第6話  休日/忍び寄る影


 日にちが変わって友人達との約束の日。

 ここ連続して晴れ、太陽の光が降り注ぐ中、零は自分が思っていた以上に楽しみにしていたのか、胸を躍らせながら足取りを軽くして待ち合わせの場所である学院の正門前へと向かう。そして、その場所に着いたと同時に固まった。


「やぁ!元気そうだね!」

「……なんでいるんですか」


 正門前には良太や香蓮と隣に焔がニコニコと笑いながら立っていたのだった。

 予想外の出来事に困惑する零だったがそんなのお構いなしにといったように質問に答える。

 


「なんでって、そりゃあ今日は休日だからに決まっているからだろう?」

「いやそういうことではなく……」

「町に行くんだろ?時間は有限だからね、ササッと行こうじゃないか!」

「はっ?なんで知って……」


 そこまで言って零はハッとし、二人を目を細めながら見る。

 するとその零の視線から逃げる様に二人して別々の方向を向いた。香蓮に至っては口笛を吹いている。

 どうやら二人は共犯らしい……。

 そう思って誤魔化しきれていない二人に視線を送り続ける零だったが、不意に背中を押され、その行為は中断される。


「さぁ、固まってないで歩け歩けぇ!モノレールに乗り遅れるよー」

「ちょっ、押さないでください!」


 零は焔に押されながら強制的に足を進めることになった。

 ポートアイランドはかなりの広さなので移動には多くの公共機関が存在している。学院近くでは街まで繋がるモノレールが動いていた。

 それを聞かされた零は「まぁ広いこと……」という驚きを通り越して呆れていた。


「そういや学院までは何で来たんだい?その感じじゃモノレールに乗ってきたわけじゃなさそうだけど」


 そんな零の反応を見てか焔は顔を覗き込むように近づけてきた。

 少し仰け反りながらもそれに答える。


「空港に着いたと思ったら、黒い服の人に車に乗せられて、正門に着いたと思ったらポイッと捨てられました」

「どういうことなんだその状況……」


 零の説明に軽く引いた様子の良太。

 それを見て零は小さなため息をつく。

 自分でも言ってて頭が痛くなるが、言葉をつづけた。


「本を読んでたらいきなり『日本の魔学院行け』って言われたと思ったら、碌に準備をさせられないまま飛行機に乗せられて日本まで飛ばされたんだもん。

 寮の設備が整ってたからよかったけど実質僕が持ってきたのは私服ぐらいだし、送られてきたのは食材だけだし……」

「壮絶だ……というかよくそれで寮に着けたね?学院もそれなりに大きいのに」

「あぁそれは正門には学院長が立っててね。

 そのまま寮まで案内してくれたんだよ」


 香蓮の疑問に答える零だったが、「学院長」と言ったところで焔が少し顔を顰め、小さく「またあの人か……」と呟いた。

 零はそれに気付いたが、触らぬ神に祟りなしと思い直して聞こえていないフリをした。


「服はそれ以外になにかあるの?」

「えっ?まぁ上と下の両方はあと三種類ぐらいかな?」


 唐突な香蓮の質問に驚くもそれに答える。

 ちなみに零の今着ている服装は白い長袖のシャツに黒いベスト、そしてジーンズを履いていた。

 零の答えを聞いた香蓮と先ほどまで顔を顰めていた焔が目を輝かせて互いを見合わせる。

 あ、これはやばい。

 零がそう思った時には既に遅く、左右には女性二人に挟まれていた。


「ほぉほぉ服が無いとね?」

「別に無いわけじゃ……」

「いやダメだよぉ?神崎君は結構顔いいんだからもっとオシャレしなきゃあ……」


 悪い笑みを浮かべながらにじり寄る二人。

 自分だけではどうにもできないと判断した零は後ろにいる良太に助けを求めようと振り返る。

 零と良太の視線が交錯した瞬間。


「ファイトッ!!」


 元気なエールを送られ、見放された。



 §  §  §



「疲れた……」


 街に着くと同時に少女二名に腕を引っ張られ、そこそこ大きな洋服屋に連れられ、着せ替え人形の如く、様々な服を着せられた。

 二人はキャッキャッと楽しんでいたが、着せられる身としては店内にいた他の人の視線が精神をゴリゴリと削っていたのが辛く、商品を買うときに店員が明らかに笑いをこらえていたのが一番胸にくるものがあった。

 服は香蓮と焔が別々にコーディネートしたものを二セット買った……というよりは買わされた。

 一方、良太はと言うと、着せ替えファッションショーをしている零を撮れという命令をされていた為、彼女たちの携帯端末で写真を撮っていた。

 割と楽しそうだったので一言文句を言おうと決めていた零だが今はそんな気分になれず、いつか絶対仕返しをしてやろうと胸に誓う。


「宅配サービスがあってよかったな。

 きっとこれから物凄く歩くだろうし」

「まぁ、そうだね」


 店から出るとベンチに座っていた良太が笑いながら声をかける。

 良太が言った宅配サービスとは多くの店などで行われている物流システムだ。

 一定以上の金額の物を金額すると、無料で配送してくれるサービスで。ほとんどの量販店が行っていて、多くの人がそれを利用している。

 故に、ここ最近では「荷物持ち」というものが死語になりつつある。

 それでもやはり、自分で荷物を持ち帰るといったことをする人はいるのだが。


「二人は?」

「あそこでクレープを買ってる」


 零は焔と香蓮がいない気づき、問いかけると良太が指を指す。

 その指の先には移動販売のクレープ屋があり、そこには長蛇の列ができてた。

 列の中に焔と香蓮が笑いながら並んでいる。

 きっとどのクレープにするか決めているのだろう。


「なんでも稀にしか出てこない人気の店だとか」

「へー……僕達の分は?」

「無し」

「悲しい」


 わざとらしくガクンと肩を落としながら良太の隣に座り、携帯端末で案内地図を開く。


「ホントここは広いね、迷ったら大変だ」

「まぁ、商業区と行政区って別れてるしな。ついでに言うと住宅区もまた別の場所にある」

「……いやほんと広いね」


 良太の言う通り、この海上都市の市街地には様々な量販店や食事処が集まっている商業区。治療院や多くの機関がある行政区。そして本土や寮以外で生活する人が住む住宅区といったように分かれていた。

 とても広く、自動車を持っていない人達はバスやモノレールなどの交通機関を利用するのがほとんどだ。その為かその二つは他のところよりも料金は安く設定されている。


「あれ?」


 零が携帯端末に移っている地図をスクロールしていると、商業区や住宅区の一部に黒く塗りつぶされた場所があった。

 そこの部分には『立ち入り禁止』という赤い文字が表示されているだけでどのような場所かは記載されていない。

 

「ねぇ津村」

「んお?どうした?」

「この場所なんだけど、なんでこうなってるの?」

「あぁそこは……」

「そこはまぁ、いわばスラムって言ったところかな」


 良太とは別の方向から答えが返ってくる。

 零がその方向を見るとそこにはクレープを片手に満足そうな顔をしている焔と香蓮が立っていた。


「このポートアイランド、他のところよりも魔法を扱うお店とかそういうのをサポートする商品とかが多いんだよ。

 そんでもって、一部の使われなくなった場所とかにいろんな事情で学院にいられなくなった人やどこかから逃げてきた魔法師とかが集まってできたみたい。

 噂じゃ法律で禁止されてるようなものが売ってたりするらしいよ」


 香蓮がクレープにパクつきながら説明する。

 クレープを食べる度、美味しそうにもぐもぐと咀嚼して飲み込む。

 同じ様にその隣で焔も美味しそうにクレープを食べていた。

 二人の容姿がとてもいいので周りから見ればとても愛らしい光景だろう。

 零がその様子をじっと見ていると、それに気付いた焔が零にクレープを差し出す。


「いる?」

「いりません」


 即答し、クレープを押し返した。

 クレープを押し返されて少し不満そうな顔をする焔だがクレープを食べるとすぐに笑顔に戻る。

 零は小さくため息をつき、話を戻すことにする。


「警察とかはどうしているんです?」

「完全放置が今の現状だね。

 あそこには警察がどれだけ動いてもキリがないほどに色々と詰まりすぎている。

 だから表のこっちに被害が無い限りは裏のあっちでどんなことをしようが干渉しないのさ」


 焔の言ったことに零は「へー」と流すように答える。

 どこの世界にも光があると同じ様に、同じほどの闇がある。

 この街のスラムもその一つなのだろう。

 それは仕方のないことなのかもしれないと、そう思った。

 

「迷い込んでひどい目にあった人がいるらしいし、滅多なこと以外近づかないほうがいいかもね~」


 いつの間にかクレープを食べ終えていた香蓮がクレープの包み紙をくしゃくしゃと丸めて近くのごみ箱に投擲する。

 丸まった紙は綺麗な放物線を描いてごみ箱に入り、香蓮はサムズアップをする。


「さて、次どこにする?」

「んあー……おまかせで」

「よっしゃ、氷咲先輩、彼はランジェリーショップが行きたいとことです!」

「よし行こう!」

「行かないよ!?」

「俺もそこは勘弁してほしいなぁ……」


 おまかせは危険ということがわかった零は携帯端末とにらめっこを始め、必死に次に行く場所を探し始めた。

 案内するとは何だったのか……。

 良太はそう思ったが、前にいる少女二人がとても楽しそうに笑っているので何も言わず、一緒に零を見守るすることにした。

 それから零は自分が思いつく限りの場所を巡ったが、途中から焔と香蓮に手綱を握られ、多くの場所へと連れられた。連れられた場所は自分に無関係と言うわけではないという所だった為、損はしたという訳ではない。

 自分の持っている資金が大幅に削れたということを除けば何事もなく無事に町を見回ることができた。

 町を案内し終えるころには日が沈み始め、夕方と呼べる時刻になり始めており、零達四人は学院への帰路に着いていた。


「今日は楽しかったですね~」

「そうだね、実に充実した一日だったよ」


 香蓮と焔が満足そうな笑みを浮かべながら歩くさなか、その後方ではまるでパニックホラーに出てくるゾンビのような表情をした男二名がよたよたと歩いていた。


「ゲームセンターでのエアホッケーは楽しかったね」

「私たちの圧勝でしたけどね」

「二人が強すぎなんだよ!」

「そうだそうだ!負けたからって昼飯奢りって!」

「私たちだって負けたら奢るって言ったじゃない」

「食う量を考えろ!」

「財布が軽い……」


 零と良太は軽くなった財布を見て落胆する。

 前を歩いている焔と香蓮はその様子を見てクスクスと笑った。

 そのような様子で駅までのんびりと歩いていると突然数人の男性に囲まれる。

 思わず四人は足を止めた。

 男達はモヒカンや長髪など様々な髪型に柄の悪い格好をしており、所謂チンピラと呼べるような類の人達だろう。


「お嬢さん美人だねぇ、ちょっと俺たちといいことしない?」

「お断りだ、どいてもらえるかな?」


 ヘラヘラとした笑みを浮かべている金髪の男の誘いを切り捨てる焔。

 その表情は先程零達と会話をしていた時と変わらずニコニコとした表情を浮かべている。


「お、強気だね。好みだよ」

「そうか?俺は隣の娘の方がいいがな」

「ヒヒッ、俺はどっちでも……」


 焔の言葉で男性たちは騒ぎ始める。

 それに零達三人は眉を顰めた。

 ひとしきり騒ぎ終えると金髪の男が笑いながらズボンをまさぐる。


「まぁ嬢ちゃん達に拒否権はねぇんだけどな」


 そしてそう言いながらズボンのポケットから小さなナイフを取り出し、それを焔の首元へ近づけた。

 先端が少し焔に刺さる。

 刺さってはいないが数ミリでも動いた瞬間、その首から血があふれ出ることだろう。


「嬢ちゃん達魔法師がこんなところで魔法なんか使って攻撃したら、サツに捕まっちまうよなぁ」

「刃物を突き付けてる相手に使えば正当防衛扱いだと思うのだけれど?」

「残念ながら周りから見たら俺達は今仲良く話してるようにしか見えてないだろうよ」


 男の言葉を聞いて零はハッとして周りを見渡す。

 確かに子供四人に複数の男が囲んでいるのに誰もこちらを見ていない。

 こんな明らかに犯罪染みている事が起きているのにだ。


「幻惑魔法か……」

「魔法師なんでね。

 まぁ俺達はくずれで嬢ちゃん達は生徒っていう違いがあるけどな。

 集団で発動すればこんなこと簡単よ」


 男はそう言って腕輪型の法機を見せびらかす。


「でも町中で魔法なんか使ったら監視カメラについてる探知機に引っかかるじゃないのかい?」

「それが何とかなるから魔法を発動させてんだ」

「そりゃそうだ」


 金髪の男の言葉に肩を竦める焔。

 そして諦めたような顔になって体の力を抜いた。


「しゃーない、じゃあついていくしかないね」

「お、物分かりのいいやつだべ」

「ひっひっひ、それじゃあちゃんとついて来いよ?」


 零と良太の後ろにいる男二人がいつの間にか取り出した拳銃を自分たちに突き付けるのを背中に感じ、零は周りにいる友人達に目配せをする。

 香蓮は憐れんだような表情で、良太も「あちゃー」と言う声を出しながら香蓮と似た様な表情をしていた。それを見た零も二人の表情を見て察する。

 きっと焔以外の三人は同じような心境だろう。


「じゃあ案内よろしくね!」


 焔は先程以上の笑顔になり、男達にそう言った。



 §  §  §



「ひぃ!?許してくれ!!」


 町から少し離れた人気ひとけの少ない空間、四方を建物に囲まれており、監視カメラなどの防犯機能が無い場所。

 そんなところで金髪の男は情けない声を上げながら地面を這いずる。

 男の周りには黒い煙を上げて倒れている者や氷漬けにされている者、うずくまって呻いている者。血こそ流れてはいないが、それでも無事とは言い難い怪我を負って倒れていた。

 金髪の男の前には右手に氷を、左手に炎を持った焔が立っている。


「んっ?誘ったのはそっちだろう?」

「悪かった!俺達が悪かった!助けてくれ、この通りだ!」


 男は喚きながら持っていたナイフを投げ捨てる。

 その様子を見た焔は少し残念そうな顔をしながら両手の魔法の発動を止める。


「はぁ……魔法師って言うから期待したのに……」

「いやぁ……これは酷い」


 思わず良太が言葉を漏らす。

 この場所に入った時、歩きながら周りに監視カメラが無いことを確認した焔は、瞬時にポケットに入れていた腕輪型の法機を装着。そして何も躊躇無く拳銃を持った男に火球を飛ばし、爆発。

 突然のことに男たちは戸惑いながらもそれぞれが魔法や武器で応戦しようとするが、それは無駄だと言わんばかりに焔の魔法に圧倒され、現在に至る。

 抵抗すらできずに一人一人と倒れていく光景はさぞ怖いことだろう。

 もし自分があの男の立場なら……。

 零は想像するが全身に鳥肌が立ち、すぐに頭を振って考えるのを止めた。


「さて、じゃあ楽しい質問タイムとしましょうか」

「し、質問タイム?」


 男がへたり込んでいると香蓮がその前にしゃがみ込む。


「誰に私達の事を聞いたのかな~って」

「それってどういうこと?」

「いやぁ、最初に『嬢ちゃん達魔法師が』とか『嬢ちゃん達は生徒』って言ってたじゃん?それってつまり私達の事を知ってたということだよね」

「あぁ……確かに」

「まぁ、そういうことで……素直に喋ってくれると嬉しいなぁ?」

「しゃ、喋る!喋るからもう何もしないでくれ!」


 そう言いながら香蓮は金髪の男を見る。

 最初の威勢はどこへ行ってしまったのか、完全に怯えきっている男は涙目になりながら言った。

 それを見た香蓮は「よしよし」と頷く。

 ……女の子って怖い。

 焔と香蓮を見た零はそう思った。隣を見ると良太は軽く引いている。


「じゃあ誰に教えてもらったの?」

「大柄の男だ……黒いローブに深くフードを被ってたから顔はわかんなかったが、ガタイががっちりとして身長が異様にでかかったから覚えてる……」

「声は?」

「わ、わからねぇ……喋ってた時は加工された声で喋ってたからな。

 いつもみたいにスラムの方であいつらと集まってたら突然そいつが現れて、そっちのおっかない嬢ちゃんとあっちの坊主を襲えって金とこの写真を渡されたんだ……防犯装置の方はこっちで何とかするから魔法も存分に使ってくれても構わないとも言ってた。

 半信半疑だったが貰った金の額が多くてな……成功させれば倍の額を払うって言われたもんだから断らなかったんだ」


 男がそう言うと胸ポケットから二枚の写真を取り出し、手を震わせながらそれを香蓮に差し出す。

 香蓮がそれを受けとり、焔と一緒にそれを覗き込む。そこに写っていたのは校内で撮られたであろう焔と零の姿だった。


「あら盗撮。犯罪ダメ絶対」

「ですねー、ちなみにそんなことを言われたってことは報告とかする手段があるのかな?」

「そんなもんはねぇよ……。

 ただ結末を見届けるって言われて……あっ!あいつだ!!」


 男が目を見開いて空を、正確には建物屋上に指を指す。

 そこには身長が二メートルほどのある黒いローブの人物がいた。

 その人物は姿を見られると同時にその場からいなくなる。


身体強化フィジカルブースト

「ちょっと待ったっ!!」


 淡い光が焔の体を包み込み身体の能力を上げる。

 だが、零が焔の腕を掴み、その光は手の中に吸い込んで髪が伸びる。焔が発動した魔法を全て吸いこみ終えると髪が白く染まった。


「ちょっと何するんだい?」

「それはこっちのセリフですよ。

 何追っかけようとしてるんですか……」

「そりゃ元凶が近くにいたから叩きのめそうとだね」

「正体のわからない相手を追っかけて何かあったらどうするんですか!」


 焔の腕を強く握りながら大きな声で叫ぶ零。

 焔は名残惜しそうに謎の人物がいた所を見るが、「はぁ……」と息をつく。


「わかった、追っかけない。

 だから手を離してくれ」

「追いかけないのは当たり前です。

 こっちまで巻き込まれるのは嫌ですからね」

「それはもう手遅れな気がするけど……」


 零は焔の腕から手を離す。

 それと同時に遠くからサイレンの音が聞こえ始める。


「あっ、これは通報されたな」

「えっ……」


 良太が苦笑いをしながら言った言葉に驚き、零は青ざめる。


「まぁ十中八九、焔先輩の魔法の音があっちまで届いてたんだろ」

「えへっ!」

「えへっ!じゃないですよ!」

「これは逃げるしかないねー!

 っとその前にシャドウ・バインド」


 香蓮が金髪の男に手のひらを向ける。

 すると男の影が浮かび上がり、男の周りをグルグルと回りだす。

 突然の出来事に男は驚いて暴れるが、影は消えず、男を拘束した。


「なっなんだこれ!?」

「まぁ銃刀法違反ってことで」


 ウィンクをしながら謎のポーズをとる香蓮。

 それを見た男の何かがキレたのか顔を真っ赤にした。


「ふざけるな!これを解け!!」

「やーだよー!あっかんべー!」

「子供か!!」


 ツッコミを入れるとか割とこの人、余裕あるんじゃないか?

 そう思った零だったが、近づいてくるサイレンの音を聞いてきた道を戻る。

 後ろで男と香蓮が互いに何か言いあっているが、正直な所、今は自分の身の方が大事なのでそれに構うことなくその場から逃げる様にその場を去った。

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