閑話休題その一

  ○閑話休題○ ~かばねレポート~



 こんにちは。

 黒土かばねです。今日は魔法少女クラスのご案内をします。

 あちらにそびえているお城のような校舎が魔法少女クラスの学び舎です。

 うちの学校は初等部、中等部、高等部の校舎が同じ敷地内に入っています。


 魔法を志す人は、入学する前にまず適正審査を受けます。

 これに合格すると晴れて初等部への入学が認められます。初等部では魔法の基礎を学びます。最初のうちは皆ほとんど同じ授業内容ですが、年次が上がると少しずつ自分の適性にあった魔法を学ぶようになります。


 中等部に入る時に改めて適正検査があり、ここで将来どの道に進むのかがほぼ決まってしまいます。

 ではどんな科目があるか、ざっとご紹介しますね。



 まず、一番一般的なのが自然魔法科。

 炎や水や風や土を操る科目です。この中でさらに自分にあった属性を学んでいきます。


 ちなみに土属性コースは一番不人気です……

 授業でも手や服が汚れて大変そうです。でも畑に芋掘りに連れていってもらえるのはうらやましいです。自然魔法科土属性コースは、将来は農業に携わる人が多いです。


 炎コースは派手でかっこいいのですが、熱くて危ないので魔法少女クラスではあまり人気がありません。夏場とかはみんな死にそうな顔をしています。将来は調理師や陶器作りなどに進む人が多いようです。


 水コースはそこそこ人気。

 夏はプールで授業できるし実習で海に連れていってもらえるそうです。

 でも冬は寒そう……将来の進路は多岐に渡っています。人体に密接な関わりがあるので医療の道に進む人もいますし、水道局や飲料水メーカー、化粧品メーカーなど、様々。


 一番人気は風です。

 ハンググライダーや気球に乗る授業とかあって楽しそうです。学校の敷地は海に面しており、海上の風力発電施設で発電のお手伝いをしたりもします。将来の進路は、航空会社や空調メーカー、ガスを扱うメーカー等に就職する人が多いです。


 自然魔法科の人達は数も多く、皆仲良しで楽しそうです。

 普通の学校と一番近い雰囲気の人達です。



 そして次は神聖魔術科。

 ここは魔法少女クラスの中でも花形と言える学科です。

 主に神様へのお祈りが授業の中心です。神聖魔法は祈りによる奇蹟を呼び起こしたり、他人の精神に働きかけたりする魔法です。人の心を魅了したり混乱させたり記憶を操作したりします。


 カリスマ性を持った人が多く、将来はアイドルになったりもします。他にも政治家や宗教家、芸能人になる人も多いです。また、悪人を捕まえる警察庁所属魔法少女部隊にスカウトされる人もいるようです。魔法少女部隊は活躍が全国放送されるので、アイドルと同じくらい人気があります。


 この学科に入る人はとにかくなんかキラキラしてます。みんなの憧れですが、魅了の効果を維持するためにダイエットや運動が欠かせないらしく、また恋愛も基本的に禁止されています。一見華やかな裏側では黒い噂も絶えないようです。



 次いきます。召喚魔法科。

 こちらは自然魔法科の次に人数が多いのですが、召喚の種類は細かく分かれています。

 基本的には現実ではないどこか謎の世界から何かを呼び出す学科です。

 どこから呼び出すかで、同じ学科でもカリキュラムが異なってきます。

 精霊界から召喚する精霊召喚コースが一番一般的です。精霊といっても小人だったり羽のある妖精だったりアラビア風の魔人だったりと種類は様々。分類不可能なくらい色々あるので、みんな一緒くたに授業します。もの凄く賑やかです。この学科は明るくお祭り好きでコミュニケーション能力が高い人が多く、芸人や営業、ツアーコンダクターやコンサルタント等の職業が人気の進路です。


 他には、電子の世界、つまりPCの中から召喚する電子召喚師コース。

 これはPC上で自分がデザインしたものを呼び出すパターンと、ネット上の情報から何かを構築したり検索して呼び出すパターンがあります。この学科の人はとにかくオシャレです。いつも薄着で高そうな服を着ています。将来はウェブデザイナーやファッションデザイナー、建築士など、デザイン系の職業に進む人が多いようです。


 召喚魔法学科で少し異色なのが、具現化コースです。

 頭の中で思い描いた事を具現化します。厳密には召喚とは少し毛色が違いますが、頭の中から呼び出すという事で召喚魔法科にカテゴライズされています。

 このコースに入る人は自由人が多いです。定時に登校しない人も普通にいたりして、規則がゆるいようです。授業は絵を描いたり、物語を書いたりします。将来の進路はやはり芸術家や作家などが多いです。



 だいたいこれで半分くらい紹介しました。

 疲れてませんか? だいじょうぶですか?

 では次いきますよ。



 今まで紹介したメジャーな学科は校舎の中央棟に入っています。

 ここからは少しマイナーになりまして、中央棟から渡り廊下で進んだ西棟に入っている学科の紹介になります。


 錬金術科。

 金属を練成したりホムンクルスを作ったりします。ただし、貴金属の練成や人に近すぎる形のホムンクルスは原則的に禁止されています。この学科の近くでは、一目で人間ではないとわかる形のホムンクルスが歩いていたりします。こっそり好きな子のホムンクルスを作ろうとする人が毎年一人はいるようですが、すぐにバレてこっぴどく怒られます。貴金属以外の金属練成は非情に地味ですが、中には職人並みの腕前を持った人もいます。将来は医者や科学者、職人になる人が多いようです。



 演算魔法科。

 これは魔力により物理法則を再現し、科学的な結果をもたらす魔法です。

 たとえば、重力の値を書き換えたり、原子の電子配列を強制的に変えて別の物質を作り出したりします。

 また、インターネット等、プログラミングされた仮想世界に魂を没入させる魔法もここに属します。電子召喚師コースと一部カリキュラムが重複しますが、こちらは他人のPCの中身をこっそり見たり電子ウイルス魔法でいたずらしたりなど、あまり評判のよくない人がたまに現れる事があります。

 この学科に入る人はもれなく数学が得意です。そしてメガネ率が異常に高いです。

 進路は科学者や化学者、教師やプログラマーに進む人が多いです。



 仙術科。

 この学科は仙骨という特殊な体質を持っていないと入れません。

 体の経穴を巡る気を操作し、不思議な力を発揮したり傷を癒したりします。

 中には天候など自然現象を操れる人もいるようです。一見自然魔法と似た事も行ないますが、原理が違うそうです。

 授業では拳法が必修科目となっています。体操服は太ももの辺りにスリットが入っていてかわいいです。

 進路は整体師や武道の師範等が多いようです。



 陰陽師科。

 式神を操ったり、前鬼、後鬼と呼ばれる鬼を使役したりします。

 授業ではひたすら紙を切って工作みたいな事をしています。

 この学科は傀儡師コースや符術師コースの人も一つの教室で学びます。人数がそれほど多くないので、専用のコースに分ける余裕がないようです……

 進路は占い師や学芸員など様々です。



 そしてさらにマイナーな学科は、なんと、その他学科としてひとまとめにされています。

 死霊術科、忍術科、土着魔術科、などなど……

 これらの学科は、本来は一族のみに伝わる魔術がほとんどなので、学校に通って習おうという人がそもそも少ないのです。

 死霊術科はいわゆる霊を扱ったり死体を扱ったりする魔術ですが、衛生面、モラル面に考慮し、スーパーの魚や鶏肉を使います。

 忍術科の人はいつも忍んでいるので何をしているのかわかりません。



 そしてそして。

 ついに来ました。

 長々と説明してきましたが、やっと本命の紹介です。


 ドルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル、じゃんっ!


 我らが呪術科です!


 一年生の在籍者は二名です……

 私とミタマちゃんの二名。二名しかいないならその他学科にまとめてくれてもよさそうなのですが、呪術科だけは別の教室です。西棟のはずれにある旧校舎の一室。誰も近寄らないような寂れた一角で授業を受けます……


 呪術もたいていは一族相伝のため、新しく入ってきた人が呪術科に適正を示す事はほとんどありません。私の家は分家ですが、本家の子どもは学校で呪術を習ったりせず、一族内で学びます。

 この学科は、暗いだの不気味だの言われてもれなくきらわれています。悲しいです。


 しかし。

 ミタマちゃんはその呪術科のイメージを変えようと前向きにがんばっているのです。

 適正検査を受けた時、ミタマちゃんは「自分は神聖魔術適性のはず」と言い張って散々ゴネまくったそうです。


 しかし実際は呪術適正一〇〇%。

 普通は、自然魔法火属性六〇%、水属性二〇%、精霊召喚二〇%……などといくつかの可能性が示されますので、一〇〇%の適正というのは珍しいです。ちなみに私は呪術八〇%、自然魔法土属性二〇%です。


 何回検査しても呪術適性とわかったミタマちゃんは、開き直って、

「じゃあ呪術科を神聖魔術科以上の人気学科にすればいいんだ!」

 と言い出しました。すごくポジティブです。無謀ともいいます。


 私も微力ながらお手伝いができるといいのですが、口下手で引っ込み思案で地味で……何ができるかわかりませんが、ミタマちゃんと一緒ならがんばれそうな気もしたりしなかったり……です。はい。



 えっと。最後まとまりがないですが……

 これで魔法少女クラス、学科のレポートをおわります。

 黒土かばねでした。

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