第22話 プロデューサー
「こっちの世界は電気もあるし、ネットもあるから、スマホは普通に使えるんだ。ただし、こっちにコピーされて来た人同士でしか使えないけど。で、このサイトはみんなに向けて、ちょっとシステムを変えてあるんだ。気付いている人もいると思うけど、みんなには一人ひとりにアカウントが登録されていて、小説のページがある。これは自由に使っていいよ! もちろん小説を書いてもOK。外部の人に発信したいことを小説に書いてもOK。小説を書いたらトップページの新着一覧に載るから、見てもらいやすいよ。早速使ってる人もいるみたいだね」
オオイシタツルが実際に使っていた。
「そしてみんなの小説には、評価ポイントがあるんだ。★マークがあるでしょ? それがあなたの評価になるんだよ。その人の小説を、他の誰かが評価すれば増えていくんだ。この星が100個溜まると、無事に元の世界に戻れるんだ! でも、なかなか評価が溜まらなくて困る時もあると思う。そんな時は、チキングくんが言っていた、ヒウラタクロウの名札を手に入れること。それを読み取ると、星が1個増えるよ!」
僕は自分の小説ページを見た。
さっき鍵野さんに僕の小説を★3つで評価してもらったから、★は3つになっている。逆に、僕も鍵野さんの小説を★3つで評価したから、今鍵野さんの小説は★が4個になっている。
「ヒウラタクロウの名札はどうやったら手に入るか、だけど、それは簡単だよ。誰かの小説に★をつければいいの。つけた星の数だけ、ヒウラタクロウが来てくれるから、彼らを倒して、名札をゲットしてね! ただし、普通の人間じゃないから気をつけたほうがいいよ。彼らのことは『プロデューサー』って呼んでいます。倒すためには、バーコードリーダーでコンビニの中にある商品のどれかを読み取ればOK! 武器になるからね。…って、もうすでにかなり多くの人が使ってくれてるみたいだね! そうそう、その調子だよ! でも…残念ながらやられちゃった人もいるみたいだね。このラジオをもう少し早く届けられていたら、生きていられたかもしれないのに、本当にごめんね! じゃあ、今日のラジオはこれでおしまい。また明日ね、おやすみー!」
ここまですべて、さっき読んだオオイシタツルの小説に書いてあった通りだ。
この世界での「カクヨム」というサイトの使い方。★での評価方法。★を100個集めることがクリアの条件であること。他者からの評価以外に、ヒウラタクロウを倒すことによって名札、つまり★が手に入ること。他人の作品に★を入れることによって、ヒウラタクロウが出現すること。これらがすべて書いてあった。
オオイシタツルは、この世界のことを、知っている。これは間違いない。
それより、他のコンビニの高校生の中で、もう死んだ人がいるというようなことを言っていた。これは本当だろうか。直接「死んだ」とは言わなかったが、「やられちゃった人」「生きていられたかもしれない」という言葉が出たということは、そういうことなのだろう。
それは、あのヒウラタクロウの巨大カレイいや、「プロデューサー」にやられたということなのだろうか。
それにしても変なネーミングだ。「プロデューサー」ということは、この世界を作っているのはやはり奴なのだろうか。
今は考えることが多すぎる。しかし、まず先にやることがある。
「聞いてた?」
宮澤に話しかける。
「ああ……なんとなく」
「生きるか死ぬかの情報なんだから、ちゃんと聞きなよ」
「俺の勝手だろ」
「勝手じゃない。もう僕たちはチームなんだから、協力してもらわないと」
「チームじゃない」
「チームなんだよ。もう僕達は、ここから移動するときも一緒に移動しないといけないし、留まるにしても一緒だろ」
「同じ場所にいるだけで、チームじゃない」
「宮澤は知らないだろうけど、この世界ではバケモノみたいなやつが出るんだ。殺されるかもしれないんだぞ」
宮澤を味方にしなければならない。少なくとも、彼のアカウントで僕達2人に★を入れてもらわなければ。
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