2-2 勇者が現れない
結局ゲームの中でのリンゴはただの王女だ。血筋正しく、なんだかそれまでの王統の中では高い魔力を持った人物がいろいろいたり、ひいては「青い血の氷結女王」とかなんだか異名をもっているものもいたりはしたが、ゲームの中では特に何をするでも能力があったものとしても描かれていない。
自分の身は自分で守らねばならぬ。前世、強烈な母親のもとで育ち、ほぼ放任主義の中でくらし、高校時代には各部長や諸先生方と学校祭の改革のためにぶつかってきた経験を持つ自分だ。柔柔しくくらし、きっと勇者が助けてくれる、なんて幻想にひたる余地はない。
すぐにでも戦いの方法を得ようとした。しかし残念ながらも、武芸の道はあまりにも不得手のようで、苦心して護身術を学ぶためと剣を教えてもらっても「自分のことを斬りそうで危ない」とあっという間に止められた。
そしてこの世界はRPGらしく魔法がある。魔法の属性や精霊についてはここでは割愛するとして、元来の性質か、リンゴは攻撃魔法もまったくもって不得手だった。このままでは16歳の自分は魔王城でなにひとつ太刀打ちできぬ、と危ぶんだ時、一つの才能が発見された。
結界魔法である。
結界、つまりは障壁を作るその技は幼きをして一般の魔導士よりも上手にできた。身の回りに障壁をはれば、簡単な攻撃魔法やただの剣の攻撃などではヒビ一つつかないバリアーだ。
これは魔王城にさらわれてから、自分の身を守る最高の手段ではないだろうか?
歓喜したリンゴは一心にこの結界術を鍛えていった。「そこまでしなくとも」と言われても、16歳の私の運命をみんな知らないからこそ言えるのだ、と止める言葉を無視して、国一番の賢者に習いながらこの術をひたすらにリンゴは学んでいった。
そして今では、やろうと思えば無意識のうちでも24時間、自分の肌から周囲10センチ程までならどんな攻撃もきかぬ結界魔法をつくりあげることができ、やろうと思えば10メートル以内まで結界を広げて高位魔術も通さぬようにできるようになったものだ。
技の鍛錬を惜しまぬうちも、よし、これでいつ攫われても勇者がくるまでは自分の身を守れるだろう…そう決心していたのだが、ひとつの問題が立ちはだかった。
15歳になった今でも、勇者が現れないのである。
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