第20話 魔王とゴブリンの軍
世界を滅ぼそうとする【火炎山の魔王】ガランザンの部下に、ゴブリンの軍勢が加わった。
魔王の腹心であるエルフ、【林冠】パヌトゥが不服げに魔王に聞いた。
「魔王様、ゴブリンどもは役に立ちますか?」
「この世界に役に立たないモノなどない」
ガランザンはパヌトゥに答えた。
パヌトゥはガランザンの言葉に真理を感じながらも、例え話をもって反論した。
「昔、人間の王がゴブリンを国の支配下に置いたそうです。王はゴブリンが軍隊として機能することを期待していました。ゴブリンたちが人間の軍に入り、軍勢は数倍にも膨れ上がりました。しかしゴブリンはあらゆる場面で怠け、サボり、嘘をつきます。人間の王は様々な知恵を絞ったそうですが、それでもゴブリンたちは王を騙し続け、結局、軍はかえって弱くなったそうです」
「愚かな話だな」
ガランザンは無表情のまま断じた。
パヌトゥは魔王であるガランザンが、どのようにゴブリンを軍に仕上げるのかに興味を持った。
※
しばらくして【火炎山の魔王】ガランザンは人間の村を襲うために、ゴブリンに招集をかけた。
だがゴブリンたちは食料の不足や、急病など、様々に理由につけて召集に応じなかった。
命令に応じて集まったゴブリンのは、全体の半分にも満たなかった。
「やはり、こうなりますか」
結末が予想出来ていた【林冠】パヌトゥは、嘆息をしながら言った。
だがガランザンは驚きも失望もせず、集まったゴブリンに向かって淡々と言った。
「ゴブリンたちよ。人間の村を襲うのは後にする。まずは食料の不足を解決する」
横で聞いていたパヌトゥは、耳を疑った。
「魔王様。それは食料を奪うという意味ですか? それとも農業でも始めるのですか?」
「いや」
ガランザンは即座に否定した。
ガランザンの回答は、腹心のパヌトゥも集まったゴブリンたちも、その全の予想を裏切るものだった。
「食料が足りないゴブリンは、食料不足の罪により処刑する」
ガランザンの言葉に、ゴブリンたちは絶句した。
だが更にガランザンは続ける。
「急病人の対処も行う。病になったゴブリンは病気の罪により処刑する」
誰も異論も反論も挟むことも出来ないまま、ガランザンは行動を開始した。
ガランザンはゴブリンの集落に行き、何らかの理由で召集を断ったゴブリンを切り殺して回った。
ゴブリンたちは震え上がり、慌てて魔王の召集に応じて軍は整った。
《もう限界だと? いいや違うね。お前はまだまだ戦える。その証拠を見せてやろう。ん、この鞭か? なに気にするな。お前の限界を打ち破るための道具だ》
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