Act.0058:正義の味方をやるんだよ
【あずまや工房】には、すでに警務隊が数人張りこんでいた。
表にも裏にも人が配置され、とても入れそうにない。
そう
見事に屋内に侵入し、目的の
「これで戦力が手に入った。想定内ね」
こともなしとばかりにフォーの幼い顔が、薄い笑いを見せる。
まるでその表情は、獲物をとって勝ち誇る猫のようだ。
確かに自慢できるだろう。
なにしろ、戻ってくるまでに2分もかかっていないのだ。
さすがに
その後、2人は少し離れた場所にあった宿に向かった。
建物の裏側に回り、1階にある部屋に窓から入る。
小さな部屋には、ベッドが1つ。
その横には、クエが立っていた。
「持ってこられたん?」
「ああ。フォーのおかげで、驚くほど問題なく。……悪かったね、巻きこんで」
「なにを言うてはるの。こん世界で2人きりの仲間、見捨とったりしまへんって。それに、まだ決着もつけてへんですえ」
クエは、かるくウィンクしてみせる。
その微笑に、
この世界の味方は今、この2人しかいないのだ。
心苦しいが、頼らせてもらうしかない。
「よし。じゃあ、作戦を考えよう」
事態は、意外に深刻だった。
そもそもの始まりは、つい少し前に山一つ向こうにある【
現れた
見たこともない姿の新型であり、非常に高性能だった。
なにしろ、その町の警務隊に配備されていた4機の
後に続いた、フリーのパイロットたちの
その情報は、すぐさま四阿の街にも届いた。
ただし、その情報には、ある余計な情報が付加されていた。
それは「解放軍の新型をデザインしたのは、【東城
さらに、「その
その結果、いちず、双葉、ミカと、その
「できすぎ。想定外ね」
「そやねぇ。【
「マスターと、その
フォーとクエが、頷いた。
わかっていたことだが、
つまり、【
それにより、警務隊に目的物を鹵獲させる。
そこまではいい。
だが、それだけでは【
「警務隊の中に、【
考えられるのは、内通者が目的物を確保し、【
普通に考えれば、一般人の世代たちから直接、奪った方がいい。
だが、その
下手に自分たちで力尽くにやるよりも、警務隊に集めさせた方が簡単だと考えたのだろう。
「それに、ジェネはんの居場所をなくすつもりや」
「ボクを犯罪者にして、自主的に【
これにより、【
「その暴れている強い
「マスターのね」
「だよねー。やっぱりボクの
「喜んでる場合じゃないね」
「そや、そや! ジェネはん、不謹慎ですえ!」
女性2人に責められるが、
「でも、実際に強いんだろう。まあ、オリジナルには及ばないだろうけどね!」
「それが疑問」
フォーが腕を組む。
「本当にそこまで強いのか? いや、マスターの
「……ちゃうんですえ、フォーはん」
クエがかるく黒髪を横にふった。
「うちとジェネはんのデザインする
「実戦用? それは試合用ではないという意味か?」
クエがうなずく。
「ドラークもあん時、重火器、使わんようしてました。つこうたら、敵の
「……想定外ね。そこまで火力があるのか」
フォーが、少しひきつった苦笑を見せる。
実際、
だから、ドラークには他にもっと強力な装備が存在している。
だが、実戦と違い狭い空間で相手を殺さないようにしなければならない
「それに、和真さんといちずさんの戦いは、
「なるほどね。……で、どーするね、マスター」
フォーに尋ねられた
だが、やはりアイデアはほかにない。
もうやれることは、どう考えてもひとつしかなかった。
「そーだね。これは口で無実を説明しても、もうどうにもならないだろう。なら、方法はひとつだ」
「……?」
2人の注目を浴びながら、
「もちろん……正義の味方をやるんだよ」
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