今から小説大賞を目指す熱血ストーリー【ファンタジー特別篇】
花音小坂(旧ペンネーム はな)
第1話 あの……エッセイやってませんけど
あとは覚悟だけの問題だった。
恐らく、現代ドラマ部門の応募者はいい顔をしないだろう。怒りで☆を取られるかもしれない。こんなふざけたタイトルの話、チャンネラーの絶技「剣山」にさらされ、一瞬にして我が息子のような作品たちが玩具化してしまうかもしれない。
「それでも……お前、それでも懸けてみたいのか?」
もう一人の自分がつぶやく。
答えは決まっていた。
「懸けてみたい。今は自分のやれることをしてみたい。人事も天命も私の事、好きじゃないから」
「笑われても?」
「笑ってくれていい。いや、笑って欲しい。このまま、思ったことやらないときっと後悔する」
「二度と作家になれないかもしれないよ? チャンネラーに曝され続けるかもしれないよ? ヨムヨムにダメだしされるかもしれないよ?」
「……いい、私は、ここで作家になる」
そう言うと、もう一人の声は止んだ。やると決まって、胸の鼓動がこれ以上無い程高く波打つ。それは徐々に高まって行く。
ああ、これだ。この鼓動音だ。恐怖と興奮を感じるこの鼓動こそが私を突き動かしていたものだと言っていい。
思ったことを想ったまま、書く。私は、それがやりたくて作家を志したんだ。
そして、私はこの戦争に勝利する。
*
本日。朝。人事を尽くして天命を待つ、その時はそんな気分だった。
いつものようにツイッターで小説の宣伝をして、通勤。仕事場の駐車場でちょうど、他の作家さんの奮闘記を読みながら思う。
あー、この作家さんやっぱり面白いなー。エッセイだけど文章上手すぎ。
この作家さんは最近赤マル急上昇。ヨムヨムサイトの生命線だと言われる☆がガンガンつき始めた。応援すると同時に一抹の悔しさも滲みはじめる。
自分も、もっと投稿作品を目立たせる方法は無いだろうか。だが恐らく、同じような事をしても、勝てない。所詮は2番煎じだし、ハッキリ言ってこの人の方が圧倒的に文章力は高い。
そう思いながら、自分の投稿作品のラインナップを見つめた。
1作品目『医魔女』は9位ぐらいから21位ぐらいまでを行ったり来たり。よくぞここまでやってくれたと感心する一方で、これでは駄目なのではないかと不安にも思う。いや、そう思ったところでどうしようもない。自分はこの20日間、この作品にすべてを費やしたのだから。7年前に書いた作品ですでに某大賞で1次落ちし、評価シートは5段階評価で1.25という恥辱を味わった作品だ。それが、なぜか評価され、かつてないほどの速度で執筆を行い、何とか10万字に到達。改稿も終え、もはや待機状態。
それから、7年間の時を経て書いた2作品目『異世界蹂躙』は異世界サイト『ナルナル』にてそこそこの好評を博しており、正直自信はあった。異世界というテンプレ設定が嫌いだとほざいて断固異世界モノは書かなかったのだが、月日を経てそのプライドも随分安くなったと思う。今はその折れたプライドと共に絶賛売出し中だ。当初PV数は1位だったのだが、徐々に失速していく始末。私の7年間を返して欲しい気分だった。
3作品目は、『アイドル勇者魔王』。これも言わずもがな、読者の嗜好に合わせた作品で、果てはハーレムてんこ盛りで行こうと思っていた。作者のプライドとは、果たしてなんなのか、考えさせられる作品だ。勇者と魔王のW主人公で行こうと思っていたが、PV数が思ったより伸びず、問答無用で削除して、『医魔女』の餌となった。
4作品目……あっ、忘れてた。タイトルは『君、嫁に来たもうこと無かれ』。現代ものだが完結できず評判も悪かったので投じなかった作品だ。『君、死にたもうことなかれ』というタイトルをもじった自分の中では秀逸のタイトルだが、なぜかそれが残っていた。
そういえば、予備で一つ残してたんだ。コンテスト応募中になってるし。今更、投稿なんてできる作品無いしな、と半ばあきらめながら各部門のランキングを見つめた。そして、『その他』の部門が気になってランキングを見た。赤マル急上昇の作家をチェックするために。
そして何気なくエッセイ部門の方を見ると、ひたすら文字数の少ない作品が並んでいた――これって、コンテスト応募作品どれくらいあるのかな、単純な興味で某サイトにアクセスし、調べた。
えっ……なに、この異様な☆の少なさ。応募作品3,4つに☆がついてるだけ。他は全て☆0個。えっ、こんなにこの部門少ないの? いいの、それで。
――4人……4人倒せば、ヨムヨム大賞が私のものになるのか。
そう考えた時、悪魔の考えがよぎった。エッセイ部門で、最近の状況を書けないだろうか。今、ヨムヨム読者の興味はこのサイト自身にある。今をトキメクキャッチ―な話題性はある。文字数さえ書ければ、もしかすると……
仕事中はそれで頭がいっぱいだった。もう、帰りたくてしょうがなかった。某自動車メーカー部品の事務に務めており、生産計画の仕事についているが生産ラインのことなどもはやどうでもよかった。
やがて、終了のチャイムが鳴るとともに「今日眼医者行くんで―」と上司におべっか使いながら定時ダッシュを掛け、すぐさま家に帰り自分のパソコンの机に座った。
ええっと……エッセイ部門……エッセイ部門……これが大賞にノミネートされてたら勝機はある。確か、その他部門と一緒だったけなーと思いながら急いで昔の情報をチェックする……あ、あった。
――なんでエッセイ部門大賞無いんだよクソが!
携帯バーン! キーボード、ドーン!
こんな勘違いの始まりだが、せっかくだから現代ドラマ部門と言う猛者揃いの下へ身を投じます。
みなさん、よろしくお願いします!
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