第4話 アッコさんのように
やはり、ランキング実装前こそが文字通り戦争状態であったと言っていいだろう。無差別フォローや☆爆破、レビュー爆撃に、リツイート爆撃に複製アカウント、何もかもが無差別に行われ過ぎて訳の分からない状態になっていた。
それほど、ランキングというものが読者にとって絶対的な効力を示す秘薬として扱われていたと言っていい。
かくいう私もそれに憑りつかれたいた……いや、今なお絶賛憑りつかれ中だと言っていい。それほどの絶対的な効力を示す。それさえ上位ならば、自分の作品は絶対に面白いはずだ。そう信じて疑わなかった。
ランキング実装状態前……絶対に逃したくないこの状態を望んで参戦したのに、自分はどの立ち位置にいるのか、自分はどれくらいのランキングにいるのか、それしか考えていなかった。そんな、自己矛盾を振り払いつつ私は某チャンネルを何度も覗いた。何度も何度も。
これは、私以外にも多いだろう。特に初期にランキング上位にいた人はそんな人ばかりだったんじゃないかと思う。
その行為を私は後悔はしていない。それは、私の執筆のモチベーションにも繋がったし、ルール違反はしていない。そもそも、ルールなどどこにも存在してはいなかったのだから。
その間、某チャンネルに曝された1つの指標。今なお使用されているその指標はランキング実装前の争いをますます加速させた。
ここでは、暫定ランキングと呼ぼう。暫定ランキングに私たちは少しでも上位に上がるようにもがいた。一心不乱にもがいた。中には、挫折する人もいた。道を踏み外した者もいた。それでも、各々の方法で精一杯駆け上がり、いつか日の目を見ることを信じて。
そんな中、混乱は更なる混乱を生む。相互フォロー者、☆爆破を行った者が曝された。当時、その時にはフォローの制限が無く10000を超えていたフォローの人、無差別に☆を贈っていた人がいた。もちろん、その人たちが少しも悪くないとは言わない。自分の作品を見て欲しいと思うあまりに取った行動としては節操がない。そう感じる人も多いだろう。
複製アカウントも同様だ。ハッキリ言って複製アカウントは私たちをなめている。バレ無いと思ってやっているのか、バレてもいいと思ってやっているのかよくわからないが、許しがたい行為であることは間違いない。運営サイドもそのような認識をぜひとも持って貰いたいと思っている。
でも、私は笑えない。笑うことが出来ない。その作者たちは果たして最初からそう言う戦いをしてきた人たちだったのか。恐らく、最初は正々堂々と戦ってきた人たちじゃなかったのか。年月は残酷だ。作者の自尊心を曲げさせるような行為をいとも簡単に行わせてしまうほどの魔力を持っている。
残りの年月を数えた時に、自分が夢を追う時間はもう幾許も残されていないことに気づいた時、なりふり構わずにそのような行為に走ってしまう事を私は笑うことが出来ない。就職するまでなのか、30歳までなのか、結婚するまでなのか、子供を産むまでなのか、各々が設けた夢の消費期限が切れかけているとき、未だ自分が何の戦果も残せていないことに気づかされた時、果たして私はそのような行動を取らないと自信を持って言えるのだろうか。
自分でも決めているラインはある。ここまではよくて、ここまではダメだ。それを決めている自分のライン。それは、少しずつだけど確実に広がっている。年々それは広がっていき、いつかは私もこれらの行為に走る日が来るのだろうか。
私は凄く、それが怖い。がん細胞のように年月に侵されて、いつかはそんな行為に走ってしまいそうな自分が怖い。この小説を書いている今こそが、そのボーダーラインが広がってきた何よりの証拠だ。
だが、年月を恐れていては駄目だと言うここともわかってる。自分の中の変化を怖がっていては何もできない。これは、いい変化なのだ。そう言い聞かせて前に進むしかない。
ただ、心に刻んでおきたいことがある。時間は有限だという事だ。もう、そんなにも残されていない。
「死ぬまで夢は持ち続ければいいじゃないか」
そういう人もいるが、私はそうじゃない。それは、叶わないでもいい夢の場合だ。私にとって、夢は呪いだ。叶わなければ何の意味も無い。残されている道がもうないからだ。そう思う私もすでに彼らのように毒されている1人かもしれない。
随分怖い話になってしまった。こんな風に書く気は無かったが、筆が走ったんだ。笑って許してほしい、アッコさんのように。
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