第9話
「よろっ!」っと返そうと一瞬思ったが、それはひかえた。暗黒の未来が見えた。
というか、その動作をするのが恥ずかしくて躊躇われる。
「よろしく」
「よっしゃー!これで仲良しね、うぇ~い」
いきなり肩を叩かれたので、「何奴!」っと思ったが普通に埼玉君だった。
ボディタッチになれていない俺の心は大慌て。もっと優しく頼みますよ、これでも緊張してますから。
「よっす」
っと震える心を隠して、返事を返す。
「よっすだってwwwwwふはははwwww」
「もう、笑っちゃだめだよ、加奈ちゃんw」
っと河合さんが東堂さんを宥めながらも、彼女も頬を緩ませている。
え?何、「よっす」ってだめなの。全く意味分かりませんがな。別に、「よぉ、スケベな服着てるかな?ぐへへへ」っていう略じゃないですよ。特に意味ないですから。爽やかな挨拶ですよ。
確認するように徹君を見ると苦笑い、埼玉君はうぇ~いな顔。
あれ?やっぱりまずかったのかもしれない。
東堂さんが笑いながら、目尻から涙を出しながら、
「よっす」
っと河合さんに挨拶。
声を僅かに低くして、キョドったような演技。
え?なに、まさか、あれ俺のモノマネか何かか?だとしたら許さん!
全然似てない。俺はあんなやばそうな不審者じゃないはず。そう・・・だよね?
河合さんはちらっと俺の方を伺いながらも、
「よっす」
っとかわいく呟く。かわえええ、胸にぞわっとくるほどかわいいよ。
河合さんに「よっす」って言われたい!その声録音してリピードしたい!
「ぶっはーwwwwだめだ、これ、もう無理wwwwよっす」
大層バカ受けして下さっておられます東堂さんと、くすくす笑いの河合さん。
君たち、仲いいね。
いやはや、草が揺れても笑う年頃なのでしょう。
でも、女子が笑っている姿はいいですな。それが俺を馬鹿にする笑いでなければですがね。
ほら、徹君がめちゃくちゃ困った顔してるじゃん。
うぇ~いな埼玉君まで若干引き気味よ。
そんな男子陣を前に、「よっすww」「よっすww」っという女子陣の声が響く。
いたたまれなくなった俺は小声で、
「あの、徹君」
「なにかな?」
「あの、お二人の様子が・・・」
「あぁ、心配ないよ。時々ああいう感じでじゃれ合ってるから、いつもの事だから」
その穏やかな声に心が落ち着く。
「そうなんだ」
「そうっしょ。いやー、助かった。こういう地雷踏むのはいつもは俺っちの役なんだけどね、くっきーがいてまじよかったわー」
さいですかー、埼玉氏。
徹君がぼかしたのに、地雷っていう本音でましたね。
私、そのポジションは別に希望してござらんのよ。どうぞ返却いたします。
「でも、田中君でよかったよ。いつも4人の時が多かったから、実は、後一人が誰になるか心配してたんだ。これで不安がなくなったよ、すぐに馴染んでくれて」
徹君が優しく俺に微笑みかける。
え?俺で本当にいいの?っていうか、全く馴染んでいないと思いますが。
これを馴染んでるって、どこ見てるんすかな。
「そうっしょ、くっきーならやってくれるって思ってたわ。自己紹介の時みたいに」
埼玉氏、その黒歴史には触れないで頂きたいのですがね。
さすがに男女の混合グループで乳毛君と呼ばれるのは避けたいのです。
なんたって、河合さんがおられますから!
「ははは、頑張ります、ジャッパン!」
そんな懐かしの初心表明をして、やはり普段と別のグループは厳しいですな~と感じるのであった。
そんなこんなで挨拶が済、ざっとメンバーを確認する。
早見徹 男 上級学生。クラスの中心イケメン。親は弁護士。
東堂加奈 女 上級学生。スポーツ少女&女王。
河合ミク 女 上級学生。かわいい。天使。萌。萌。萌。萌。
埼玉太郎 男 上級学生。ちゃらい。うえぇ~い発音率NO1。ボクシング部。
俺 男 中流遊撃手(=中流ぼっち)。まりなたん萌え萌え。
※皆同じクラスで学年は同じです。上流中級はあれです、そんな空気です。
こんな感じだ。
なんで俺ここにいるの?やっぱりおかしいよ。
どう見ても俺がまざってるのおかしいでしょ!
あのお姉さんのミスですよ、これ。
だが、お姉さんは皆を見回しながら、自分の仕事ぶりにウンウンと頷いている。
あのドヤ顔がイラっとくるわい!慰謝料代わりに色々しちゃうぞ!その大変な身体に同人誌みたいなことしちゃいますよ!
だが待てよ、そう考えるのは早計かもしれない。
最新情報を追加すると違うかも、カキカキ。
【情報追加版】
早見徹 男 上級学生。クラスの中心イケメン。親は弁護士。
東堂加奈 女 上級学生。スポーツ少女&女王。
←(NEW)保健室でBL同人誌見ながらオナニー
河合ミク 女 上級学生。かわいい。天使。萌。萌。萌。萌。
←(NEW)俺と東堂の行為を目撃
埼玉太郎 男 上級学生。ちゃらい。うえぇ~い発音率NO1。ボクシング部。
田中狗壱 男 中流遊撃手。まりなたん萌え萌え。
(↑俺) ←(NEW)保健室でロリボイス聞きながら腕に「ちゅぱ」キス悶絶。
う~ん、少しはましになった気がするがひどいのが二人いるな。
奴らはやばいな、お近づきになりたくない。その内一人は俺だけどね。
『お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、だいちゅき』
だいちゅきだよ、まりなたんたん。ちゅきちゅき、はぁ~はぁ~。
おっと、気を抜くとイヤホンから流れてくる音声に自動で意識が返答してしまった。
こりゃ、失敬。電気がもったいないからスマホの電源を切っておくか。あっちの世界で充電できるかは分からないからな。まりなたんボイスが聞けなくなったら禁断症状でどうなるか分からないから死活問題だ。
「みなさ~ん、それでは行きますよ~」
天使コスプレのお姉さんが小さな旗をぴろぴろ振っている。
その旗より、お姉さんのふくよかな胸に目がいってしまう。なんせ、健全童貞男子高校生ですから。安西先生、バスケがしたいです!
そういえば、どこにいくんだろうなぁ。
んん?ってか、異世界送還とかおかしいよ。
そうそう、そんな事できるわけないじゃん!
そんな青狸もビックリな事できるわけないじゃん!
誰一人驚いてないから今まで全く気にならなかったけど、意味不だよ。
なんで皆、「ちょっと体育館まで行くか~、だりぃ」みたいな顔してるの。
まさか、そういう催眠状態になっているのか。そうだよな、異世界に送れるならそんな技術をもっていてもおかしくない。それを破った俺、まさかチート能力きたこれ!
「では、出発で~す!」
その瞬間、再び光に包まれた。
あれ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます