第7話 Blood Lolita

九重は人で賑わうメインストリートをしばらく進み、小脇から伸びる裏路地に歩みを進める。不必要に人目のつく所を歩いて、軍人に気付かれても面倒だからだ。

 路地に入った途端、色とりどりの明るさで満ちていたメインストリートとは全く違う世界が目の前に現れた。

 (本来MGがいればこんな荒れた裏道なんざどうってこと無いんだろうが……それでも、な)


 まともな明かりは点々と軒下に吊るされた蛍光灯のみであり、それすらも点滅を繰り返し、必死の息継ぎをしている。かつては派手な様を見せていたのだろう、ビルの上に据え付けられたネオン看板は、怪しい紫の光やピンクの光をおぼろげに見せたかと思うと、急に糸が切れたかのように真っ暗になる。


 それらの元で暮らすのは薄汚い鼠や下等な虫ばかりである。鼠や虫共は、立ち込める甘ったるい腐敗臭をものともせず、ビルから流れ出る廃液や打ち捨てられたごみを啜るようにして生きていた。

 それらに入り交じり、世間からあぶれた人間が縋るように九重の後をつける。


 それはホームレスの男だった。

 男は汚れた右手にさび付いたナイフを握りしめ、九重の首筋に狙いを定めている。空いた左手は、九重が背負っているバックパックを引っ掴んで奪い取れるように構えられている。荒い息遣いを何とか抑えながら、小走りで後をつけていた。

 二人の距離が短くなり、いよいよ勢いをつけて九重に飛び掛かろうとした、その時である。


 九重は何も言わずに振り向き、腰のベルトから自動拳銃を引き抜くと、ホームレスの男に勢いよく突き付けた。黒々とした銃口が、過たず彼の額の真ん中に押し付けられる。

 「ヒィッ」

 男は小さく悲鳴を上げ、腰が抜けたのかその場にへたり込む。九重はその様子を一瞥すると、さしたる感慨も湧かぬ内に拳銃をしまい、また歩みを進めた。


 しばらく路地を歩き、徐々に周りが明るくなってきたかと思うと、やがて開けた広場に出た。広場をぐるりと囲むように植込みが作られ、植込みの際を縁どる形でオレンジ色の明かりを灯す電燈が立っている。

 その光に照らされるように、広場の中央には噴水が湧き上がっていた。噴水を挟んで向こう側には、こじんまりした洋式の館が両腕を広げるようにして構えている。


「水が貴重なこのご時世に贅沢なこった」


 九重は独り言ちる。電燈の陰に隠れた彼は、右目を二度素早く瞬きし、光学ウィンドウを表示させる。目線を移動させながら、太田のスケジュール表を呼び出した。


 「間違いない、ここで食事会をした後は自由行動するようになっているな」


 目当ての情報を見た後、光学ウィンドウを消す。そして、太田がいるであろう館の入り口を見据えながら、電燈の陰に身を潜めた。

 張り込んで幾らか経った頃、不意に九重の脳内に通信のコールサインが鳴り響く。 眼前には、『アヤメ』とだけ書かれた光学ホップアップウィンドウが躍り出ていた。何事かと思い、九重はこめかみを二度叩いて通信回線を開く。


 『あ、栄一郎?大丈夫?』

 「まだ何も起きちゃいない。それよりお前、バックアップを任せたが今どこにいるんだ?」

 『栄一郎が見える所にいる。そこの広場の後ろ、一番高いビルの上』


 九重は振り向き、先程抜けてきたビル群を見渡す。

 競い合うように天へ背を伸ばすビルの中で、一際抜きんでて高いビルを見つけると、その屋上へ目を凝らした。そこには、宵闇に紛れて手を振るアヤメの姿が。


 「なんだってそんな高い所にいるんだ。何か問題発生した時に、すぐに駆けつけられるのか?」

 九重は諭すように言う。


 『そうなんだけどね、なんだか通信状況がやけに悪いんだ。ジャミングでも食らってるんじゃないかな。それで、電波状況が良い所を探したらこんな高い所になったんだよ』

 「ほう。俺の方は普通に通話できているが」

 『どうもこのビルの一帯にだけ変なジャミングが仕掛けられているみたいだよ。範囲はあんまり広くないから、問題はないと思うけど』

 「分かった。俺はしばらくここで見張って、太田の動きに合わせて行動する。何かあったら連絡する。良いな?」

 『イエス、ボス。

そう言うなり、アヤメは通信を切った。


 「あいつ、飯を食べられなかったのを根に持っているな」

 九重は一人苦笑いをする。同時に、彼の腹も見た目に似つかわしくない可愛らしい音を立てて鳴った。

 「俺も腹減ったなぁ……」

 ぼやきながら目をつむる。そして、すぐさま真剣な表情になったかと思うと、洋館の方を見張り始めた。


 小一時間ほど電燈の陰に隠れて待ち構え続けていると、不意に館の扉が開いた。九重に緊張が走り、意識が覚醒してゆく。

 扉からは、丸々と太った中年男性が、何人ものスーツの男に囲まれながら悠々と出てきた。口には高級そうな葉巻を挟んでいる。傍には灰皿とオイルライターを携えた男が控えていた。


 「あいつが、太田か」


 大河峰からもらった情報よりも、体の幅が広い。絵に描いたような悪役は、絵に描いたような登場の仕方をするものだな、と九重は思った。

 太田は館の前でなにやら談笑している。酔っているのだろうか、随分と大声で話しており、館から離れた広場にまで下卑た会話が響いてくる。どうやら相当に盛り上がっているらしく、動き出す気配がない。


 「ここで襲う訳にもいかんしな……」

 九重はいつでも引き抜けるよう、腰の銃に手を当ててはいるが、なかなかそのチャンスが訪れない。


 しばらく電燈の陰に隠れ続けていたが、不意に広場の入り口から人の気配がしたので、九重はさらに植え込みの中に身を潜めた。植わった草花と肥料を含んだ土の青臭い匂いが充満している。

 植込みの陰からそっと入口の方を覗き込む。広場に新たに入ってきたのは幼い少女だった。


「あんな子供が裏路地を抜けてきただと……?」

 今九重達がいる広場にたどり着くには、彼が抜けてきたような路地裏を通り抜けねばならない。少女が一人でここへやってくるとはなかなか考えられなかった。


 何よりもおかしいのは彼女の格好だ。沢山のフリルで飾られた黒いロリータファッションに全身を包み、人形の様な格好をしている。肩までかかった真紅の髪は燃えるようであった。

 少女は広場の真ん中まで来ると、ぼんやりと噴水を見つめだした。


 さて、こんな時間に変わった見た目の少女がこのような場所にやってくるとはどういうことなのか。もしや春売りか、はたまた薬物で廃人になっているのか――と九重が思案しかけた時、館の方から太田のひときわ大きな歓声が響いた。


 「おお、何だか随分可愛らしいお嬢さんがいるじゃないか!」


 その声に九重は再び館の方に目線を移す。

 すっかり酒で顔を真っ赤にした太田が、おぼつかない千鳥足で他の男たちに別れを告げたかと思うと、噴水の傍まで駆けていった。あとに残された男たちは、呆れた様な、嘲笑うような笑みを浮かべて太田の後姿を見ている。

 太田はだらしない体を弾ませながら、噴水を見つめる少女に近づき、手を取った。荒い息を抑えようともせず、少女の顔をのぞき込む。すっかり髪の薄くなった頭が電燈に照らされ、光を照り返した。


 「お嬢さん。こんな時間に一人でいるのは怖いだろう。おうちはどこかね?おじさんが送ってあげよう」

 「ううん、大丈夫だよ、おじさん」

 「安心しなさい、おじさんはね、東日本の軍隊の偉い人なんだ。ちゃぁんと君を安全な場所に連れていくからね!さ、来なさい!」


 太田はにたりと醜い笑顔を見せ、有無を言わさず少女の腕を引っ張っていく。少女ははじめ、嫌がるように腕を振ったが、太田は無理やりそれを押さえ付けると、引きずるように連れて歩き出した。行先は、九重が抜けてきた路地の方だ。


 「アヤメ、聞こえるか?ターゲットが動き出した。身元不明の少女と一緒だ。これより尾行を開始、状況が出来上がり次第始末する」


 九重はアヤメ宛に通信回線を開き、そう告げた。だが、アヤメからは何の音沙汰もない。代わりに、通信エラーを告げる無機質な機械音声が響く。

 恐らくはアヤメが言っていたジャミングか。九重はさして深くは考えずに通信回線を切った。


 二人が路地に入りかけた頃、九重もまた、植込みからそっと飛び出して彼らの後を付け始めた。植込みや電燈の影を縫うようにして進み、広場を抜けだす。九重が路地に入った時、少し先に進んだ所に二人はいた。

 今この路地で太田を襲えば、あの少女まで巻き込まれるかもしれない。それだけは避けたかった。


「……全く、反吐の出る……」


 九重は、目の前で少女が下卑た欲望に連れ去られようとしている現場を目の当たりにしながら、何もできない自分が歯痒かった。

 円滑な任務の達成のためには、確実性と余波を広げないことが何よりも求められる。彼は、太田が一人になった瞬間を、もっと言えば彼がその醜い欲望を満たそうと一人で街を徘徊し始めた時を狙おうと思っていた。だが、どうにも今は太田の運の良さに軍配が上がっていた。


 しばらく後をつけていると、太田は小さなビルに入っていった。少女も一緒だ。

 二人が入ったのを確認すると、九重はそのビルに駆け寄る。

 3階建てのそのビルには何も表記されていないが、蠱惑的なポージングをした女性をかたどったピンク色の猥雑なネオン看板が点滅している。


 ――やはりホテルか、とため息をついた。


 そのホテルは周りのビルに比べて随分と細く、狭い土地に突き刺さるようにして建っている。客室も数室程度だろうな、と当たりを付けた。


 九重はホテルと隣のビルの間に体を滑り込ませると、ホテルの壁から浮き出ているパイプや排気口を伝って壁をよじ登り始めた。僅かな突起や張りがあるだけだが、彼の指はやすやすとそれを掴んで体を浮かび上がらせていく。

 二階部分までよじ登ると、ホテルの裏側へと移動しはじめる。ホテルの窓の作りから見て、裏側からならば客室を覗けると思ったからだ。

 僅かな出っ張りだけが足場だったが、それを伝い、体を壁に貼り付ける様にして進む。


 壁の角を曲がり、突き出たベランダに飛び移る。

 一瞬空中に浮いた全身は、すぐさま欄干を乗り越えてベランダの中へと体を沈み込ませた。

 這いつくばるような格好で、九重は窓から薄暗い客室を覗いた。その時丁度、客室のドアが開き、横幅の広い男がどかどかと入り込んできた。

 男の傍らには引きずられる様に少女が連れられている。


 「一発目でビンゴだ」


 太田たちがこの部屋に入ってきたのを見据えると、ガラス窓の脇に隠れ、腰の拳銃を抜いた。グリップを握る手に自然と力が入る。再度室内を覗くと、太田が少女をベッドに組み伏せている様子が見えた。太田の巨大な尻が上下左右に揺れ動き、それより向こう側を覆い隠している。それを見て、九重の歯の根が思わず軋む。

 しかし太田と少女がくっついている状態で撃つことは出来ない。九重はひたすら祈るようにチャンスを待ち続けた。


 しばらくベッドの上でもみ合っている二人を見張っていたが、不意に太田が少女から逃げる様に飛び跳ねてよろよろと後ずさりする。窓に遮られて何を言っているか良く分からないが、彼は九重の潜むベランダの窓までやって来た。


 「……?何だかわからんが、やるなら今しかない……」


 千載一遇のチャンスだ。

 九重は構えていた拳銃を太田の頭部へと向け、トリガーに指をかける。

 次の瞬間、破裂音と共に目の前の太田の頭と窓ガラスが砕け散った。同時に、あちこちに頭がい骨や歯の欠片が飛び散り、真っ赤な血で周りを染め上げる。

 

 「……何?」


 九重はまだ銃を撃っていない。

 にもかかわらず、太田の頭は上から半分が吹き飛び、脂ぎった顔は見る影もなく失せていた。脳を失った体は崩れ落ち、壊れたおもちゃの様にかたかたと震えながら床の上で悶えている。

 太田の太い体は、白い絨毯を巻き込みながらぐるぐると床の上を回った。絨毯はあっという間に血で濡れてゆく。見るもおぞましく、そして滑稽な光景だった。


「あー!もう!一撃で殺れてない!」


 酸鼻極まる室内から、不釣り合いな程可愛らしい少女の声が響く。

 かと思うと、重い銃声が鳴り響き、床上を跳ね回る太田の体から大量の血が噴き出す。太田はそれっきり動かなくなった。


「うふふっ、よし、二発目で殺れた!まあ良しとしておきましょう!」


 九重は恐る恐る割れた窓ガラスの陰から部屋を覗き込む。


 血と脳漿と骨片がちりばめられた室内で、ベッドの上に佇む黒いロリータ服の少女が屈託のない笑顔で歓声を上げていた。


 少女はM字状に足を開き、足の上で手を組んでそこに愛らしく小さな顔を乗せている。九重の目には、少女の秘部を隠す白いショーツが映った――のだが。

 彼女の下半身には確かに白いショーツが纏われている。だが、肝心な部分からは何故か青白い硝煙が一筋立ち上っていた。

 少女の下半身に釘付けになった九重は目を疑った。


 ――


 客室内の薄暗い間接照明に照らされ、彼女の股間部から僅かに伸びる銃身が光を跳ね返した。


 「いやいやいや、何でそうなるんだよ、おい……」


 九重は予想を遥かに超えた光景を前にして、そう呟くだけで精一杯だった。

 今、目の前で襲われていた筈の少女は、股間部に銃を仕込んでおり、それで太田を撃ち殺した。

 言葉にするとたったそれだけの事なのだが、九重の頭の中は真っ白になった。


 「……?誰かそこにいるのかしら?ねえ、居たら返事して下さらない?」


 唐突に、ベッドの上で少女は姿勢を変えることなく呼びかける。彼女は、九重の潜むベランダの方を真っ直ぐと見据えていた。

 目の前で起きた出来事に理解が追い付かず茫然としていた九重は、心臓を掴まれた様な感覚と共に現実へ引き戻される。

 嫌な汗がどっと湧き上がると、呼吸は浅く、早くなり、軽く眩暈がしてきた。


 「ねえ、居るんでしょう?男と女の情事を覗こうだなんていう、いやらしいお方が!」


 少女はくすくすと笑いながら、ベランダの方へ声をかけ続ける。そこに誰かいることを、これっぽっちも疑っていないようだった。

 九重は早鐘の様に打ち続ける胸を押さえ、一つ大きく深呼吸をする。そして観念して、ゆっくりと彼女の前へ姿を現した。

 少女は、ベッドの上で熱っぽい紫色の瞳で九重を見つめた。幼い少女であるにもかかわらず、劣情を催しかねない艶やかな流し目である。


 「あら、中々にハードボイルドで素敵なお方。そんな方が覗きだなんて……見かけによらず、歪んでいるのねえ」

 「生憎、俺は覗きをする柄じゃないんだ。好きな女にはまっすぐに告白すると決めている」


 少女は乱れたゴスロリ服をたくし上げ、白い肌を隠した。柔らかな衣擦れの音が、室内に静かに響く。

 「そうなの?じゃあやっぱりいい男なのかしら。……それで覗きが趣味じゃないなら、一体何をしに来たのよ?」


 九重は拳銃をいつでも撃てるように気を張りながら、血まみれで倒れる太田の死体を顎で指した。

 「そいつを始末しに来た」

 「ふーん。でも残念、私の方が先にこの人を頂いちゃった。もっと劣情を刺激して下さる方だったら楽しめたはずなのに、あんまりにもがっつくものだからつい撃っちゃったのよ。まあ、MGに欲情したのが運の尽きね」

 「お前……MGなのか」

 努めて冷静に答える。その答えに、ベッドの上の少女は意外そうに眼を丸めた。


 「驚かないのね。人殺しの機械がこうして普通に会話しているのに」

 「ああ、ちょっと色々あってね」


 会話をしながら、九重はベランダの欄干の方へとゆっくり後ずさりする。額から汗がじわじわと滴り、眉に吸い込まれる。少女の下半身から伸びる銃身が、未だにこちらに向けられていると気付いたからだ。九重はぶら下げていた拳銃を再度構え、ゆっくりと少女の方へと向ける。


 「あらら、気づかれちゃった。安心しなさいな、別に生えてる訳でも入れてる訳でもないの。備え付けてるだけよ?」


 少女は笑いながらショーツの中に手をするすると入れると、銃身を切り詰めた小さなショットガンを取り出して見せ、ベッドの上へ放り投げた。


 「男の人って、油断しているところをぱくっとやっちゃうと可愛らしい反応を見せてくれるのに、惜しいことしちゃったわ」

 「すまんな、すれた男で」

 九重は右手で拳銃を構えながら、左手で欄干を強く握りしめた。額にかいた汗が頬を伝う。その様子を見て、少女は色っぽい笑みを見せる。


 突然、割れた窓から生温い風が流れ込み、少女の真紅の髪を巻き上げた。さながら吹き上がる火炎のようである。風にはためく赤い髪を細く白い指でもてあそびながら、少女は紫色の瞳の奥に不吉な光を湛えた。


 「別にいいのよ。そういう男にも渋い魅力があるわ。むしろ泡沫の一夜を刺激的にしてくれるのはそういう男かもしれない。だからそんな人を求めて今日は出歩いていたの」

 「ガキの癖に、親父好きか?中々いい趣味だと思うぜ」

 「ありがとう。是非とも、今夜あなたと過ごさせていただきたいわ。……私の名前はユリ。


 ベッドの上のMG、ユリはそう言い放つと、突如右手を突き出す。瞬く間に手指がそれぞれ鉛色の銃身に変貌し、黒々とした銃口から無数の弾丸を同時に放った。

 身構えていた九重は、弾丸が彼の体を食い破る直前、間一髪でベランダから飛び降りる。欄干の隙間を通り抜けてきた弾丸が、彼のコートの襟に穴を開けた。

 九重もまた、飛び降りる間際に体を捻り、拳銃をユリに向かって何度も放った。しかし命中したかどうかなど確認する暇はない。


 「悪いが、俺はロリコンじゃないんでね!」


 そう吐き捨てると同時に、彼は地面に転がり落ちる。数メートルほど地面を転がったかと思うと、すぐに立ち上がり怯むことなく路地へと駆け出した。

 ベランダにユリが駆け寄った時には、既に九重はビル群に姿を消した後だった。


「ふーん。スポーツの出来る男ってところも良いわね」


 幼くも妖艶な笑みを浮かべる。

 胸元から流れる血をすくい上げて真っ赤な舌でペロリと舐めとると、ユリもまたベランダから飛び出した。だがその跳躍は九重のそれとは違い、人ならざる勢いと飛距離を見せる。

 金色の月をバックに、ユリは猥雑なネオンに彩られた夜の街へと躍り出た。

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