ある独白
……静かな場所でずっと微睡んでいた。
軽く閉じたまぶたの向こうにはいつも薄く明るい光が見えていて、微笑み小さく踊る人ようだった。不規則なコポコポという優しい音は耳の奥をくすぐる歌のようで。
変化の無い時間をずっと過ごしていたから時の移り変わりもわからなかったけれど、ずいぶんと長い間、僕はそうしていた。
────いつもの明るい光に影が差したのはいつだったか。
聞いたことのないあたらしい音とはじめて感じる揺らぎ。
ためらうように何かが僕をサッと撫でて、僕はこの穏やかな時の終わりを知った。
ごぼり、水が音を吸い取った。
伸ばされた何かが僕を抱えて、ぬるく優しい世界からゆっくりと空へ浮き上がっていくのがわかった。
────……。
その時に感じた温かなぬくもり。それは僕にとって生まれて初めてのもので──なんていうか、身体中が喜びでぞくぞくとしたんだ。
──────ああ、僕は生きるんだって。
そして、僕たちはこの世界で、たくさんの間違いと選択をしていく。
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