VS 日浦拓郎
第18話 死んじゃうもんね
「オオイシタツル」と入力して検索すると、検索結果のユーザー欄にオオイシタツルが表示された。それをタップすると、オオイシタツルのユーザーページへと飛んだ。「小説」の欄に「オオイシタツルの小説」というタイトルの小説があった。
これは、鍵野さんのページも、僕のページも同じだった。こっちの世界に来てしまった高校生たち10000人は、自動的にこの「カクヨム」というサイトにユーザー登録され、同時に「○○の小説」というタイトルの小説(○○には本人の名前がカタカナで入る)を1話アップされるようだ。僕や鍵野さんの小説の内容は白紙だった。
オオイシタツルの小説は、もうすでに本人による執筆(?)がされていた。
「第一話」という青い文字の下に、本文が書いてある。
「ここを見に来ている人が、全体の何割くらいかは分からないが、せっかく来てくれたんだから、俺の知っていることは全部書こうと思う。同じ条件で始まったゲームなのに、なんで俺だけこんなに詳しいのかっていう事は、今は考えないで欲しい。後々書きます。まずは、ラジオや映像は1回しか見る(聞く)チャンスがなかったので、一度再確認の意味で書きます」
そこから下の内容はこっちの世界の状況について、スマ子とチキングが話をした事のまとめだった。だいたい知っていることだが、改めて整理することができた。
■この世界全体が、もともと僕たちのいた世界とは別の世界であり「コピー&ペーストで作られている。
■元の世界に戻るにはこっちの世界から切り取られて、あっちの世界に貼り付けられなければならない。
■100✕100マスが無限につながったゲーム盤の上に僕らはいる。
■ひとつのマス目の中にはひとつのコンビニが存在し、それぞれ一人の高校生が閉じ込められている。
■コンビニの外へは出られない。
■マス目の上下左右は繋がっており、コピー機を介して移動することが可能。
■コンビニの所在地とマス目の位置に関係はない。
■一度移動すると、移動元のコンビニは使用不能となるので、移動は慎重に。
■元の世界に戻る条件は「ヒウラタクロウ」の名札を自分の所有するバーコードリーダーで読み取ること。
■元の世界に戻れるのは7人だけ。
などが書いてあった。
本文の末尾には「15分以内に次の話を載せる。ここからはみんなも知らない話が多いと思うので、また読みに来て欲しい」と書かれ終わっていた。
まもなくその約束の15分が過ぎようとしていたが、まだ更新はされない。
「あと99回あの化物を殺さないといけない」という絶望で、あの後しばらく鍵野さんは放心していた。しかし、タバコを1本吸って気分を落ち着かせたようで、「ご飯食べようか」と提案され、2人でお弁当をチンして食べた。食べながらオオイシタツルの小説をチェックしていたところだ。
「バーコードリーダーは常に持ってた方がいいよね。あと、この『カクヨム』っていうサイトは、多分いろんなヒントがあるからよく見て回った方がいいと思う。あ、スマホの充電器が必要だから、このコンビニにあるやつを2個もらっちゃおう。それから、移動っていうのも考えたほうがいいかもしれない。他のコンビニの人と協力したり、チームで戦ったりできるかもしれないじゃん。さっきみたいなバケモノが出てきて、倒さないと名札がもらえないんだったら、あと99個集める前に新宅くんが死んじゃうもんね」
「なんで僕なんだよ」
鍵野さんは、ご飯を食べながらよく話した。
もともとがよく話すタイプの子なのか、不安を消すために普段以上に話しているのかは、元の鍵野さんを知らないのでわからなかった。
そうこうしているうちに、オオイシタツルの第2話がアップされた。
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