第13話 信仰の民を得る3(人間)

 この世界にも神がいた。


 神は自らを信仰する民を探していた。

 エルフ族とトロール族に断られた神は、人間族を信仰の民にしようとした。


 平原に領土を持ち、絶え間ない食料生産と武装を繰り返す人間族を、神は努力家と見なして愛せそうな気持ちになっていた。


 神は大平原にその姿を現した。


 突然現れたドラゴンのように巨大で威圧的な存在に、人間たちは驚いた。


「わたしはこの世界の神であり創造主である。わたしを信じれば、お前達に幸福をやろう」

 人間たちは幸福が欲しかった。


 幸福になりたかった。


 人間たちを代表して、彼らの王が神と応対した。


「我々は幸福になりたいです。神はわたしたち人間になにを望んでいるのですか?」


「的確な質問である。わたしは信仰を欲している」


「信仰とは?」


「わたしの言葉にすべて従い生活することだ。わたしの言葉に疑問を抱いてはいけない」


 王は静かに神の言葉聞いた。そして脳内で噛み砕き、導き出された結論に王は喜んだ。そして大仰に感嘆の声を上げた。


「なんと素晴らしいことでしょう! 早速、街にも神の教えを伝える神殿を造ります」


 王は信仰という行為を誉めちぎった。


「そうか。では神の言葉を伝える。まずは神に対し嘘をついては……」


「いえ。神のお言葉は必要ありません」


 王は両手を開いて横に振り、神に拒絶の姿勢を見せた。


「なに?」


「神の言葉はすべて正しい。この考えは素晴らしいので頂きます」


「ふむ」


「でも神のお言葉はいりません。正しい言葉は、わたしが決めます」


「なんと!?」


 人間の王は神殿を建て、自分に都合のよい信託を告げる神官を置いた。


幸福を欲する人間は、そのお告げに従って生活をした。


 やがて信仰を捧げてもいっこうに幸福にならないので、人々からは神の存在を疑う者がでた。


 しかし実際に神の存在を確認した者もいるので、本当に神がいるのかいないのか、判別がつかなかった。


 こうして人間の王は繁栄をした。


「なんという厚顔無恥。いずれ神罰を下そう」


 神は人間の元を去った。




《お前が誤っていることは、俺の欲望が教えてくれる》

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