第11話 信仰の民を得る1(エルフ)

 この世界にも神がいた。


 神は自らを信仰する民を探すべく、様々な生物をつぶさに見学してまわった。


 神が初めに話しかけたのはエルフ族であった。


 森に住み、賢く、礼儀正しく、美しい彼らを、神は最も好んでいた。


 神は出来ることならば彼らの信仰を得たいと考え、最もエルフたちが多く住む大森林にその姿を現した。


 神はエルフたちに向かって話しかけた。


「わたしはこの世界の神であり創造主である。わたしを信仰すれば、お前たちに幸福をやろう」


 突然、森の上空に現れた、恐るべき威圧感を持った神を名乗る存在に、エルフたちは驚愕した。


 エルフの長老が、神に語り掛けた。


「神さま、あなたは何者です?」


「わたしはこの世界の創造主である」


 長老の問いに、神は単純明快に答えた。


 エルフたちは『神』という存在についての協議を重ねた。エルフは神秘を持たず、知恵で全てを推し量る。そしてエルフの長老は森における全ての知恵と知識を持っている。


 あらゆる可能性を検証しつくした結果、世界は神が創造したわけではないという結論に、エルフたちは達した。


 エルフの長老は神に向かって言った。


「恐れながら、森は絶え間ない進化と淘汰の繰り返しによって創造されております。神が創られたというのは、勘違いではないでしょうか」


 神は身じろぎもせず、だが静かに怒りを表した。


「なんという小賢しさ。いずれ神罰を下そう」


 神はエルフから信仰を得ることを諦めた。




《お前が誤っていることは、俺の知性が教えてくれる》

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