実習期間中 第1週 3日目
平成○○年 6月6日(水曜日)
実習が始まってから暫く経つと
彼女のひたむきに周りの先生や生徒と向き合って、黙々と教育実習をしている姿や、見た目が少し小柄の華奢な身体に、黒髪ショートヘアの愛らしい顔をして、更に愛嬌と熱意を兼ね備え、いつでも笑顔で人と接する事を心掛けていたからなのだろうか。
それとも教育実習が始まってから、毎日山田先生のクラスで、先生や生徒と一緒に給食を食べて居た事もあってなのか。
学校の雰囲気や様子、生徒や先生との交流も深まり、周りも彼女の居る環境へと徐々に慣れ始めて、打ち解けだしていた。
こうして少しずつ、周りの先生や生徒から受け入れられたようで、生徒の中には、普段『冴香先生』と呼ぶのが、教室内や放課後の廊下ですれ違う際に、親しみからかイントネーションを少し変えた『カワりん』や『サエちゃん』等の愛称で呼ばれて、段々と周りへの親しみを感じながら、少しずつ心の余裕を持って作業や行動ができるようになっていたが
ただしそれでも彼女の内心は、長年の経験からかどうしても心の何処かで、いつも人と接する時には、適度な距離感を保ち、人付き合いには、常に細心の注意を払っていた。
それでも
落ち着いて教育実習の日々を過ごせるようになるり、段々と周りが見えてくるようになると、【ある独りの男子生徒】が気になって目に付くようになっていた。
その子は、山田先生のクラスに居た、【大瀧河 秀夜】という名前の男子生徒で、少し日焼けした肌に、大柄な細身体型、茶色と黒のメッシュにパーマがかった長髪と今時の整った顔立ちをしていたので、見た目から校内でも、一際目立っていた。
【大瀧河君】とは
何度か廊下ですれ違った事があって、普段から校内で生徒や先生とすれ違う時には、いつも彼女から元気よく挨拶をして、大抵は反応があるのだが、彼に限ってはいつも無反応だった。
給食の時も
周りの生徒とは一切話をせず黙々と独り食べ続けて、周りの生徒は、彼の事をあまり気にしていないのか、それともこれが彼らの日常なのだろうか。
そして見かける度に、いつも何故かスケッチブックを持ち歩いて居て、独り不機嫌そうな表情をしながら、誰も寄せ付けないオーラを放っていた。
教育実習の一環として、各クラスの授業風景を見て回る中、山田先生の授業中では真面目に授業を受けているようだったが、その他の先生の授業は、一番後ろの窓側の席で、独りだけ外を『ボーっ』と眺めている事が多かった。
時折何やら机に向かって、【カイテ】いるようだったが
先生方は彼の事を認識しているのか、それとも彼の事を理解しているのか、または彼の事を黙認しているだろうか、特に注意する事も無く、あまり触れる事もなくて、そのままに授業を進めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます