第7話 迷い


 私がこの物語を書く前――まあつい2週間ほど前なだけだが、ランキングが導入されて順位が出て、私は全力で戦っていたと思う。やり方に問題があるかどうかは別次元だ。とにかく、書いて、読んでレビューして、ツイッターで宣伝した。近況ノートの更新も毎日したし、恐らくやれることは全部やった。


 それでも、思うように上がらない順位。頂ける評価に一喜一憂し、何度も何度もアクセス数を確認した。つい、数分前に見たばかりじゃないか……そんなことはわかってる。それでも、何度も確認した。

 やがて、日にちが経過するにつれて自分の立ち位置が見えてきた。上位は少なくとも自分よりも必死に貪欲にもがいている奴らばかり。

「チャンネラー? ごめん、前だけ見てるからわかんねぇわ」

 そんな風に言っているような気がした。周りを気にせず前だけ見て、一心不乱に走っていく上位ランカーたち。もちろん、いい手段もあれば卑怯な手段もあっただろう。それでも、作家と言う野望に向かって突き進むさまは、自分には決して真似できぬものだった。

「宣伝なんかにうつつを抜かして人気取ってるだけだろう? 作家なら自分の作品の質をあげろよ」

 彼らでは無い人たちは言う。

「宣伝しないで読んで貰えるなんて、あなたはどこぞの大作家様でしょうか? 自分たちの作品を読んで貰うためには営業活動しかないんだ」

 彼らは言う。


 いったい私は、どうしたらいいのだろうか。そんな風に悩んでいた。私はランキング上位ランカーたちのように自分たちの作品を信じてがむしゃらに走ることが出来なかった。かと言って、自分の実力を信じて自分の力だけを信じてただ執筆だけに没頭し、ひたすらチャンスを待つこともできない。


 それから、中途半端な日々が続いた。自分にやれることはこれなのだと言い聞かせた。上位はズルばっかりやってると心の中でののしり、下位は敗者なのだと見もしなかった。

 勝者でもなく、敗者でもない。その時、私はいったい何がしたかったのだろうか。コンテストでいい立ち位置さえ、確保すれば私は大賞が舞い込んでくるとでも思っていたのだろうか。

 いや、違う、私は納得のいく負け方がしたかったのだ。自分が納得するやり方で戦えば負けても悔いはない。最低限、選考対象に入りさえすれば、自分の作品を読んでさえすれば自分の実力が不足していただけの事。もし、上位の作品が大賞に選ばれれば所詮はその程度の奴らなんだと嘲ってやればいい。少なくとも、自分のプライドは守れる。正々堂々と戦ったのだと胸を張れる。


 でも、本当はわかってた。正々堂々戦っていたのは昔の私なのだ。ただ自分の作品の向上だけに心血を注いで、いい作品さえ作れば絶対に作家になれる。そう信じながら気高く戦っていたかつての自分なのだ。

 いつから私は小細工を駆使するようになったのだろう。投稿時間や、日にちを気にするようになったのだろう。こうすれば、読者にウケるだとか、この設定は人気が出るだとか。果たしてこれは、成長なのだろうか。敗北なのだろうか。

 今でもたまに迷うことがある。昔よりは面白くなっていると思う。昔より上手になっていると思う。でも、果たしてこれでいいのだろうか。

 その時はそこまで考えていたか定かでは無かったが、何かを私は変えようとしていた。この中途半端な立ち位置から、どうしても脱却しようとしていた。それは、勇気なんて上等なもんじゃない。逃走と言う潔い選択でもない。ただ、さまよっていた。ここでは無いどこかへ行きたかった。

 

 結局、私はこの物語を書くことを選んだ。

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