最軽小説《ライトノベル》の絶対書式《テンプレート》
サクサク 作者
Template 000:エピローグの絶対書式
僕は未来予知の能力に目覚めた。
新作アニメを見た途端、その物語の設定や展開、ヒロインの姿さえも不思議と脳裏に浮かぶのである。
もちろん事前に原作を読んでいたわけでも、プロモーションビデオや公式ホームページを見ていたわけでもない。新鮮な気持ちで楽しむ為、僕は前情報は極力避ける派なのだ。
それにも関わらず、僕の目の前で繰り広げられる今期の注目アニメとやらは、景色が何年も変わらない田舎の実家のような安定感と既視感に満ち溢れていた。
冷房の効いた部屋にも関わらず、僕の背中に嫌な汗が伝う。
一話目だからとはいえ素晴らしいクオリティの作画と、人気声優を惜しげもなく起用した耳に心地良い演技は全く頭に入って来ない。
僕の思考を埋めていたのは、同じ姿形をした大量の女子高生だった。
一度は聞いたことがあるではないだろうか。最近の若い子はみんな同じに見える、なんて話を。
その感覚は僕にも覚えがある。クラスの女子も、テレビを賑わすアイドルグループの子も、正直みんな区別が付かないのだ。
しかし、それは自分にとって些細な問題だった。なにせ冴えない僕にはアイドルは当然としても女子高生でさえ関わりなんてないのだから。
でも、新作アニメとなれば話は別だ。
数少ない趣味であるアニメ鑑賞も、この≪感覚≫に支配されるのはまずい。
それ《新作アニメ》も、これ《若者》も、世界の全てが縛られているのだ。
僕は部屋の隅にある本棚を睨み付けた。
教科書や参考書を並べるには低すぎる棚の中には、僕の敵が詰まっている。
敵の名前を、今、明かそう。
この枚数に関係なく薄っぺらで歯が浮くように軽い小説のせいで、僕の支えであるアニメの多くが穢された。
僕の願いはただ一つだけ。
この退屈な現実世界に張り付いている僕の意識を、まだ見ぬ新しい世界へ連れ出して欲しい。
それだけなのに。それすらも叶えられない世界になってしまうのか。
やりきれなくなった僕が本棚に詰まった悪の根源からモニターに視線を戻すと、どこかで見たようなED《エンディング》パートがちょうど終わったところだった。
さぁ、
ここからは、僕の物語を始めよう。
僕の名前は
【次回】 Template 001:異世界の絶対書式 に続く
最軽小説《ライトノベル》の絶対書式《テンプレート》 サクサク 作者 @sakusaku
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