第5話守護傭兵はお仕事中2

 今日も仕事〜なんだってこんなに事務仕事があるんですか〜


 いつもの傭兵ギルド管理官長の部屋に設置された机で通信機に向かって流石に自分で準備した、ショッピングモール、ソートンで買った一粒で1000キロメートルという人参飴の袋を開けて口に放り込んで画面に向かう。


 ヴィアラティア高等鎌士は無事にグーレラーシャ入りをはたしたようです。

 ウルティアガ外務担当官が連れ戻しに行ったって聞いたけど……ウルティアガ外務担当官ってどんな人なのかな? 

 確か資料では、幼年学校の時はまったく武術の才能がなかったのに、すごく努力して愛するものの背中を護るために高等剣士になった人だよね。


 憧れるなぁ……私もギルド管理官長のためなら頑張れ……るけど事務仕事は本業じゃないんだけどねぇ……

 

 ため息をついて処理済みの印をつけた。


 もちろんヴィアラティア高等鎌士とはなぜか事務仕事で面識はある。


 ドゥラ=キシグ香国での海賊討伐業務頑張るぞ〜とギルドの中庭で叫んでるのを傭兵ギルド管理官長にちび叔母さん、声がでかすぎるぞと怒られてた。


 そんなことを思いながら一枚、一キロ飛翔と書かれた人参クッキーバーの包みをあけてかじった。


 ヒフィゼ高等鎌士は明日辺りに傭兵ギルドに顔を出すかもしれない、高位貴族の令嬢だけど気さくな人だよね……その代わりにジールラーカ高等槌士を送り出したのを思い出した。 


 モフモフ〜もこもこ〜なかわいこちゃんとラウティウスのやつイチャイチャイチャイチャしてるそうだぜ、羨ましい〜飛ぶもこもこ屋ってどんなモフモフな女の子が接待してくれる……と言ったところで傭兵ギルド管理官長に冷たい目でさっさと任地へおもむけと言われて、スゴスゴ出ていったけど……大丈夫かな?


 そんなことを思いながら明日の仕事を割り振っていく、王都警務官は……確かファウルシュテヒ王都警務中央地区小隊長を頼れでしたか?


 依頼をするとけっこう冷静な対応してくれたよレファリウス•ゲルアシュアゼさんってどんな人か少しだけ興味あります。


 実際あって対応するんはイルサン事務官とマミニウスギルド管理官長だから会うことないですけどね。


 こことここの連携は必須とか的確に書いてくれててわかりやすいんですよね。


 王宮警護官奥宮主任さんの方も連携取ってたけど……リンレシナ•ヒフィゼさん……ヒフィゼ? 傭兵ギルド管理官長と親戚?


 流石に傭兵ギルド管理官長の兄弟姉妹までそんなに把握してないです〜。


 そんなことを思いながら、あそこに傭兵ギルド管理官長の隠しお菓子があって好きに食べて良いって言われてるけど……一人って寂しいですと思いながら人参クッキーバーをかじった。


 

 次の夜会は即位式前恒例の即位する殿下が主催する華やかなものでプレ即位式と言われるくらい重要なものなので、特に打ち合わせが必要らしいです。


 前回の即位前の夜会がいつもより長い期間が空いてるから、主催するのも大変らしい、メリリノア国王陛下より、傭兵学校に入学した日本の孫と遊びたいからメルディウス息子その一早く即位結婚するのです。と間違いなく言ったと傭兵ギルド管理官長が疲れた顔でこの間ため息混じりに話してたです。


 たしか、その孫って明正和学園と傭兵学校の後輩の五十嵐イガラシ 卯月ウヅキちゃんだったよね。


 お父さんはどっかの元王子様で毎朝お母さんを抱き上げて寝室から出てくるって聞いた時にグーレラーシャ人みたいって思ってよく聞いたら本当にそうだったというパターンでした。


 メルディウス王子殿下の弟君のケインティウス王子殿下がそのお父さんだったはずです……えーと異世界に婿入りにて王位継承権破棄って書いてある。


 王族関連の資料をなんとなくながめる。

 卯月ちゃんには確か少し歳が離れた弟さんが2人いたはずです。


 確か王宮警護官を代々まとめる高位貴族ジュバオム家の嫡男に見初められて追いかけられて、代々房中術と医術担当のダファヤ家の若き当主に泣きついたら、対価に何くれる? 俺のお姫様と迫られた〜 とこの間、傭兵ギルドの実習の時にぼやいてた。


 対価……対価ね、ギルド管理官長に対価を頼むなら……この間みたいなのは緊張するから……いい加減、傭兵業務お仕事に出たい〜とゴネて……はい、即位式が終わるまで駄目ですね。


 本当にソロで仕事しちゃおうかなぁ。

 明正和次元の守護戦士の方も一応登録してるから……

 でもギルド管理官長とお仕事行きたいし……


 どうせギルド管理官長には綺麗な恋人とかいるんだしお仕事くらい独り占めしたいですよ〜。


 傭兵学校の実習以来の担当してくれてる大事な相棒バディだもんね。


 私の背中を守ってほしいってバディの申し込みされたとき思わずギルドのホールでキョロキョロして私しかいないってわかってプ、プロポーズみたい〜としばしボーッとギルド管理官長の精悍な顔に見とれたよ。


 俺では不満か? 色気をまとった危険な声で正気に戻って光栄です〜ありがとうございます〜と叫んでみせもんになった一年前が懐かしいっていうか……あのあととても嬉しそうに笑ったギルド管理官長が印象的で……


 オスペナ知識国に護衛業務も行ったし、ヌーツ帝国に要人護衛も一緒だった……その後辺りから即位だぁーなんだと……


 グーレラーシャ傭兵国の未来のためには必要なことだけど……メルディウス王太子殿下〜なんでもっと早くジェーリアーヌ皇女殿下を捕まえなかったのさ。


 ハチミツ肉食獣男子グーレラーシャ男のくせにー

 まあ、あの人の場合インテリっぽいけどね。


 メリリノア国王陛下の伴侶ってそういや誰だっけ……

 通信機の画面をかえる。


 ああ、一般人な飴屋さん……ギーデル飴店の店主の弟さんかぁ……


 え、つまり超玉の輿? 

 まあ、グーレラーシャ人の場合決めたら一直線だけど……


 流石に飴屋さんは……王宮の売店に密かにおろしてて人気商品なんだ、こんどギルド管理官長に頼んで買ってきてもらおう。


 それにギーデル飴店は王宮御用達の有名店だもんね、エリートだよね~


 ハア……私、なにしてるんだろう。


 マミニウス傭兵ギルド管理官長ははるか格上の高位貴族の人で私は異世界の庶民とグーレラーシャの庶民の子でさ。


 まごうことない究極の庶民がグーレラーシャの高位貴族の御曹司を想っても未来は無いよね。


 通信機の画面の前の机に頭をつけた。

 窓の向こうに魔法灯に照らされた中庭とギルド名物のうごめく芝生が見えた。


 いつからか知らないけど芝生はうんょとかすかに動くようになったらしい。


 ああ、疲れた……もう、帰っちゃおうかな。

 扉が開いてうわ、やっぱりいたと聞き慣れた声がした。


 「編珠ちゃん大丈夫かい? 」

 今日も夜間警備らしいオルティアスさんが顔を覗き込んだ。

 大丈夫じゃないですとうめくように答えるとあわてて後ろから起こされて抱えられた。


 夜中じゃ医務室は流石に開いてないよな、傭兵病院に……


 「オルティアスさん、別に調子はなんともないんです、ただ疲れたなぁと思っただけで……」

 「編珠ちゃん……」

 私の腕を持ったオルティアスさんの茶色の目に自分がうつってるなぁと思いながら見てると勢い良く扉が開いた。


 「編珠、すまん」

 「ギルド管理官長、かわいそうですよ」

 オルティアスさんがギルド管理官長に眉を上げた。

 「ああ、分かってる、調子が悪いなら、傭兵病院に抱いていくぞ」

 オルティアスさんの腕を私の腕からわざわざ外して心配そうに私の額に大きい手を当てた。

 「疲れただけです」

 わーん顔が熱いよー。


 ギルド管理官長に抱き上げられたら幸せだけど病人搬送じゃ流石に情けないよね。


 「そうか、無理させてすまん、それからオルティアスまた、私の帰還に気づいてないとはどういうことだ」

 たるんでるぞとギルド管理官長がオルティアスさんをにらんだ。

 「申し訳ありません」

 少しだけ不満そうに頭を下げてオルティアスさんは私の肩を叩いて警戒システムをチェックしてきますといいながら部屋から出ていった。


 「いつも、すまない」

 「叔母上様はご帰還されました」

 傭兵の位置確認の画面を立ち上げた。


 専業傭兵には常にどこにいるかわかるタグが渡されてて携帯の義務があるのですぐにどこにいるかわかる……逆にわからないときは行方不明になったか破壊されたか……儚くなった時に仲間が出来る限り回収する大切なものだ。


 立ち上げた画面には王宮にいる表示が出ていた。


 そういえば実家は王宮のヒフィゼ部屋群お屋敷?でしたもんね、もうあったかな?

 

 案の定、ギルド管理官長は王宮で会ったとため息ついた。


 このくされ甥っ子ーと騒いで、黒リス文官殿にはいはい、お家に帰ってクッションに蹴りでも入れるのですと引っ張られて行った……甥っ子さんの似顔絵描いてあげますからってあの二人仲が良いなと続けた。


 そういえば幼馴染だって聞いたことがある、マミニウスギルド管理官長はかなり年上だから違うよね?


 「どんな似顔絵なんでしょう? 」

 「ろくな似顔絵ではないだろうな」

 ああ、警備計画も受けてくれたのかといいながらギルド管理官長は首元をゆるめながら通信機の画面を見た。


 色っぽいなぁ……たぶん、他の人のものなんだろうけど見るくらい良いよね。


 「編珠、すまん、夕食だが……」

 「ああ、人参クッキー食べますか? 」

 机の上の袋からクッキーバーを取り出して差し出した。


 そのままギルド管理官長が食べた。

 あ、あーんみたい。


 「天藍テンラン製菓か……明正和次元の菓子はあなどれんな」

 お菓子の袋をつかんで後ろを確かめながらもう一口私の手から食べるグーレラーシャの男の色気になんかクラクラです。


 なるほど、グーレラーシャ人の味覚に合わせて甘めなのだなとつぶやいて最後のかけらが口に入るとき私の指に舌がさわってあわてて指を引っ込めた。


 「も、もっと食べますか? 」

 「すまん、なかなかこういう菓子を食べる機会がなくてな、夕食だがこれでいいか? 」

 花柄の巾着袋を恥ずかしそうに空間拡張保存袋差し入れ小袋から出した。


 ありがとうございますと受け取って中を見ると時空保存パックにおにぎり様二個となんかトマトとかハムとか具の入った卵焼き様と小さいサイズのハンバーグ様とポテトサラダ様がサラダ菜様とミニトマト様をお供に入っておられた。


 普通のお弁当だぁ……しかも日本風です、美味しそう〜。


 「母が編珠ちゃんにこれを持っていけとわざわざちびおばさんにたくして……迷惑なら」

 「ありがとうございます〜わーいこういうの飢えてたんです〜おばあちゃんがよく食べさせてくれました」

 貴重な日本風のお弁当を拝んだ。


 真姫奈おばさんありがとう〜


 嬉しくなっておにぎりを頬張ると中から鮭フレークが出てきた。


 うん、美味しい〜。

 卵焼きはスペイン風オムレツっぽい味がした。


 夢中で食べてるとお茶がテーブルに置かれた。


 「うまいか? 」

 「最高です〜」

 見上げると色気たっぷりのギルド管理官長が……わーんがっついちゃったです~。


 「うちに来ればいつでも食べられるぞ」

 妙に近くに顔が来て気がついたら頬をなめられてた。

 米がついてたぞと色っぽく囁かれて背筋がゾクゾクした。


 え、えーとどうすればいいのさ。


 「そこまでご迷惑はかけられません」

 ご飯だけ押しかけるなんてと私はあわてて頬に手をやった。

 「……そういう意味じゃないんだが」

 なるほど、明正和人はかなり……とギルド管理官長が口の中でブツブツ言ってる。


 今日もビジネスディナーで食べてきたはずだけど……妙に私を見てるな。


 「おにぎり食べます? 」

 「いや、良い、編珠……これからもずっと私のそばにいてくれ」

 おにぎりを差し出す私の手を両手で包んでギルド管理官長は手の指に口付けた。


 別にサービスしなくても事務仕事くらいいくらでもは嫌だけど手伝うのに。


 「これからもずっと、相棒バディですよ」

 ギルド管理官長の奥様ができて嫌がんない限り、こっちからは解消なんてしないもん。

 「ああ、とりあえずそれで手を打つか」

 よろしく頼むと妙に肉食獣チックな笑みを浮かべて今度は頬にキスをした。


 お腹空いてるんじゃないの?


 食べ終わったら送っていこうとギルド管理官長が微笑んで通信機の操作をしだした。


 本当に忙しいんですね。


 そんなことを思いながら眉間のシワがふかくなる美丈夫を観察しながらハンバーグを堪能した。


 中に入ったプチトマトがソースみたいで美味しい。


 明日もきっと事務仕事だけど、いつか、きっとギルド管理官長と現場に出るんだとうにょっとゆれる芝生を見ながら思った。


 それから、ギルド管理官長〜ちょっとドキドキ誤解しそうな言動やめてください〜


 動悸息切れ誤解しちゃうじゃないですか〜


 オルティアスさんが警戒システムどうやってかいくぐったんですか〜と乱入してくるまであと数分。


 別にコード入れて警戒システム解除して入れば大丈夫ですよと教えたら、オルティアスさんに警戒システムの研修が山ほど来たそうです。


 うん、なんかごめんなさい。

 でも覚えておいて損はないです。


 明日も事務仕事頑張ろっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

傭兵国でお仕事です! 阿野根の作者 @anonenosakusha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ