第11話 温泉と教育的指導

 他の集落にバレないよう、山道を通ってイカホ村に到着。

 道案内にはサクラが非常に役に立ってくれた。

 さすが山賊の娘なだけあって、健脚だし山道に詳しい……ただ、このルートは盗賊団がイカホ村襲撃を計画して調べておいたモノだとは……黙っておこう。


「旦那様のお役に立てて嬉しいです!」


 日焼けした浅黒い顔が、白い歯を見せながらはにかむ表情が可愛らしい。

 しかしどうだろう、父親が死んだばかりだというのにこの明るさ……と思って、悲しくないのか聞いてみたら……。


「え? だってサクラは生きてますよ? 死んだのはお父です。

 育ててもらった恩? 恩は命を助けてもらった人に感じるものでしょ? だからサクラの恩人は旦那様だけです。

 おやこのじょう? 見たことないけど美味しいんですか?」


 駄目だ……この子に一般常識を教え込むのは一筋縄じゃいかない。

 あの時見捨てれば良かっただろうか……? いや、そんな事は無いはずだ。


 サクラはウンディーネと面識が有った。

 モトコさんは、幼い頃のサクラを診てあげた事が何度か有るそうだ。

 故にモトコさんも恩人に入るらしい。


――「お前らは生きててもろくな事しないんだからさっさと死にな!

 でも子供は別さ、大人になったら真っ当に生きるかもしれないからね。

 だけど盗賊になんかなったら毒飲ませるよ!!」――


 集落を訪れる度に、そんな事を言っていたそうだ。

 いかにも師匠モトコさんらしい物言いが、可笑しくも有り嬉しくも有る。


 そうやって徒歩の割に、意外と早くイカホ村に到着した。

 村民の喜びようは大変なもので、特にオーサワ氏の奥さんは、喜びと安堵でぶっ倒れた程だ。

 オーサワ氏といえば、未だまともに歩けないでいた。

 この世界のサスペンションもショックアブソーバーも無い荷馬車の上で、半日以上ぶっ続けで石だらけの街道を運ばれたのだから、無理も無いか。

 ヘロヘロなのは、ウンディーネも同様だった。

 ちょっと回復しただけなのに、最後までオーサワ氏をおぶって険しい山を登ったのだ。

 手伝おうとしても頑なに拒むので、そのまま任せておいたんだが……今後は少し考えよう……帰りはサクラも居るし、俺も歩くか。


 さて、伊香保といえばやはり温泉だ。

 オーサワ氏がこの場所を訪れたのも、どうせ留まるなら温泉地を巡ろうと思っての事だそうだ。

 しかし、着いてみたらただの硫黄臭い寂れた寒村。

 元々大学では地質学を専攻していたそうで、前の世界でも温泉巡りが趣味だった。

 なので彼の場合、偶然温泉を掘り当てたのではなく、どこに良い温泉が湧くか知っていたのでさしたる苦労も無かったそうだ。

 後は、村人に温泉の効能や利用価値を説き、協力を得た後本格的な温泉町を作り上げた。

 

「ゴンゾーさんの居る山梨だって、石和に温泉が出るだろうが。

 なんでそこにしなかったの? 二人でやればもっと簡単だったでしょ?」

「いや、石和の温泉は既にあったんです。しかも貴族の御用達になっちゃてて、平民は温泉のお湯を汲んだだけで厳しい罰を受けるんですよ。

 開かれたのは伊香保のほうがずっと古いんですけどね、魔王軍が攻めてきたときに一度根こそぎ破壊されて、それから最近まで誰も住んでいない場所だったそうです。

 武田勝頼が居なかったんだから、ここに街が開かれなかったんでしょう」


 まず改めて互いに自己紹介し、二人で露天風呂に浸かって疲れを取る。

 彼が何よりこだわった作りの露天風呂は、それは見事な出来栄えだ、しかも湯加減は最高だし、今は俺達二人の貸切状態だ。


「それにしても驚きました、不破さんって尋常じゃない強さでしたよ。

 この世界で、貴族は特権階級として恐れられているだけじゃなくて、本当に怖いのはその戦闘力なんです。

 その昔日本の侍達が、手も足も出ない強さであっさり軍門に下るしかなかったとか……」


 そうだ、確かに最初に倒した騎士は、間違いなく強かった……はずだ。

 サクラの親父やその手下達は、多分それなりに強い。

 あいつの話じゃ盗賊たちが一人前と認められるには、ミノタウロスを単独で斃さなきゃならんらしい。

 あそこで殺された連中は、間違いなくその一人前だったそうだ。

 

――「サクラも1人で『熊牛ミノタウロス』やっつけたんですよ! だからサクラも一人前なんです!」――


 なんかライオン斃して一人前の戦士とかいう部族が居たような……てか、あの小さな体でどうやって斃したんだか。


「でも俺の強さ……つっても、半分インチキですからね。それについては今度ゆっくり説明しますよ。

 それよりオーサワさんの方が年上なんだから、俺に敬語はやめてくださいよ」

「いや、でも命の恩人だし……それに君は、なんとなく貫禄というか器というか……とにかく僕なんかは足元にも及ばない何か持ってる気がするんだよなぁ……」


 押し問答しても仕方ない。

 それでも俺がむず痒いので「君」付けで呼んでくれることだけは了承してもらった。


「それにしても……良い湯ですね~……」

「本当、作った甲斐が有ったよ……あちこちの痛みもかなりほぐれたし……」

「体温を強制的に上昇させることにより、回復機能が加速いたしました。これは新しい発見です、主様」


 俺達は飛び上がって驚いた!

 いつの間にかウンディーネが隣で湯に浸かっていやがった、女湯に置いてきたはずなのに、全く気配すら感じなかった。


「おおお、お前なあ! 何男湯に入ってきてるんだ!? びっくりしてオーサワさん溺れるところだったじゃないか!」

「理解不能。わたくしは別行動の命令が無い限り、常に主様の半径5メートル以内に居たはずです、お忘れでしょうか?」


 さらっと返しやがる。

 俺とオーサワさんと、こいつとハルナとサクラ……5人で温泉に通された。

 『覗かないでよね! バーカ!』というハルナはどうでもいいが『旦那様ぁ、寂しいですからいっしょに入りましょうよお……』と縋り付くサクラに向かい『だーめ、お前らはそっち!』と三人に向かって言った……つもりだ……女湯に入れと命令すればよかったのか。


「その中にわたくしが数えられていたとは考えておりません。向こう側からは遮蔽物も有り、いざという時駆けつけるには不向きです。

 それに、わたくしは最初からお二人に同行しておりましたが?」


 え?……。

 どうやら俺達が気づかなかっただけで、脱衣所でも一緒に居たらしい。


「じゃ、じゃあお前! 俺達が裸になってるときその後ろで!?」


 すると彼女はいきなり立ち上がった!! 俺は慌ててオーサワ氏の目を覆ったが……。


「ご安心ください、着ています」


 ずぶ濡れになったチューブトップとタイトスカートを指さして、誇らしげなウンちゃん……って、お前どこの芸人だ? つーか服着て風呂に入るなよ!!

 

 そう心で突っ込むが、それに対して無反応な彼女。


「村人が広場に集合しました。料理・酒類の匂いを感知、宴席の用意が整ったようです」


 彼女はそう言うと風呂から上がる。

 俺達も後に続こうとしたら、ウンディーネの隠された機能を見た!

 いきなり彼女の体、胸と尻の辺りから物凄い蒸気が発生している。

 そして見る見るうちに、濡れた衣服が完全に乾いていた……何その機能? ずるくないか!


 宴席は村の中央にある広場で行われる。

 村全体でオーサワ氏の生還を祝うのだから、入りきれる施設が無いからだ。

 俺も上座に案内され、目の前に料理が運ばれてきた。

 根菜の煮物に魚、これはヤマメかイワナかな? その塩焼きと、鳥肉の照り焼きみたいなやつ……どれも日本ぽくて美味そうだ。

 そして俺の目の前に、立派な朱塗りの大杯が据えられて、村長自らが並々と酒を注いでくれた。

 多分万国共通だと思いそれを一気に飲み干すと、やはり周囲から拍手と歓声が沸き起こる、それに旨い酒だ。

 ふと見ると、広場の中央に藁や薪が積まれており、真ん中に棒が突っ立ていた。

 そして松明を持った男が二人現れると、村人達が歓声を上げる。

 何か余興が始まるのかとわくわくしていたら、猿ぐつわを噛まされ荒縄で縛られたサクラが数人の男に担がれてやってきた。

 どうやら今夜のメインディッシュはサクラの丸焼きだ……ん?


「おおい! ちょっと待てー!!」


 俺は慌てて静止する! どこの食人族だよコイツら!!


「不破ー!! なんとかしてよ! みんなこの子は不破の連れだって言っても聞いてくれないのー!!」


 これまた二人がかりで両脇を抑えられたハルナの姿!

 浴衣がはだけないかとちょっとだけ期待したが、それどころじゃない!


「おい、村長さん! こりゃ一体どういう事だ!?」


 いい気分だったのに、すっかり酔が覚めた俺は、村長の首根っこを引っ掴んで声を荒げた。


「お、お恐れながらフワ様、確かに貴方さまはオーサワ先生を助けていただいた大恩人です。

 しかしあの娘、あれは近在の盗賊頭センジの娘です。

 この村は何度もセンジには散々な目に合わされました、命を落とした者もおります。

 いくらフワ様の連れとはいえ、度重なる恨み……見逃すわけにはいきません!!」


 村長は真剣な眼差しで訴える。

 言わんとする事は、まあ……わからんでも無い……しかし、しかしだ――!


「それはサクラの親父だろう? そいつは昨日貴族に首を跳ねられ死んだ。

 それともあの子がこの村の者を殺したのか? 家族をサクラに殺された者が居るのか!?」


 村長は首を横に振る。

 そりゃそうだ、サクラは昨日始めて襲撃に参加したと言っていた、ましてや人殺しは未経験なんだ、あの子に罪は無い。

 しかし村長と村人の反応は違うものだった。


「それでもあれは盗賊の娘です。盗賊の子は盗賊、いずれ人の命も奪います!」

「そうだそうだ! それにコイツは女だ! そのうち子供を産んだらその子も盗賊になる! 今のうちに殺すべきだ!!」


 …………子供の頃を思い出した。


 俺の両親は、俺が幼いときに交通事故で死んだ。

 その事は良い、自損事故だったそうだし誰も恨んじゃいない……だが、周囲の反応は違った。

 俺は全く知らないが、親父は若い時には名の知れたワルだったらしい。

 爺さんもずいぶん手を焼いていたと聞いた。

 しかし、遺された俺には無関係だと思っていた……だが、違った。

 ――「あいつのガキだ……いずれは」――「やっぱり親がそうだと子供も……」――

 どこに居てもそういう目で見られ、陰口を叩かれる日々……それが辛かった……幼い頃は、友達も出来なかった……だから余計に腹が立つ、ムカつく! 抑えきれない!!


「をああああ!!!」


 気が付くと俺は、村長を投げ飛ばしていた。

 ヤバイ、自分で自分が抑えられそうに無い……!

『ウンディーネ!』

 俺は念話で彼女を呼ぶ。

『はい、主様。気を確かにお持ちください』

『わかってる。だがもしもの時は、全力で俺を止めろ! 命令だ』

『……かしこまりました』


 これで万が一にも俺が「村人を皆殺し」にすることは無いだろう。

 そして松明を持った男達に向かい言った。


「あい、あんたら……その松明しっかり持ってるか火を消したほうが良いぜ。

 そこの薪に少しでも火が着いたら……お前らの首を引き千切る」


 その一言で、周囲は静寂に包まれる……そして次に、担ぎあげられたサクラへと向かって一歩々々近づいた。


「サクラ……怖かっただろう、もう大丈夫だ。お前は悪くない、まだ何もしてないんだからな。

 もしお前が悪いと言って縄をほどかない奴が居たら……そいつのはらわたを引きずり出してやるからな!」


 男たちは慌ててサクラを下ろし、縄を解いて開放した。

 松明を持った二人は、大急ぎで小便をかけて火を消している。


「ハルナ、サクラを助けようとしてくれたんだな、ありがとうな」

「な、何よ、当たり前でしょ! 不破らしく無いこと言わないでよ気持ち悪い」


 彼女を抑えていた二人も、真っ青な表情で手を離す。

 俺の「気」も落ち着いてきたところで、戒めを解かれたサクラが駆け寄って抱きつき、そして泣いていた。


「なあ……あんた達、モトコ先生には世話になったんだろう? この子、サクラもそうなんだぜ?

 先生はな、盗賊が大嫌いだったんだ……でもさ、子供に罪は無い、どんな大人になるかは誰にも分からない。だから尊いんだ……って言っていたんだ。

 だから俺は、この子を真っ当な道に進ませるために連れて来たんだ……それを許せないって言うなら言うが良い……」


 村人には、まだ燻っている者が居る様子だ。

 しかし、ウンディーネとオーサワ氏が後押しをしてくれた。


「我が主様は、もし自分が暴れ出した時にはわたくしに静止するよう命じられました。

 しかしながら、今の主様はわたくしの手に余る強さです。

 本気で暴れたら、取抑えるまでにこの村の約半数が犠牲となるでしょう」

「そ、そうです、僕もこの目で見ました。不破くんはたった一人で4人の騎士を斃しました、それも無傷のまま……それにウンディーネさんが嘘を吐けないのは皆さんしってるでしょう?

 それに僕も不破君の意見に賛成です。

 僕の息子が同じ事を言われたりしたら……堪えられません」


 二人の言葉は何より効果が有ったようだ。

 皆うつむいて、黙って席に戻ってくれた。

 俺も自分の席に戻り、サクラを膝の上に乗せる。

 彼女は未だ怯えていたが、美味そうな料理を目の前にすると、腹の虫が黙ってはいなかった。

 

「いいから食べな、もう大丈夫だから」


 そう優しく言うと、やっと安心したのか食欲に勝てなかったのか、物凄い勢いで料理をがっつき始める。


「じゃあ仕切り直そう。皆さん約束は覚えていますね? 明日から暫くの間、オーサワさんにはカイ村に身を隠してもらいます。

 これは貴族どもに気付かれたら、この村全員が皆殺しの目に会うかもしれないからです」


 オーサワ氏は面食らっていたが、すぐに納得してくれた。

 あそこには既知のゴンゾーさんも居るし、頼りになる護衛も居る。

 気の毒だけど、奥さんと子供には暫くこの村に留まってもらうよう話してある。

 これも貴族の目をごまかすためだ。

 オーサワさんは寂しそうだが、家族の安全には代えられないと理解してくれた。


 カイ村までは、ハルナに同行を頼んだ。

 事の次第を説明してもらうためなのだが、初めてゴンゾーさんの家を訪ねるということで、喜々として引き受けてくれた。

 あそこに居る三匹の「息子」の事は、もちろん伏せている……むふふ。


 今夜はオーサワ家にお世話になる事になった。

 村長が自宅に招待してくれたのだが、サクラが怯えているためだ。

 ハルナまで着いて来て申し訳ないのだが――。


「あたしはオーサワさんの奥さんとは友達なの! あんたがついでなんだから、大きな顔しないでよね!」


 だってさ……カイ村に着いたらまたしょんべん漏らすが良い!


 オーサワ氏の家は、結構な広さで客間も有り、何より凄いのは彼の工房だ。


「オーサワさん、これは?」

「はは、お恥ずかしい……試作中の蒸気タービンです。これと減速ギアを組み合わせて、動力を取ろうと思ってます。

 ここは川の流水より蒸気の方が多いんで、粉挽きや温泉の組み上げには最適なんです」


 さすがインテリは違う、俺は簡単の声を禁じ得ない。

 そこで、彼の知識を見込んで二つほど頼みごとをした。

 そのうち一つに関しては難色を示したが「不破君なら大丈夫でしょう」と承諾してくれたのでありがたい。


 その傍らで、ウンディーネが色々と物色していたが、何かがっかりしたように肩を落としている。

 多分パチンコ玉でも探していたのだろう。


「でも本当に驚きました、モトコさんが亡くなったなんて……本当にあの方にはお世話になったんで残念です」


 彼もやはり、この世界に来て一番初めに世話になったのはモトコさんだそうだ。

 因みにこの世界に来た時は、鉱物調査で山に入っていた時らしい……そういやハルナはどうやって来たのか聞いてないな、どうでも良いけど。


 さて……そろそろ休ませてもらおう。


 俺達のために、奥さんは二つ部屋を用意してくれた。

 女どもは、ハルナが使っていた部屋だ。

 ウンディーネはごねたけど、万一村の者がサクラを襲わないとも限らないので、一緒に居るよう命じた。

 それに、彼女も風呂で疲れが取れるのなら睡眠も必要なのかもしれない……そういえばウンディーネが眠っているところを見たこと無いな、そもそも食事もいらないのに寝るのか?


 まあそれは置いといてだ。

 寝室に案内されて、布団の前に座っているのだが……どうにも怪しい。


 久しぶりに布団で眠れるのはありがたい事だ。

 部屋には奥方が火鉢に炭を熾してくれているので、暖かくてよく眠れそうだ……そこまでは良い。

 しかし、俺が入らずとも布団が盛り上がっているのは何故だ?

 それに傍らに脱ぎ捨てられた浴衣……この先の展開が読めすぎて嫌な予感しかしない。


「おーい……そこで何してる、サクラ……」


 布団がもそもそ動き出し、可愛らしい顔がひょっこり現れた。

 布団を引剥して追い出したいが、おそらくこのバカ娘は全裸に違いない。


「えへへ~、旦那様のお情けを頂戴しにあがりました~」


 悪びれた様子もなく、ニコニコと笑顔で恐ろしいことを……。

 これが俺の友人、出渕君なら「ぶひいいい!」とか言って大喜びでのたうち回るに違いない、だが俺は違う! こんなつるぺたの未成年以下のお子様には興味が無い。


「取り敢えず着物を着ろ! そんでハルナ達と一緒の部屋で寝ろ!」


 素直に言うこと聞くタマじゃないのはわかっている。

 だからここは、我が下僕を召喚しての強制送還だ! 俺は念話で彼女に呼びかけた。

『ウンディーネ、すぐに来てくれ。…………あれ、ウンディーネ?』

『………………ZZZZZZZZ』

 なっ!? あの役立たず! って? やっぱ眠るのか? これは意外な発見!


 サクラの野生の勘は、俺の一瞬の躊躇を見逃さなかった!

 

「とう!」

「うおお、ちょっと待った!!」


 両手に広げた掛け布団ごと、巨大モモンガみたいに俺に跳びかかり、不覚にもマウントを取られた。


「それじゃあ旦那さまぁ、サクラはきっと良い子を産んで見せます!」

「産まんでいい! てかその前にお前が良い子になるのが先だ!!」


 そこへ部屋の引き戸が勢い良く開く音! 救世主ウンディーネの登場か!?


「大変よ、不破!! あのサクラって子が居ないの! もしかして村の……やつら……」


 ここから最悪の展開が容易に予想できた。

 

 蹴られた……殴られた……引掻かれて散々罵られた。

 なんとか誤解は解けたはずなんだが、そりゃもう言いたい放題だった。

 おかげですっかり寝不足だ。


「おはようございます主様、どうなさいました? 回復の様子が見受けられませんが」


 心なしか、ウンディーネの仮面がいつもより色艶が良い気がする。

 つーか、君が仕事してりゃあこんな目に合わずに済んだんだぞ!?

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