第4話 PV単機突撃万歳アタック

 2016年3月24日PM20時58分、帰宅。家に帰って早速サイトをチェック。☆の数は朝貰ってから大きな動きは無い。『医魔女』のPVと☆の伸びも少ない。当然だ。『医魔女』に費やすはずだった宣伝を新作の宣伝に費やしているのだから。そして、今のところ、劇的な変化は無い。このまま何の変化も起きずに10万字にも満たないまま終了。十分にありうる話だ。

 そもそも私だけなのだろうか。会社の人々も、友達も、みんな当然のように仕事を行い、ご飯を食べて、寝る。そんな日々の生活に、飽きることも、嫌気がさすことも無いのだろうか。そんな毎日に物足りなさを感じてしまうのは私だけで、私だけがおかしいというのだろうか。

 

 いや、おかしくてもいい。私はもう飽きたんだ。通勤の変わらない景色も、飲み会で吐く仕事の愚痴も、帰って座ってパソコンを覗き、がっかりする自分にも。

 熱が必要だった。自分が書き進められるだけの熱狂が。こんな話、普段のテンションだったら書いてられない。もっと自分を狂気に曝す必要があった。


 もっと私に勇気が欲しい。あの人のように。PV単機突撃をかましたあのP氏のように。Pさんはあくまで便宜上、そう呼んでいるだけだ。深い意味は無い。


 勇気と言うよりは、狂気に近いのかもしれない。当然作者も否定しているし、チャンネラーの仕業の可能性も十分にありうる。だが、それはどうでもいい。あくまで想像上で、本人が行ったと仮定する。その方が面白いから。こんな事を書いている自分はもうすでに狂気に溺れているのだろうか。

 ただ、これだけは言っておきたい。


この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは 一切関係ありません 。


                 *


 ヨムヨム戦争が開始されまもなく、私は路頭に迷っていた。新着と言う銃弾は、恐ろしい程読者には当たらなかった。いや、当たっていたのかもしれないが、この時はそう感じなかった。なぜなら、作者>読者の比率が圧倒的で誰もが手さぐり状態で道を進んでいたからだ。当然PVなど延びるはずも無く、恐怖だけが徐々に襲ってきた。このまま、読まれることなく闇に沈む……もっとも恐れていた影の気配を真横に感じ、怯えていた。

 光が必要だった。あたりを照らすまぶしい光が。紫外線満載な光だが、無いよりはいい。

 そして、私は某サイトに手を出した。

 チャンネラー達の情報網は侮れない。彼らは目立った作品を片っ端から斬っていく。いい意味でも、悪い意味でも。

 確か、フォロー爆破だったと思う。最初に斬られたのは。暗闇を歩いている戦士(作者)は片っ端からフォローしたと知らずに、その光に身を寄せ作品を読み、☆とレビューを差し出した。そんな戦士も多かったのではなかろうか。そして、☆爆破はフォロー爆破の陰に隠れ暗躍していた。なぜなら、レビューなしの☆の提供は他者に表示されない。いち早く戦争のルールを理解し、片っ端から☆を差出し、未だ暗闇で歩いていた戦士たちに光を与える。それが、偽りの光だったと知らずに。そして、戦士たちは本物の誠意の光を彼らに差し出した。

 しかし、この行為を責めているわけでは決してない。ランキング実装前だったのだ。そりゃあ、やるよ。ランキングに載れば、桁違いに☆もPVも増える。少しでも上に、少しでも上に。そのためなら、多少の道は踏み外すだろう。だって、禁止されていないんだから。ましてや、ここは新世界『ヨムヨム』。異世界『ナルナル』で苦汁を味わった者も多い。山頂のてっぺんの景色はどんなだろうか、そう夢を馳せた者も多かっただろう。

 違う景色が見たい、そんな気持ちは痛いほどわかる。


 正直、これはヨムヨム運営の失策であったと思う。事前にルールを設定するべきだった。しかし、誤解しないでほしい。私はヨムヨムサイトに感謝しているのだから。あなたたちの大胆な試みに感謝しているのだから。

 結局、最初から完璧なサイトなど無い。そういう事なのだろう。


 そんな中、なけなしの勇気をもって某サイトに自分の作品を曝す者が現れた。自分の作品を曝せば、PVが増える。PVが増えれば☆が貰える。☆が貰えれば、面白い作品だと思われてPVがまた増える。そう言ったスパイラルを狙った者だろう。そして、作者含めコンテスト応募者全ての共通点。

 私の作品が一番、面白い。だから、読まれさえすれば、頂にあがれる。恐らくこの私の想像は大きく違ってはいないだろう。

 結局、私は曝さなかった。そんなちっぽけな勇気すら持ち合わせなかった。


 全くの余談だが、1度だけ某サイトにメッセージを投じたことがある。

「私が町長です!」

 この一言だけを2回。当然虚しく響き渡った。すいません、くだらない話をしました。


 ここで、にわかにチャンネラー達が騒ぎ始める。しきりに魔法と言う言葉が連呼され始めるのだ。サイトのページをスクロールし問題の作品のURLに飛んだ。


「えっと……14話……1万PV!?」

怒ったというより笑った。


 どんだけ頭おかしいんだよこの作者。そう思った。まさにこれがタイトルで紹介しているPV単機突撃万歳アタック。まったくの暗闇の中、敵陣に単機で突撃し死を恐れることなく攻め込んだのだ。狂気の沙汰と呼ぶにふさわしい。

 結果、彼は……いや、P氏はその後のランキング上位に上り詰め光の世界でも闇の世界でも知られる者になった。まるで、魔法みたい。そう、誰もがそう思ったはずだ。この作者の狂気はこの1万PVだけではない。現在の文字数がもうすぐ40万字を突破する勢いだ。10万字すら息切れする作者にとって、40万字余りの息子を惜しげなく突撃させる度胸。ヨムヨムに目をつけられれば再起不能になるかもしれないこの賭けに見事P氏は打ち勝った。

 もちろん、作者がそれを行っている証拠など見つけられないし探せない。それに『自分のファンである読者チャンネラーがやった』と言えばそれまでだ。ただ、仮に自分でやったというのなら、どれだけクリックボタンを連打したのだろうと驚きを禁じ得ない。まさしく、魔法。

 そして、タイトルも非常に秀逸だった。チャンネラー達はそのタイトルのセンスに笑った。私も笑った。このP氏の規格外の勇気。私にも少し分けてほしい。


 長くなったが、最後に一つ。

 











 魔法って……素敵やん。








 



 再び余談だが、60分前にインターネット回線がショートし全文消えた……畜生。だが、私は負けません。


         

 

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