第14話 信仰の民を得る4(ゴブリン)
この世界にも神がいた。
神は自らを信仰する民を捜していたが、エルフ族にも、トロール族にも、人間族にも、信仰を断られてしまった。
神はしかたなく、ゴブリン族に目を付けた。
卑しく強欲な彼らを神は愛せそうもなかったが、何しろ数は多い。そして他に選択肢もなかった。
湿地に住むゴブリンたちの上空に、神は姿を現した。
突然、現れたドラゴンのごとき巨大な神を名乗る存在に、ゴブリンは色めき立った。
「わたしは神であり、この世界の創造主である。私を信仰すれば幸福をやろう。」
ゴブリンの王が神と応対した。
「信仰とは何ですか?」
「わたしの言葉はすべて正しく、わたしの言葉に従い生きることだ」
「なるほど。わかりました。あなたに従います。代わりにわたしたちをすぐに幸福にしてください」
ゴブリンの王はあっさりと了承した。
そして食料や黄金や奴隷が得られると思い、下品な笑いを浮かべた。
「わたしを信仰するか。聡明な決断である。では言葉を伝える」
神は教えを事細かに伝えた。愛についてと生物の起源と生活の心構えである。
その全てにゴブリンの王は、欠伸をしながら頷いた。
全てを伝え終わるに至り、神はようやく気が付いた。
ゴブリンの王には、神の教えを守る気が全くない。
「ゴブリンの王よ。本当にわたしを信仰するのか?」
「あ、はい。もちろんです」
ゴブリンの王は欠伸をかみ殺し、慌ててそう言った。
しかし神には、ゴブリンの王が嘘をついていることが、悲しいほどにわかってしまった。
神は心から信仰を欲していた。
そしてゴブリンの王は、信仰をすると確かに成約した。
だがその成約を、神は受けるわけにはいかなかった。
「ゴブリンの王の言葉は殊勝である」
「ありがとうございます」
ゴブリンの王はとりあえず頭を下げようとしたが、神はそれを遮った。
「だが言葉に伴わぬものが多すぎる。心とは別に動く口を持つ民よ。いずれ神罰を与えん」
神はゴブリンの元を去った。
「なんだあれは?」
言うだけ言って去っていった神の背に、ゴブリンたちは唾を吐きつけた。
《お前が誤っていることは、俺の怠け心が教えてくれる》
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