第29話

帰宅した香澄は、待っていた郁未に彼を紹介し、やがて帰宅した望海にも紹介した。

蜂須賀は、二人にも好評で気に入って貰えたようだった、特に郁未とはため口友達の様に話す仲になって、香澄に気を揉ませた。

その後、夕方四人で食事して更に親交を深めて、彼は7時に惜しまれて東京へ帰った。

「やすちん、とんぼ返りだね」

「せめて、お兄さんってよべないの?」

望海にたしなめられる郁未、

「だって、ウブっぽい所カワイイもん」

「もう、ベタベタして! 真壁さんに話したら、何て言うかなー?」

「あーん、お姉ちゃんヒドイ!」

「あー私、さっきのプロポーズ、こっちがときめいちゃったなぁ」

「郁未、望海、私のフィアンセよ、取らないでね」

「6月まで後4ヶ月かーお姉ちゃんの花嫁姿、早く見てみたい!」

郁未が待ちきれないように小躍りする、

「家族だけで細やかにやるつもりよ」

「そういうの最近流行ってるよね」

「流行でするんじゃないの、将来開業するから、資金無駄にしたくないだけよ」

「結婚って大変だなぁ」

「二人信頼しあってるから苦にならないの」

「ご馳走さまです、御姉様フフフ」

妹達は、姉の行く末にそれぞれ自分を重ねて、幸せに成ろうと二人ウインクし合った。


2月には、そんなエピソードもあったが、やがて3月になると、郁未も無事に中学卒業、望海も三学期が終わってそれぞれ4月春からは、高校生活が始まる。


鷹良と望海の仲は一見変わらないが、見えないところでより一層心の絆を深めていたし、お互いが無くてはならない存在になっていた。


真壁と郁未も、未だ初キッスも無い初な関係だったが、お互いの将来目標を目指しながらゆっくり愛を育んでいた。


美都はと言うと、こちらは鷹良を諦めた後は暫く縁が無さそうだが、春過ぎの全国大会制覇に向け姶良恭子の基、菜々美と青春に汗していた。


綾部朋華は相変わらず、文学と介護ボランティアを両立しつつ、郁未やまどか介護士とも交友を深めていた。


ガッツこと片桐勝也は、全国大会後日談として、結果を出した事が話題となり、名を知られてあちこちから引き抜きがあったが、彼は気持ち良く断り、潮浜高校バスケ部を全国レベルにひけを取らない強豪校へと育てるための決意をする。

妻美佳子もそれを支えていたし、忘れてはいけない綾ちゃんも、来年の4月にはピカピカの一年生になる、元気さも相変わらずだ。


寒く厳しい冬をそれぞれが乗り越え、新しい春が来た、この先も色んな事が起こる。

でも彼らのドラマを追うのは、一旦ここで終わりにして、見守る事にしよう。

これからもずーっと、彼らの青春の象徴である゛海の歌゛が聞ける事を祈って止まない。

それでは、また会う日まで……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アオハル 海の歌が聞こえる くろま @kuroma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ