第23話 姫君のサイクロップス退治③
【放浪の姫君】レィナスは全力で走っていた。
そのほんのわずか後方に、咆哮を上げて突進する一つ目の巨人、サイクロップスがいた。
当初はサイクロップスを退治に来たレィナス姫であったが、サイクロップスのあまりの巨大さに恐怖し、今では追う者と追われる者の立場は逆転していた。
全力疾走で逃げ続けていたレィナス姫は、だんだんと息が上がってきた。
振り返ると、サイクロップスはまだまだ息も切らさずに走っている。俊敏ではないが、体力はあるのだろう。
そもそも人間と巨人では、足の長さに違いがありすぎる。
逃げ切れる可能性は低かった。
【朱の騎士】ベルレルレンはこの場にはいないから、彼に頼ることは出来ない。
捕まったら殺される。
もはや逃げ切れそうもないが、それでも希望を信じて逃げるべきか。
戦っても勝てそうもないが、それでも希望を信じて戦うべきか。
考えた末に、レィナス姫は足を止めた。
最後に頼るものが逃げ足か戦闘力かといわれたら、迷うまでもなく答えは出る。
振り返るとサイクロップスの顔が見えた。
一つしかない瞳は、破壊という野蛮な喜びに満ちている。
「何を笑っている」
巨人の捕食と勝利を確信した顔が、生来、傲慢の癖をもっているレィナス姫の癇に障った。
「わたしが逃げるとでも思っていたのか。愚か者め」
全速力で逃げていたために噴き出た汗を拭いながら、レィナス姫は堂々としていた。恥じる気持ちは一切ない。
「わたしは、お前を殺しにきたのだぞ! 立場をわきまえろ!」
サイクロップスが近寄るよりも早く、レィナス姫は巨人に向けて駆け出した。
手には自分に最も馴染む武器、鎖つきの鉄球が握られていた。
《うるさい黙れ! 今からお前に、蛮勇とは如何なるものかを教えてやる。死にながら見るがいい!》
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