第2話(オオイシタツルの小説)
10000分の7は、何%か計算して欲しい。
0.07%だ。
凄まじい低確率だと思わないか?
ジェームズ・ボンドでも厳しい。
この倍率の中、「努力」「友情」「勝利」を奇跡的に連鎖させて勝ち残り、元の世界に帰ろうとする奴はバカを見る。
「間違いなく勝つ方法」を知ってる奴に聞いて、それを淡々と実行する奴が勝つんだ。そして、その方法は今から伝える。
まず、「7つのイスを奪い合うタイプのゲーム」という考えを変えて欲しい。奴らのルールに則って行動すれば確かに助かるのは7人だ。しかしそれだと上に書いたように絶望的な確率との戦いになる。
そのルールは、俺達に協調させないための規制なだけであって、裏側はある。
つまり……希望を持ってもらいたいので、最初に伝えるが、助かる人数は7人じゃない。この方法さえ使えば、何人でも助かる。
何人でも助かる。
10人でも、100人でも、場合によっては全員が協力すれば10000人が助かるかもしれない。
何人でも助かる。
だから今は、下手に動かず、この文章を読んでおとなしくしていて欲しい。
一歩間違えば、この世界は一瞬でゲームオーバーになる。ささいな行動が命取りになる。これは比喩じゃなく、本当に死ぬという意味だからな。
次に「なぜ俺がこっちの世界に詳しいのか」を伝えた方がいいと思うので書きます。
このゲームは、何回も繰り返し行われている。
実は俺、4回目の参加だ。
このゲーム自体がトータル何回目かは知らないが、週1回のペースで行われている。始まるのは必ず月曜日の夕方だ。1回のゲームはだいたい4〜5日で終わる。長くても6日で終わるように調整されているので、1週間という期間に合わせられていると思われる。
これを聞いて「毎週10000人の高校生が消えたらおかしい」と思う奴は、前回の話をもう1回読み直せ。
この世界はコピペで出来てるんだ。今これを書いてる俺も、読んでる君も、コピー。オリジナルの俺、オリジナルの君、きっと、あっちの世界で何不自由なく暮らしているだろう。とっくにコンビニを出て、家でくつろいでいるかもしれない。
コピーされた世界で、どれだけ人が死のうとも、核爆発がおきようとも、君が全裸で走り回ろうとも、オリジナルの世界にはなんの影響もない。残念ながら俺たちコピーは、元の世界に対して何の影響力も持たない。「ここは夢の中の世界だ」ぐらいに考えておくといい。
だから何回でも繰り返すことができる。
ただし、勝ち残ってしまうと話が変わる。
元の世界に戻ると、自分が2人いるという状況になってしまうんだ。
何も知らず、フツーに暮らすオリジナルの前に、ゲームを勝ち抜いたコピーが現れるわけだ。
ここに4つの選択肢がある。
1、正直に「私はコピーです」と伝えてオリジナルと一緒に暮らす
2、オリジナルに隠れて、別の人生を送る
3、オリジナルを殺し、自分がオリジナルに成り代わる
4、自殺する
1はない。
「オリジナルとコピーが会話をすると、コピーの方は消える」と、僕らの体にはプログラムされている。
人間がコピーされる際に、その世界での矛盾を防止する機能らしい。
2が普通かもしれないな。
オリジナルと接点は持てないから、遠くへ行って暮らすことが必要だ。まあ、はじめは身寄りがないから、どこで暮らしても一緒なわけだが。
3はあまりオススメできない。
自分を殺すわけだからな。気分が悪いだろそんなの。でも、どうしても元の生活に戻りたい場合は、やるやつもいる。ただし会話をすると消されてしまうから、もう一方的に殺すだけだな。死体の処理も必要だから、しんどい。
4を選ぶくらいなら、今死ね。
んで、俺は過去3回とも2番を選んだ。だから、オリジナルの世界には、なんとオオイシタツルが4人いる。それぞれが絶対に会話してはいけない。もう俺自身、コピーのコピーのコピーのコピーだから、どこか不具合が生じてきてるんじゃないかと不安だ。まあ、今のところ問題ないが。
それでもなぜまたこの世界に来たのかは、理由がある。
これを仕掛けている奴らに復讐したいんだ。
月曜の4時前後にスマイルバードにいれば高確率で参加できる。
だから、俺は狙ってこれに参加するようにした。
1回目はたまたま勝者になれた。
2回目はルールを知っていたから勝てた。
3回目は勝つのは当然として、このゲームを終わらせる方法を探した。そしてヒントを見つけた。
4回目、今回でそれを実行しようと思う。
それが「何人でも、間違いなく助かる方法」であり、奴らに復讐する方法でもあるんだ。
これを読んでいる君たちには、ぜひ協力して欲しい。
その前に、ここまでの話が嘘ではないという証拠を見せたいので、これからこの世界で起こることを、先に書いておこうと思う。
今から約10分後、21時30分になったら、2回目のルールの解説が始まる。
そのルールの内容はこうだ……
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