第5話スキンヘッド女神

それはキメラから逃げてから1時間ほどたった時だった。

遂に背中に背負っている駄女神が正気に戻ってしまった。

ふう、やっとこいつの重みから解放される。

この駄女神案外重いんだよ。

ダイエットしたほうがいいんじゃないの?


「んっ・・・あ、あれ?

ここはどこ?私はだれ?」


突然の記憶障害発言にびっくりしつつも正気に戻ってすぐだからか少し意識がぼんやりしているようで周りをきょろきょろ見て最後に自分姿を見て裸のことを認識した瞬間にびくっとして固まって・・・。


「へ?

きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!

何、なんでこんな格好に!?

あ、あんたね、この変態!!こ、こんな哀れもない姿にして私に何したの!?」


そういって俺の背中で暴れる駄女神。

そして根拠もないのに俺のせいにするという暴挙。

だが別に俺は悪くないはずである。


「は、お前キメラの胃の中で服が溶けたのを忘れてんのか?

しかも俺は混乱して動けないお前を胃の中から連れ出してやったんだが・・・。」


そういうと駄女神は思い出したのか、さっき俺に起こったのをばつが悪そうに頭を掻いたとき気づいてしまった。

そこにあるはずのものがないことに、そう髪がないことに気づいてしまったのだ。

それを見てまたもや女神はフリーズ。

そして20秒ほどの時間が経過したとき。


「な、なんで私の髪がないの!?

まさかキメラの胃の中で溶けちゃったの!?

あれ、でもあなたの髪が溶けてないのに私の髪が溶けてないのはおかしいってことは、別の理由?

ねえ、もしかしなくてもあなた知ってるわよね教えてくれる?」


そういって俺の肩をたたき説明を求める駄女神。

これも俺は悪くない・・・悪くないよな?


「ただ単にキメラに髪をくれてやっただけだが?」


そういうと駄女神は意味が分からないという顔をしてから、俺に対して叫び散らした。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ、何なめたことしてくれてんじゃぼけぇ!!

私女神なのよ、女神でスキンヘッドとかありえないでしょ!!

お坊さんじゃないの、わたし女神なの!?

なんで、なんでよりにもよってキメラなの!!

もし、神界に帰れた時にほかの神たちに「よう、スキンヘッド女神」とか言われて神たちに笑われたらどうしてくれるの!!

もし神界にいる女神たちとのお茶会でシャンプーの話とか出たらどうするのそのときに「あ、ごめんルーナ髪ないもんね・・・なんかごめん。」とか言われたら私はどうすればいいの!?」


何を言ってるんだこの駄女神は、髪なんて時間がたてば伸びるだろう?

しかもたとえが妙にリアルなのが気になる。

それと耳元であまり大きな声を出さないでほしい。


「普通だったらね!!

だけどあんたが私の髪を食わさせたキメラという魔物の口内には脱毛作用があるの!!

そう、私の髪は一生スキンヘッドのまま!!

どうしてくれるの!?

この脱毛作用をなくす薬はいまだ開発されてないのよ!!

あんたが開発してくれるの!?

ねえ、どうすればいいの?

結婚だってできないのよ!

スキンヘッド(女)とっ結婚してくれる男性もいるはずがないし・・・私の人生灰色よ!!」


なんだとキメラにはまだまだそんな特性があったのか?

それとその魔物というのは何だ?


「そんなことより私の髪を気にしろぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーッッ!!

なにあんたはキメラの特徴のほうが私の髪の毛より大事だっていうの!?

よく考えてみなさい、どちらが大事かを!!」


あ、なるほど。

確かにキメラの毛より女神の髪のほうが希少価値は高いかもしれない。


「ねえ、そこなの!?

そこじゃないでしょ!?

なんで希少価値で見るの!?

それよりも突然髪を失ってそして髪が生えなくなった女の気持ちを考えてよ!!」


そんなことより、さっさと俺の背中から降りてくれ・・・重い。


「お、おお重くないわ!!

これでも、体重60キロいってないし、52キロぐらいだから!!」


そんな駄女神のどうでもいい情報を聞かされていると、ついに俺の視界に

町のようなものが見える。


「おお、町だ。」


そういうと、さっきまで必死に俺に訴えていた駄女神も俺の向いている方向を見て。


「え、なに町?

ホントだ、町じゃない!!

あそこなら育毛剤あるかな・・・。」


そういって駄女神は頭をさするのだった。

当然ようにそこに髪はなく、駄神の目がウル目になっている。

というか町を見つけて最初に思うことが育毛剤の存在とか・・・

なんというか、だんだん少しだがかわいそうに見えてきた。

だが、もう終わったことだししょうがない。

こいつが喜びそうなことでも言って、適当に元気づけさせるか。

そう考え俺は


「じゃあ、もし俺の生物研究で髪をはやす効果の生物がいたら育毛剤作ってやるよ。」


そういうと、駄女神は俺を神を見るような目で見て、俺の背中から降りしゃがみこんで手を合わせて、お祈りをしていた。


「ああ、あなたが神だったのですね。

さあ、早く作って育毛剤!!」


この突然の手のひら返し、こいつ案外いい根性してやがる。

まあ、でも一応だが俺にも原因はあるので育毛剤頑張って作ってやろうと思う。

そんなことを思い町へと歩き始めた。



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