第12話
真壁は理事室をお辞儀をして出る、歩きながらあの海千山千の父親を説得するにはもっと考えないといけないと反省した。
来週までに練り直しだ、と考えていたら一つ思い付いた事がある、兄に相談して協力してもらえばどうだろう? まだ時間はある、彼は来週が楽しみになった。
エレベータで一階に降りた真壁は、売店の前を通る、その時左手で杖をついている入院患者らしい女の子とすれ違う、真壁はこの前助けた子を思い出した。
顔は覚えていないが丁度目の前の子位だった、元気になっているといいなと思いながら近づいてくる子の顔を見た、向こうも丁度真壁を見て目が合う。
間もなくすれ違いそのままはなれていった、玄関まで出て真壁はこんないい天気なのにバスケ以外にすることを思い付かない自分を情けないと思った。
郁未は美都と盛り上がった後昼食前に病室へ戻った、病院での新しい楽しみができてそれはそれで良かったが、やはり行動派の郁未には外が恋しい、
「今日はいい天気なんだろう、皆何やってるのかな?」
親しい友達や、家族は今頃どうやって休日をすごしているのだろう、この時期には珍しい強い陽射しを遮る窓のカーテンを開けて外を見ながらぼうーと思い更ける。
「そういえばさっき売店前ですれ違った彼」
暇なので自分の行動を回想していてふと先程目があった少年を思い出した。
「何であたしをみてたんだろう?」
郁未十八番の妄想が展開する、
「あーあ、何この不恰好な娘は、こうは成りたくないなぁ」
これは惨めすぎる、ボツ!
「まあ、気の毒にどうして怪我したのかわからないけどおっちょこちょいだなぁ」
大きなお世話だ、これもボツ!
「おっ! 可愛いじゃん、声かけちゃおうかな? でも足怪我してるし」
ナンパかよ! イマイチ、もう一声!
「こんな休日に足怪我なんて可愛そう……こんなもんかなぁ普通、あれ?」
郁未はふと思い付いた、もしかしたらあの彼が自分を助けた白馬の王子ではないかと? 顔を覚えていて、すれ違った際に気がついた、そうとも取れなくはない。
「あー、妄想入りすぎだなぁ、んなわけないじゃん!」
そういってカーテンを閉めて、さっき買った雑誌のページをめくった。
同じ病院で入院中の美都へは、午後から高校の友達が見舞いにやって来た。
女子高なので見舞いにきたのは女の子たち6人組で来たので、一時相部屋が大変なことになった、急遽同じ階にある休憩室に移動して話に花が咲く。
今のところ心身性のストレスが原因といことしか解っていないので、皆は心配はしたが、すでに一週間近く経っており、経過も順調のため、次の検査で異常が無ければ暫定退院できる目処がたった事を説明したら安心てくれた。
その後は、ファッションの話や、恋愛の話に盛り上がりお互いストレス発散になったようだった、そうして友達は午後4時には帰っていった。
美都にとっても色んな出会いがあって、十分退屈しない一日となり今度の月曜日予定の検査が早く来ないかと待ち遠しくなる、でも一つだけ心残りがあった、それは入院して以来、鷹良は一度も見舞いに来てくれていない事だ。
母親の話では連日帰りが遅いとの話は聞いているので、きっと近くある県大会に向けて、部活が佳境に入っているのは想像できた、でも幼馴染みのよしみで来てくれても良さそうなものだ。
結果病状は大したことも無さそうなので、見舞い自体大袈裟かも知れないが、あの時もう少し素直であったら、気まずいことにならなかったのにと、少し後悔していた。
その夜ガッツ達ご一行が彼の家に着いたのは、夜7時前だった綾もご満悦の内に楽しんで帰った頃には綾は疲れて眠っていた、抱き抱えて家に入る一行。
皆疲れて、食事も作る気力もないので、ピザを注文しておいた、それが間もなく届いて皆で頬張る。
遊園地でのエピソードに花が咲く中、鷹良の携帯にメールが入る、さりげなく廊下に移動し確認する、郁未からだった。
開いて確認する、次の内容だった、
゛お晩です、
今日は……(どうでもいい話なので省略)
突然ですが、ちょっと調べて欲しいの。
あたしが事故した時に助けてくれた恩人のことなんだけど、
潮浜高校生と判ったの、鷹良っちにその相手を探して貰いたいの、
もう、……(どうでもいい話なので省略)……なんとしても知りたいの
この前の極秘情報と引き換えに、オネガイ!
恋のキューピッド郁未より
PS:お姉ちゃんにはOFFでオネガイ!
名前はマカベという男の子です、ヨロシク゛
余りに長いので、かなり省略したがだいたいこんな内容だった、鷹良はこれをみて郁未はそうとう暇なんだなとある意味同情した。
メールはこっそり見ていたが、望海が気づいて見にきた、
「鷹良さん、誰から?」
「うん、郁未ちゃんからみたいだ」
「また鷹良さんに何のメールなの? あの子私にメールすればいいのに」
「まあまあ、どうやら郁未ちゃんを助けた人を探してるらしい、協力してほしいみたい」
「そういえば未だ判らないみたいで、お姉ちゃんも殆ど情報が無いって、でも鷹良さんにまで頼まなくても」
「彼女も藁をも掴む思いなんだろう、いいじゃないその位僕にも協力させてよ」
「うーん、なんかなぁ、ご免なさいねこんなことで」
「大切な望海さんの妹だから、ね」
「鷹良さん……」
鷹良の言葉にちょっとやられた感じの望海、鷹良は真壁に聞いてみるべきか、迷っていた、なんかいい方法はないものだろうか? そんな事を考えていたら、望海が鷹良の肩をたたく、ガッツと美佳子のアルバムを見せてくれると言っているらしい、鷹良はメールの事は一旦忘れて居間に戻って話に加わった。
こうしてそれぞれの週末は過ぎていった。
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