実習期間中 回想 ~パパからお父さん、父親へと~
その一方で
彼女と父親との関係は、彼女が小学校に入学して4~5年が経つ頃には、父親からの連絡が徐々に途絶え始め、2人の関係は疎遠となっていき、会う機会が減り出して
小学校を卒業し、中学生となる頃には、もう既に父親との交流は完全に途絶えて、一切の連絡はなく音信不通となり、会えなくなってしまい
けれど父親は
彼女の為、毎月幾らかのお金を定期的に送金し、残してくれてはいたらしいが
それでも彼女には
お金と同じ位か、それ以上にもっと『残して欲しかったモノ』が沢山あった。
父親の事はずっと
心の深い傷となるような事ではあったけれども
それは
母親を喪ったあの日を境に、父親は変わってしまったから。
あの時から打って変わり
以前にも増して父親は、【何か】から追われる日々となって、いつも忙しそうで
父親もきっと辛かった筈だろうに
当時は
彼女の前で一切の弱音を吐かなかったから
だからこそ
そんな今まで弱音を見せたなかった、父親からの『別離の言葉』に、驚きを隠せずに
衝撃を受けたが、『身を引き裂く様な断腸の思い。の筈だったと。』そう思いつつ、父親も想いは同じ『あの頃はまだ、2人の心は繋がっていた筈と。』信じていたが
きっと
『私だけが』助かってしまったから、『私を庇い』母は居亡くなってしまったから
だからこれは
『私のせいなのだと。』ずっとそう思い続け、『これは仕方がない事なのだと。』
彼女は
ただただ、【目の前にある現実】を受け入れてきた。
元々父親は
普段から生真面目で優しく、責任感の強かった『完璧主義の人』だったから
何でも自分のチカラで乗り越えようとして
仕事に追われて
子育てに追われて
マスコミに追われて
裁判に追われて
全て 時間と根気の必要とされる事ばかりで
【何か】に追われてばかりの、慣れない生活の日々に
みるみると、身も心も衰弱して疲弊していき
『背負い切れない荷物』を少しずつ手放して、一度身軽になってから仕切り直そうとしたのだろうか。
全てを 独りで背負い過ぎていたから、疲れて果ててしまったのだろうが
それでも幼い彼女にとっては
父親とほんの少ししか居られなくても、それでも良いから、そばに居て欲しかった
父親が辛いなら、辛いからこそ、彼女も、そばに居てあげたかったから
「純粋に、ただそばに居たくて、ただそばに居て欲しくて。」それだけだったのに
当時の父親にとっては
自分を保つ為にした、私とまた一緒に暮らす為にした
苦渋の決断を迫られたのだろうけれども
その決断は、私が父親にとって
『負担でしかなかった。という現実を突きつけられた』のだと
後々悟ってからは
それなら
『これは、どうしようもない事だったんだ。』と、自分に言い聞かせて
尚更
現実を受け入れるしかなくなった。
この頃までは
いつも彼女の心の何処かに、【両親への想い】はあったけれど、それでもいつしか、
夢を見つけて勉強漬けの日々を送る内、手元に『形として残る思い出』がないから
モノクロの世界に生きる彼女に残る僅かな、カラフルに彩られた家族の思い出と共に徐々に記憶の片隅へと追いやられ
そして今ではもう、両親の顔も思い出も殆どの事を、思い出せなくなってしまい
大切な思い出を少しずつ忘れながらでも、夢へと向かい前だけを見て生きている。
だけど今でも彼女は
誰かに『ギュッ』と、強く抱きしめられたら
何か大きなモノに、優しく包まれるような安心感があり、懐かしい気持ちにもなり
安らぎと人の温もりと同時に、何だかさみしさも感じられた。
何故なのだろうか。
今の彼女ではもう、昔の事を日常的に思い出す事は、殆どなくなっていたけれど
それでも何となく、『誰かに抱きしめられるのは好きだ』という確かな感情は残り
たとえ
抱きしめられた時の記憶や思い出はなくとも、【何か】を身体が感覚的に覚えているのだろう。
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