そんな季節

 ヒグラシの大合唱が終わって、日は沈み、蒸し暑い夜がやって来る。そしてどっぷりと夜が更ける。

 そんな時間になると、私はあなたの部屋に忍び込むの。




 薄暗い部屋の中、スースーと聞こえる、カワイイ寝息を感じてあなたへと近づいていくの。

 少し寝相の悪いから、服がはだけておへそが丸見え。

 ヨレたTシャツの襟もとから、首筋が露わになっている。

 数滴の汗が滲む首にそっと触れてみる。暖かい。

 グッとあなたの首の付け根に頭を押し当てて、ぺろりと味見。スッゴくおいしそう。

 歯を立てて、皮膚を貫く。熱い血潮が口一杯に広がる。わたしの全てが蕩けてしまいそうになるほど美味しい。

 あなたは今、どんなカオをしているんだろう。寝苦しそうなカオ? それとも、いつもと変わらず穏やかなカオをして眠っているのかな。

 もうちょっとだけ我慢してね。お腹の子の為にもね。

 パチン! と甲高い音が鳴り響いた。あなたは無意識に自分の首をはたいた。

 女をはたこうとするなんてサイテーね。まあ、いつものことだから慣れてはいるけれど。

 私はブ~ンと飛び去って、網戸の隙間から外へ出て行く。

 そしてあなたは、眠ったまま、私のキスマークを掻きむしるの。

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