Chapter 2:Part 05 統哉vsベリアル
「一体どこにいるんだよ、あの馬鹿!」
毒づきつつも、統哉は住宅街のあちこちを走り回ってルーシーを探していた。だが、いっこうに見つかる気配がない。それになんだか、夜中だというのに真夏日のように辺りが暑くてたまらない。いくら地球温暖化が進んでいるとはいえ、いくらなんでもこれはおかしい。
「……まさか、ルーシーみたいな奴がこの辺りにいるのか……?」
統哉がそう呟いた時だった。
(……哉……統哉!)
「わあっ!?」
突然頭の中に響いたルーシーの声に統哉は飛び上がらんばかりに驚き、その場に立ち止まった。
「いきなり脅かすなよ! それに、どうやって俺に話しかけてるんだよ!?」
すると再び頭の中にルーシーの声が響いた。
(思念だよ。いわゆるテレパスってやつ。私と契約を交わした者はこうして思念を通じて会話をする事ができる。便利なものなのに、それをすっかり忘れていた。やり方は私の事をイメージして、念じればいいだけさ)
「そんな便利なもの忘れるなよ!」
思わず声に出してツッコんでしまう。そして、気を取り直してルーシーの事をイメージしながら念じてみる。
(…………ルーシー、聞こえるか!? どこにいる!? これでいいのか!?)
ややあって、答えが返ってきた。
(うん、聞こえる。でも位置はわからない……奴が張った<結界>のせいで、私と君との間にあるリンクにジャミングがかかっているようだ。それがなければ位置はすぐに掴めるが……)
(一体何があった!?)
尋ねながら、再び走り出す。
(私と同じ堕天使に襲われ、大きなダメージを負ってしまった。そのせいで身動きがとれないときた)
(怪我をしている!? 大丈夫か!? 誰にやられたんだ!?)
(怪我はそのうち治るから心配しなさんな。それよりも、その堕天使がそっちに向かっている! そいつの名はベリアル! 天界において私の次に創造された炎の天使だ! 堕天した後はソロモン七二柱が一柱、六八位に位置する者になった! 弁舌に長け、戦闘能力も私に匹敵するほどだ!)
(そんなに強いのか!? そんな奴がどうして俺の所に!?)
(私とあいつは天界にいた頃から何かとぶつかり合う事が多くてな。君がこっちに近づいてきている事と、私と君の間に契約が結ばれている事を知るや否や、そっちに向かった。おそらく君を殺してから、私にトドメを刺すつもりなのだろう)
(すっげえ捻くれ者だなそいつ!)
(奴の攻撃は炎を用いたものが主流で、その戦いぶりから『あかいあくま』、『ヒートの女』、『ファイアーガール』、他にも……)
(あーもういいわかった! とにかく熱い奴なんだな!)
(どちらかと言うとあいつは熱いとは言い難いが……まあいいや。奴の格好は見ればすぐにわかる! 身長一四八センチ、髪は紅、筋肉ロリロリ、チビっ娘の変態だ!)
(後半意味わかんねーよ! 何だよ、筋肉ロリロリチビっ娘の変態って!?)
思念にもかかわらず、全力でツッコむ。
(あと、ゴシック調のドレスに身を包んでいて、ドレスも瞳も、とにかく真紅まみれだ! いいか! 絶対に戦おうなんて考えるな! 逃げるんだ! 最初に言っておく! あいつは、かーなーり、強い! 仮に私と君のレベルが10ぐらいだとすると、ベリアルのレベルは3000くらいだ! だからとにかく逃げろ!)
(勝てるわきゃねえだろぉっ!)
あまりにも力量差が大きすぎる。負けイベントか何かだろうか。もっとも、負ければ死あるのみだが。
(なんとかしてそっちへ向かう! それまでなんとか逃げ延びてくれ!)
(……なぁ、ルーシー。それ、無理みたいだ)
統哉は立ち止まり、呆然と呟いた。
(はい? どういう事だ?)
(……だって、そいつが今、目の前に立ってるんだけど)
統哉の視線の先、道のど真ん中に、あかいあくま――ベリアルが立っていた。
「こんばんは」
ベリアルが優雅に一礼する。
(統哉!? どうした統哉!? 応答しろ統哉!)
ルーシーが送ってくる思念など、気にしている場合ではなかった。気を抜けば、やられる。そんな雰囲気を全身から漂わせていた。
「……お前が、ベリアルだな」
警戒しながら、統哉がベリアルに尋ねる。無意識のうちに<輝石>を呼び出し、ルシフェリオンに変換、即座に構える。
「知っているなら話は早いな。だが覚えてくれなくても構わないよ。どうせお前は今から死ぬんだからな」
「ふん。まだ俺は死ぬわけにはいかないんだよ。あいつの力を取り戻すために俺はあいつと契約したんだからな」
「無駄な事を。しかし、あのルシフェルがまた<天士>を作るとは、な……」
「何だって?」
「何でもないさ……さて、お前には死んでもらおうか」
「ぬかせ。自分勝手な理由で殺されてたまるかよ! それに、俺はまだ、死ぬわけにはいかないって言ってるだろ!」
言い放ち、一気に間合いを詰めにかかる。走りつつ、牽制にスフィアを数発放つ。
ベリアルはその場を動かずに、のらりくらりとスフィアをかわす。スフィアは全てベリアルに命中する紙一重のところでかわされてしまった。
(あんな動きでかわせるのか!?)
間合いを詰めながら統哉は心の中で舌打ちする。高速で放たれた光球なのに、あんなやる気のない動きでかわされるのは納得がいかないが、牽制には十分だ。
一気に踏み込み、ルシフェリオンの一閃を放つ。
ベリアルはそれをドレスの袖で受け止める。まるで、薄い金属の板にぶつけたような手応えだ。このドレスも、ルーシーのそれと同じく鎧の役割を果たしているらしい。
「その程度か? 欠伸が出るな」
欠伸を隠そうともせず、ベリアルが無気力に呟く。統哉がさらにもう片方のルシフェリオンを振るうと、ベリアルは高く跳躍し、両手を突き出した。次の瞬間、ベリアルの指先からゴルフボール大の火球がマシンガンのような速度で発射された。
「……くっ!」
横に走ってかわしていくが、火球はどこまでも統哉を追ってくる。回避は間に合わない。そう考えた統哉は立ち止まり、ルシフェリオンを体の前で回転させた。風車のように振るわれた刃が火球を散らしていく。
「……へえ」
表情こそ変わらないものの、ベリアルが驚いたような口調で呟く。
「面白い。ルシフェルよりも楽しませてくれるじゃないか、坊や」
地面に降り立ったベリアルが楽しそうに微笑む。
「坊やって言われる歳じゃない!」
言い返しつつ、統哉は追撃のために走り出す。
「……ならば、お次はこれだ」
そう言って、ベリアルがドレスに包まれた右腕をすっと統哉に向ける。
次の瞬間、右手の爪が赤く輝き、高速で伸びながらこちらに向かってくるではないか。
「うわっ!?」
追撃をやめ、すかさず横に飛んで回避する統哉。それをみたベリアルが口元を不敵に歪める。
「馬鹿め」
すると、一直線に伸びていた爪が突然曲がり、統哉にめがけて突き進んでくる。これには統哉も完全に不意を突かれ、回避するどころではなかった。
爪が統哉に巻き付き、その体を締め上げる。さらに、爪が高熱に熱せられているため、熱によるダメージまで追加されていく。まるで、高熱に熱せられた鎖でがんじ絡めにされているような感覚だった。
「それ、おまけだ」
ベリアルが爪を統哉に巻き付けたまま、中空を滑空しながら高速で接近してくる。接近しつつ左手の爪を伸ばして統哉に巻き付け、さらにスピードを増す。そして、瞬時に爪の拘束を解きつつ、突っ込んでくる勢いと全体重を乗せた強烈な膝蹴りを統哉に叩き込んだ。
「――がああっ!」
高熱の戒めから解放されたと思いきや、弾丸のような強烈な膝蹴りを鳩尾にもらい、統哉の体がアスファルトの地面をごろごろと転がる。
「どうだ坊や? かつてオレンジの化け物を仕留めた天界式CQCの味は?」
地面に着地したベリアルが不敵に笑う。統哉はなんとか立ち上がり、ダメージを確認する。
全身への火傷。鳩尾への鈍痛。おそらく時間をおけば、<天士>の自己治癒力で回復できるだろう。統哉はそう判断した。
「さぁて、これからどうする? 頼むから退屈させるような真似はしないでほしいな」
統哉はベリアルを真正面から見据える。
「……こういう状況の時、どうすればいいか。それは――」
そして、ベリアルに一瞬で背を向け――
「逃げるんだよォッ!」
叫びつつ、統哉は高く飛び上がり、住宅の屋根を伝って逃げ出した。
「……なるほど。劣勢になったら迷わず逃げる事を選ぶか。いい判断だ。そういえばルシフェルもこういう時は迷わず逃げていたな」
逃げたいのならば、好きにすればいい。
「でも、絶対に逃がさない」
そう呟き、ベリアルは舌なめずりをした。
「はあ……はあ……」
その頃、ルーシーは荒い息をつきながら、統哉の後を追いかけていた。とはいっても、受けたダメージはまだ回復しておらず、走る事もままならない状態だった。
どうやら統哉は住宅外から離れた場所に逃げたようだ。そして、ベリアルも彼を追っていったらしい。
(自分にはいつでもトドメを刺せるという事か。まったく、嘗められたものだ……)
自嘲気味に笑いつつ、ルーシーは二人の去った方向へと必死に足を進めた。
「はあっ……はあっ……」
肩で息をしながら、統哉は住宅街からやや離れたビル街の一角にある、どこかのビルの屋上で傷の回復を待っていた。
不利になったから逃げたというのもあるが、住宅街のような狭くて障害物の多い場所では立ち回りも困難だったというところが大きい。それを見越した上で、統哉はこの場所を目指して逃げてきたのだ。ただ、ルーシーとの距離が離れてしまったのは痛いところではあるが。
ダメージはほとんど回復した。火傷はほぼ治癒し、腹に受けた膝蹴りのダメージもない。正直言って、膝蹴りのダメージの方が大きかった。いい蹴りしてるぜ、全く。
「……早くルーシーの所へ行かないと!」
そう言って統哉が背後を振り返った時だった。
「――え?」
そこにいる者が何なのか、それについて統哉の脳は一瞬思考を拒否した。
「ベリアルに鬼ごっこを、それも鬼役をさせるとはな。やれやれ、おかげで疲れてしまったよ」
疲れていると言うわりには、全くと言っていいほど疲れていない口調で、真紅の少女が、ベリアルが、統哉の背後に立っていた。
「さて、鬼ごっこの次は火遊びといこうか? ベリアルの炎に、どこまで耐えられるかな?」
不敵な笑みを浮かべたベリアルが、その背から炎の翼を生やし、全身から熱風を放つ。
叩きつけられる熱風を腕で防ぎ、統哉は改めてルシフェリオンを構えた。
勢いよく地面を蹴って一気に間合いを詰める。
「うおおおっ!」
嵐のような勢いで統哉は斬撃を繰り出す。だが、斬撃のラッシュもベリアルは闘牛士のようにかわし、受け流していく。
「ちっ……!」
統哉は舌打ちしながら鋭い突きを放つ。それをベリアルはバックステップで悠々とかわす。
「そろそろ本気を見せてもらいたいな。出し惜しみをすれば、坊やが死ぬ事になるぞ? まあ本気を出そうが出すまいが、死ぬ事に変わりはないけどな。それとも、それが坊やの全力なのかな?」
余裕の表情で手招きしてくるベリアル。その人を思いきり馬鹿にした言動に、思わず統哉のルシフェリオンを握る手に力がこもる。
「坊やじゃないって言ってるだろ……いいさ、やってやる……!」
統哉は呟き、自分の力を最大限にまで引き出す。こうなれば、次で決めるしかない。
「ほう? ようやく本気になってくれたか。ではその力を見せてもらおうか」
ベリアルは口元を歪め、無防備な姿勢で立っている。
(その余裕、ぶった斬ってやるよ!)
統哉はルシフェリオンを連結させ、刀身に力を集中させる。高まった力が巨大な光の刃を形成していく。そして、一気に地面を蹴ってベリアルに肉薄する。
「グランドクロスッ!」
瞬時に振り抜かれた光の刃が、ベリアルを十文字に斬り裂き、統哉はそのまま一気に背後まで駆け抜ける。直後、背後で大きな爆発。立ち上る爆煙。
「やった……のか?」
爆煙が立ち上る背後を見ながら統哉は呟いた。確かに斬り裂いた手応えはあった。堕天使とはいえ、人の姿をしたものを斬るのは嫌な感覚だった。だが、やらなければ、やられていたのは間違いなく自分だった。これは仕方のない事だったんだと、統哉は自分に言い聞かせていた。
すると、風に乗った声が聞こえてきた。
「……いい攻撃だな。感動的だな」
その声に、統哉はゾッとした。
いや、そんなはずはない。自分はあいつを確かに斬ったはずだ。無事でいるはずがない!
次の瞬間、爆煙が吹き散らされた。
「――だが『無価値』だ」
そこには、平然とした顔で佇むベリアルの姿があった。
見ると、ベリアルの前方に、炎でできた障壁と呼べばいいのか――が展開されている
「そんなもので、ベリアルの<
「がっかりだ。だが、ベリアルを久方ぶりに、ちょっとは楽しませてくれた事は評価しよう」
ベリアルは障壁を解除し、両手を掲げる。
「……そこで、ベリアルも坊やに敬意を表し、大技で幕を引くとしよう」
直後、ベリアルの双眸が閉じられ、形のいい唇が開き、そこから常人には聞き取る事ができない程の速さで韻律が紡ぎ出されていく。
詠唱が進むにつれて、周囲の空気がビリビリと振動していくのを統哉は感じた。
(何か……やばい!)
危険を感じた統哉がその場から離れようとするのと、ベリアルが目をカッと見開いたのは同時だった。
「――――<
ベリアルが詠唱を完了すると同時に、統哉の周囲の大気が大きく振動し――大きな爆発が起こった。
爆発は五つの火球へと分裂し、その後、再び元の場所へと収束し、ぶつかり合い、その衝撃でさらなる大爆発を引き起こした。その様はまさに花火のようであった。
そして、統哉の体は巨大な爆炎に包まれた。
「……統哉!?」
二人を追って住宅街を抜けたルーシーは、統哉が危険な状態に追い込まれた事を直感的に悟った。
何が起きたのかはわからないが、とてつもなく危険な状況であるという事はわかる。
怪我は大分回復してきた。右足首の再生もかなり進んでいる。満足とはいえないが、走るのに支障はなさそうだ。
ルーシーは一つ頷き、統哉との間に結ばれている契約のリンクを頼りに、ビル街を走り出した。
急がなければ。足の痛みなんか知った事か。
「坊やにしては、なかなかよく頑張ったじゃないか」
風で乱れた前髪を直しながら、ベリアルは冷然と言い放った。
ベリアルの視線の先では、腕や足の一部が黒焦げになり、呻き声を上げるのもやっとという状態の統哉が倒れ伏していた。
ルシフェリオンはそれぞれ離れたコンクリートに突き刺さっている。これは、せめてもの悪あがきとばかりに、ベリアルに斬りつけようとした際、彼女に弾き飛ばされてしまったものだ。
もう、自分には反撃の手が残っていない。統哉はそれを認めざるをえなかった。
「さて、最期に何か言い残す事はあるか? ベリアルは優しいからな。せめてそれだけは聞いておいてやる」
ベリアルが腰に手を当て、偉そうに鼻を鳴らす。
「……か……そうな……だよな」
統哉は蚊の鳴くような声で、細々と何かを呟いた。
「なんだ? もう少しはっきり喋れ」
ベリアルが倒れている統哉に歩み寄り、顔の側まで耳を近づけた。
すると、統哉は力を振り絞り、精一杯の笑顔をベリアルに向けて、宣言した。
「……お前なんだか、『チョロイン』って言われそうな顔だよな(笑)」
深い沈黙が場を支配した。そして――
「……なんっ……でそこまで! 的確に人を傷つける台詞が言えるんだよお前はあああああっ!」
ベリアルの表情が激怒のそれに変わった。背中の炎の翼もそれに呼応して激しく燃え上がる。
次の瞬間、統哉の体が引き起こされ、小柄な体には似つかわしくないほどの力で持ち上げられる。そして、何度も何度も、炎を宿した拳が全身に叩き込まれていく。
拳が打ちつけられる度に、その衝撃で統哉の体が激しく揺さぶられる。
(あちゃあ……火に油を注ぐどころか、ガソリンと純粋酸素をぶちまけちまった……)
殴られながら、統哉は他人事のように考えていた。いよいよ自分の命もここまでらしい。
「遺言がまさかの罵詈雑言だと!? それも、言うに事欠いてチョロインだと!? そこはせめてチビとか言うところじゃないのか!? なんという屈辱! 万死に値する!」
「……チビだって事、やっぱり気にしていたんじゃないか」
統哉が思わず呟く。それを聞いたベリアルはギリッと歯ぎしりをして統哉の横っ面を殴りつけた。
「ベリアルの怒りが有頂天になった……もうお前、泣いて詫びても絶対に許さないからな……」
そう言ってベリアルは右手に火炎のエネルギーを一気に溜め始めた。そして、限界まで高めた炎を凝縮・圧縮した上で右手に宿し、目一杯後ろに構える。
「煉獄の底でベリアルに詫び続けているがいい! ソロモン流・天界式CQC奥義! <
叫ぶと同時に、ベリアルは統哉の胸めがけて右手を叩きつけた。
すると、手を通して限界まで高まった炎は統哉の内部で急激に密度を高め、凄まじい衝撃が全身を貫き、内部から灼き尽くされていくのがわかった。それはまるで、電子レンジにかけられたような感覚だった。
やがて、ベリアルが手を離した。そして、ボロ雑巾のようになった統哉の体が地面にドサリと倒れ伏した。
最初にルーシーと出会った時とは比べものにならないほどのダメージが統哉の全身を苛んでいる。
それでも懸命に、統哉の心臓は動いていた。か弱い鼓動だったが、確かに動いている。だが、それも長くは続かないだろう。統哉はそれを他人事のように感じていた。
「――終わりだな。さて、あとはルシフェルをここまで引きずってきて、絶望を与えた上で永きに渡る因縁にピリオドを打たせてもらおう」
最早トドメを刺す必要すらないと判断したのか、ベリアルは踵を返し、去っていく。
ベリアルが一歩、また一歩と遠ざかるにつれ、統哉の鼓動は少しずつ弱まっていった。もう、指一本動かす力さえ、統哉には残っていなかった。
生きたいと望んだのに。その願いをルーシーに叶えてもらったのに。自分はルーシーに何もしてやれないまま、ここで終わるのか。
「……ルー、シー……」
その言葉を最後に、統哉の心臓の鼓動は、止まった。
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