第2話 2週間で小説書きあげた天才もいることだし

 と、意気込んで書いては見たもののこれで2000文字弱か。残り98000字……2週間。ちょっと厳しい数字では無かろうか。1作目『医魔女』も土日で3万字ほど書いたのだが、それもいろいろつぎはぎしてるしなー。まあ、細かい設定はこだわらずに行けるという利点はある。設定と言うより、じじ……ゴホンゴホン。現代だから書きやすいし、物語の流れはできてるから。


 まあ、なによりこの世界には2週間で小説を書きあげる天才小説家もいることだし、自分も血反吐の1つでも吐けば何とかなるだろうか。


               *


 そもそも、このヨムヨムと言うサイトは開設からコンテストを行うという異例の態勢で行われた。大手のこの大胆な試み、嫌いじゃない……あっ、おべっかじゃないです。

 みんなが同一なスタート地点からのスタート。そう思った人も多いのではないだろうか。かくいう私もそのうちの一人で、どうしてもみんなより先んじたかった。そして、どうやって投稿しようか随分と悩んだ。


 そして、私は某サイトに手を出しました。


「やっぱり、読者としては10万字超えた作品から手を出すよな」


「ある程度、まとまった文字数が無い作品は全部スルー」


 チャンネラーからそんな話がまことしやかにささやかれ、私はその決断に半分のった。とりあえず、まずはお試しで『医魔女』を投入。1話だけ。公開は無しで下書きのまま。2作目は大本命『異世界蹂躙』、こちらはどう転んでも立て直せるように2万字越え。3作目の『アイドル勇者魔王』は余裕の3万字越え。そして、この作品が唯一10万字越えの作品だった。

 サイト開設が0時ではなさそうだという噂が流れたが、機械で自動的に開かれるのは無いかと言う期待もあって、ずっと起きてた――朝5時まで。


 ほぼ徹夜しながらも仕方なく仕事へ向かう。本当は休んでやろうと思ったが、自動車部品メーカーの生産計画は月末がほぼ1番忙しいと言っていい。歯がゆい思いを噛み殺しながら出社する職場戦士たちも多かったのではなかろうか。


 フラフラになりながらも、朝の業務を終え昼休憩。ここのタイミングだ……ここだと、かなり気合を入れてスマートフォンの電源をつけた。

 まさかのサイト開設されていない状態。ふざけんなよ、初期ブースと掛けんだよわたしゃ! 同じスタートラインなんだからスタートダッシュした方が有利なんだよ。そう、携帯を睨みつけたことを今でもはっきり覚えている。

 それから、頻尿を装いトイレに何回も行ったが一向に開設されず抜けられない時間帯になって夕方の休憩になった。まだ、仕事死ぬほど残っているのに。

 恨めし気に携帯を開けると、すでに始まってた。なんせ、休憩は15分しかないのだ。慣れない操作で、我が息子たちをヨムヨムサイトへ無事放流し終えて少し息をついた。もう、任せるしかないかなと思い、とりあえず1秒でも早く家路についた。

 ドキドキと恐怖が入りまじりながらも恐る恐る『異世界蹂躙』を見ると、☆0。はぁ、とため息をつきながら『アイドル勇者魔王』を見ると、☆0.

 まあ、仕方ないかな……まだ始まったばかりだし……んんっ? あっ、ここがPVなのか。そうして確認すると、『アイドル勇者魔王』のPV……0。

 嫌な予感がした……限りなく嫌な予感が。すぐさま、そして恐る恐る『異世界蹂躙』を覗いた。PV……0。

 瞬間、悪寒が全身を駆け巡った。

 いかん、これ新着乗せ続けないと……読まれん。その時、私は自分の戦略の失敗、チャンネラーの謀略に見事にはめられてしまったことに気づいた。


 そして、ここから私の宣伝廚が始まった。

 

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