閑話休題その二


  ○閑話休題○ ~かばねレポート~



 黒土かばねです。

 今日は呪術科の授業風景をご紹介します。

 みんなにもれなくきらわれている呪術科……なぜそんなにきらわれるのか、これを見れば納得してもらえると思います。


「殺す絶対殺す隆も殺す祐樹も殺す翔も殺す弘明も殺す幹夫も殺す洋輔も殺す啓太も殺す道弘も殺す総一郎も殺す雄一も殺す啓二も殺す……」

「コロす絶対コロすタカシもコロすユウキもコロすショウもコロすヒロアキもコロすミキオもコロすヨウスケもコロすケイタもコロすミチヒロもコロすソウイチロウもコロすユウイチもコロすケイジもコロす!」

「ころすぜったいころす……はぁ……」


 物騒な事をさっきからずっとブツブツ言っているのが顧問のオンモラキ怨喪羅奇先生です。

 その後を元気いっぱいに復唱するのがミタマちゃん。

 そして最後に小さい声でぼそぼそ言っているのがわたしです……

 怨喪羅奇先生はかなりガチな人です。


 教室には男の人の写真がびっしりと貼ってあります。そのほとんどがアイスピックで切り裂かれてますが……これらは先生がせっせと貼っていったものです。

 教室の天井からは、口を縫われた小さな干し首が大量に吊るされています。

 これは決して本物ではなく、おみやげ屋か何かで買ってきた作り物に違いないと、わたしは全力で自分に言い聞かせています。

 しかし最近ある事に気づいてしまいました。教室に貼ってある写真の枚数と、干し首の数が一致するのです。


 ……まあ、偶然です。ぜったいそうに決まってます。

 ちなみに先生の姿を職員室で見かけた人はいないそうです。

 帰宅する姿を見た人もいません。

 学校には七不思議ってつきものです。

 世の中には不思議な事がいっぱいあるのです。

 そういうものなのです。

 怨喪羅奇先生は、突然カマで何もない空中を切り裂きます。

 未熟なわたし達には見えませんが、何かいるそうです。

 先生は時々、わたし達に理解できない言語を叫びながら壁に頭を叩きつけます。

 呪力を高める儀式だそうです。

 ミタマちゃんが真似しそうになるので、そのたびにわたしが止めます。


 先生は授業中に突然石を積み上げ始めます。

 というか先生はほとんど授業をしません。

 授業時間が始まると教室に入ってきて教壇に立つので、たぶん先生だと思われます。

 怨喪羅奇先生というのも本名ではありません。

 先生は時々うなり声を発しますが、それが、

「オン……モォ……ラ……ギィ…………」

 と聞こえるため、ミタマちゃんが怨喪羅奇先生と名付けました。

 わたし達は古い木の机を使っているのですが、恨み節やダイイングメッセージみたいなものがいっぱい刻まれていて使いづらいです。たぶん卒業生のいたずらです。

 教室の壁には呪符みたいなものがびっしり貼ってあります。人型のしみもあります。しみの形は見るたびに変わっています。時々謎の汁が染み出していたりします。



 そんなわけで……呪術科は存在自体が学園の七不思議に入れられています。

 呪術科の教室は肝試しのゴールに使われる事もあります。

 しかし一度肝試しをした人達は、二度とここで肝試しをやろうなどとは思わなくなります。

 大勢のトラウマを量産しています。

 そんな教室ですから、そこで毎日授業を受けているわたし達も同類に見られます……

 わたし達、呪術科がもれなくきらわれている理由……なんとなくわかっていただけたでしょうか……

 黒土かばねでした。

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