第17話 あるエルフの蛮勇
あるところに弓術を極めたエルフがいた。名前はポーメッツという。
彼はケヤキの木に住んでいたので、【ケヤキの大弓】ポーメッツと呼ばれた。
ポーメッツは森のエルフたちが集まるなかで弓を引き、飛んでいる鳥を同時に三羽射抜く弓技を披露した。
エルフたちは驚嘆し、長老たちの名の下に、彼がエルフ族でもっとも弓術に優れた者であると承認した。
しかしポーメッツは満足しなかった。
ある日のこと。
ポーメッツは森の傍に住み着いたゴブリンの一団に戦いを挑んだ。
ひ弱なエルフが一人で来たとゴブリンたちは笑ったが、ポーメッツの大弓はゴブリン一団を皆殺しにした。
また別の日のこと。
ポーメッツは川を泳いでいたマーメイドに戦いを挑んだ。
射殺されてはかなわないとマーメイドは川底に潜って逃げようとしたが、ポーメッツは川の水面の影にめがけて矢を放った。
放たれた矢は過たずマーメイドの背に命中し、マーメイドを川底に磔にした。
またさらに別の日のこと。
ポーメッツは森の近くで歩いていた人間の騎士に戦いを挑んだ。
戦いを挑まれた騎士は、弓を防ぐために盾を構えた。重厚な鎧も着ていた。
しかしポーメッツはかまわず矢を放った。
矢は騎士の盾を貫き、鎧をも突き破り、心臓を射抜いて騎士を一撃で絶命させた。
もはや世界中のエルフが、【ケヤキの大弓】ポーメッツをエルフ族の最高の戦士であると認めていた。
他の種族たちもポーメッツの蛮勇のおかげでエルフに一目置き、森を恐れるようになった。
しかしポーメッツは満足しなかった。
彼はエルフ族の最強の戦士ではなく、世界で最強の戦士になりたかったのだ。
ポーメッツはついに最強の代名詞であるドラゴンに戦いを挑むことにした。
その日、ドラゴンは悠然と森の空を飛んでいた。
「ゆくぞ!」
ポーメッツが渾身の力をこめて天頂に放った矢は、ドラゴンの腹に突き刺さった。
突然の攻撃に、泣き声のような咆哮を上げるドラゴン。
ポーメッツはドラゴンを一撃で仕留められなかったことを悟り、森に姿を隠した。
敵の姿が見えないが、烈火の如く怒るドラゴンは気にも留めなかった。
ドラゴンは大きく息を吸い込むと、森一面に向けて灼熱の息を放った。
炎は大森林の一部を焼き、【ケヤキの大弓】ポーメッツも、無関係な多くのエルフも、森の生き物も焼け死んだ。
こうしてエルフ最強の戦士は、燃えカスと化して息を引き取ったのである。
《蛮勇が、炎に照らされ灼かれて燃え上がりそして燃え尽きた》
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