一部みたいな、そんな種族だ。

 背が異様に低く、子供ほどしかない。耳は微妙に尖がっているがエルフほどではない。そのくせ老成すると豊かな白髭を蓄えるようになる。


「魔法使いのチメイズマンという者だが、釜の作り方を教えてもらえないだろうか」


 俺はここでも魔法使いを名乗った。魔法使いの信頼はここでも厚いらしい。

 だが、エルフのフェリスタンが入ってくるなり、親方はぎろっと彼を睨みつけた。


「釜の作り方だぁ!? そんなもん、精霊さまにお願いすりゃいいんだろうがよ!」


 相変わらずぶっきらぼうな物言いである。ドワーフだものな。

 DIY精神の塊みたいなこの職人に、軟弱なエルフは水と油であろう。


 フェリスタンはその場に膝をついた。そしてドワーフの職人と同じ視線の高さになり、真っすぐな目で相手を見つめていた。


「頼む。妻のために砂糖づくりを覚えたいのだ」


 フェリスタンの眼は真剣そのものだった。

 絶対に砂糖づくりを自分のものにしてみせよう、という強い熱意が現れていた。

 俺も彼に倣って、その隣に膝をついた。きっと前を見ると、ドワーフの職人と同じ視線の高さになった。あれっ、案外この方が話しやすいかもしれない。


「俺からも、頼む。これは、エルフの村で作ったはじめての酒だ。この酒を造るためにも、エルフの職人が必要なんだ」


 俺は、レンパス酒をそっとドワーフの職人に差し出した。

 ほんと、大抵のものって麦からできるよな。

 ドワーフが酒に弱いというのは事前調査で知っていた。酒を渡せばどんな難交渉もイチコロだと。

 ドワーフの職人は、気難しそうな顔をおやっと緩め、革袋にたぷんたぷんと入った液体のにおいをかいでみた。

 麦の香ばしい香りのするお酒だ。地底住まいのドワーフには、麦を食する習慣がないはずだ。主に芋類や根菜を主食としている。

 おもむろに半分くらい飲み干してから、ぐびぐびぐびっと一気に飲み干し、「薄い、子供の飲み物だな」、としかめっ面をし、革袋の緒をきゅっと締めた。


「3日間だけ猶予をやる……その間にものにならなかったら、叩き出してやるからな」


 3日間。それ以上様子を見るかどうかは、このドワーフの気分次第ということだ。

 本来ならば、そんな事さえする義理さえない。

 ここが踏ん張りどころだ。

 俺とフェリスタンは、そろって頭を下げた。


「「ありがとうございます!」」

「おっ、おう」


 ドワーフの職人は、びくっと肩を震わせていた。

 頭を下げながら、フェリスタンは、俺の方に顔を向けて苦笑いをしていた。


「このドゲザというのも、なかなか効果があるみたいだな」

「魔法だよ、魔法」


 こうして、フェリスタンはドワーフの工房に弟子入りすることになった。

 フェリスタンの熱意は、ドワーフの職人にも伝わったようだ。

 約束の3日間があと4日間になり、やがてあと1週間になり、あと2週間くらいはいてもらおうか、いや、最低でも3ヵ月はいてもらわないと分からん、それにしてもこの麦酒(ビール)は薄すぎる、もっと持ってこい、という話になった。


 数日後、釜の作り方を教わっていたはずのフェリスタンは、なぜか蒸留酒の作り方を覚えて戻ってきた。

 馬の上でなんだからしくないくらいニコニコしているので、昼間っから酔っぱらっているのだな、という様子は見て取れた。


「チメイズマン、釜を手に入れた、これでもっと酒を造るぞ」

「砂糖はどうしたんだよ」

「砂糖は、それから作る」


 馬の背に括り付けていたのは、釜のみならず、灌漑設備に必要なスコップ、麦の収穫に必要な鎌、脱穀に必要な千歯扱き。

 それらをエルフの酒と交換しよう、という契約をドワーフと結んできたのだ。本当に頭いいなこいつ、嫉妬しそうだ。


「畑を作る予定だと言って、必要機材をもらってきた」

「なるほど、先行投資という奴だな」

「だから、これで酒を造る。余った麦は、砂糖だ」


 フェリスタンの眼は、笑っていた。酔ってはいたが、その目は真っすぐ自分の進むべき道筋をとらえていたのだ。

 ようやく、こいつの死んだら悔いが残るような顔を見ることができた気がする。こいつはなかなか死なないだろう。

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